植物の細胞分裂と微小管

植物細胞の細胞周期の進行にともなう微小管の変化

植物の細胞では微小管の配列は細胞分裂にともなって大きく変化します。微小管の配列がさまざまに変化するのが植物細胞の特徴です。

間期に存在するのは表層微小管列という構造で、細胞膜の裏側に存在し、細胞の伸びる方向を決めます。外部の刺激や植物体からのシグナルに応答してさまざまに配列を変えます。

細胞分裂が近づくと、微小管は帯状に集まり、分裂準備帯と呼ばれる構造を作ります。この構造は細胞分裂の方向を決めています。

紡錘体は中心体なしにできます。紡錘体の役割は動物細胞と同じですが、中心体なしにできる点が異なっています。

隔膜形成体は細胞板を作る構造です。細胞板の材料を運ぶと考えられています。

細胞板は細胞膜に向けて広がる

染色体が2つに分かれて核が再生する時期になると、細胞が2つに分かれる過程が始まります。2つの核の間に膜がたくさん集まって、2つの核の間を仕切ります。この構造を細胞板と呼びます。できたての細胞板は柔らかい構造で、細かく動きながら、細胞壁を目指して広がっていきます。細胞板の端には微小管が集まっていて、隔膜形成体と呼ばれています。薬剤処理で微小管を壊すと隔膜形成体は消え、やがて細胞板も崩壊します。

分裂準備帯は細胞板の伸びる方向をガイドする

細胞板の広がる方向は、分裂準備帯によって決まります。分裂準備帯は細胞分裂の前に細胞表層に現れ、その上にはたくさんのタンパク質が集まります。集まったタンパク質の情報を使って細胞板は細胞膜に向けて広がります。

表層微小管列は細胞の形を制御する

細胞分裂が終わると、微小管は細胞膜に沿って細胞全体に広がります。微小管はランダムに並ぶことは少なく、たいていは一定の方向に並びます。この微小管は細胞壁の伸びる方向をコントロールすることにより、最終的には細胞の形を決めます。微小管が並ぶしくみは遺伝子の解析からコンピューターシミュレーションまでさまざまな方法で研究されていますが、わかっていないことが多いです。

参考文献: Wasteneys (2002) J. Cell Sci. 115 (7): 1345–1354. (link)