(7) 研究会会員の研究内容紹介
研究事例1:ディスクロータ面内振動の鳴き解析 大分大学 中江 貴志
研究事例1:ディスクロータ面内振動の鳴き解析 大分大学 中江 貴志
ディスクブレーキの鳴きの研究は半世紀以上⾏われており,鳴き抑制についてはいくつかの有効な対策が示されたが,未だに決定的な鳴き抑制法が確立されていない.
これは発生する鳴きの周波数が数百Hz 〜十数kHzの中に幾種類もあり,発生メカニズムがブレーキの構造や大きさによって異なる点に原因がある.
1990年代以前のディスクブレーキの鳴きは,キャリパの振幅が⼩さく,パッドとディスクが面外方向に連成振動する5kHz以上の高周波鳴きであった.この高周波鳴きに対して,パッドの裏金とピストンの間にシムを挟み対策してきた.しかし1990年代以降 ,制動性能向上が⽬的でディスクが⼤型化するにつれて,ディスクとキャリパがパッドを介して面外方向に連成振動する1.7kHz〜2.5kHzの低周波鳴きが発生するようになった.
この低周波鳴き抑制のために,パッドの接触領域の⼀部をカットする対策が実際の自動車に適用されている.また近年特に問題となっている鳴きとして,ディスクの面内振動鳴きがある.この鳴きは高周波鳴きに分類されるが,図2に示すような従来のディスクの面外振動の高周波鳴きとは特徴が大きく異なる.面内鳴きは図3に示すようにディスク摺動面の面内方向に大きく振動することが知られているが,その研究報告はロータ面外振動の鳴きに比べて少ない.
近年,ディスクのハット部が高くなり,ディスクの面内と面外の振動連成が強くなったことが面内振動の鳴きの発生原因と考えられる.著者らは,実機を用いた実験で振動モードを明らかにするとともに,集中系による線形解析モデルを用いた数値計算により,面内振動の鳴きの発生メカニズムを研究している.
図2 ディスク⾯外8直径節モード
図3 ⾯内2次モード