(7) 研究会会員の研究内容紹介
研究事例8:摩擦材料の計測技術 ㈱アドヴィックス 西澤 幸男
ディスクブレーキの振動騒音はディスクロータとブレーキパッドの摩擦が原因で発生するため,ブレーキパッドの摩擦材の性能が振動騒音に及ぼす影響は大きい.静粛性の高いブレーキを開発するためには,この摩擦材が持つ特性を定量的に正しく捉えて現象を理解し,ブレーキのモノづくりに活かすことが肝要である.
「正しく捉えて」と敢えて書いたのは,振動騒音が発生する状態を模擬した環境下で計測する必要があると考えるからである.ブレーキ制動に伴う力が摩擦材に加わっているのは勿論のこと,発生している振動の周波数や振幅を摩擦材に印加した状態で計測する必要がある.実機のまま計測できればよいが、多くは測定対象以外の影響を受けるため,試験片形状で目的の特性(摩擦材の剛性や摩擦係数)だけを計測できる装置を開発してきた.また,制動中に時々刻々と変化する摩擦界面でのトライボロジー現象をリアルタイムに捉えることは,振動騒音のきっかけとなる現象を理解するうえで重要である.制動中の摩擦材の変形・破壊により生じる弾性波のAcoustic Emission(AE)を計測し,AEと摩擦材のトライボロジー現象との関係解明にも取組んだ.