(7) 研究会会員の研究内容紹介
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研究事例5:摩擦材料の技術課題 日立化成㈱ (現 昭和電工マテリアルズ㈱) 原 泰啓
ブレーキパッドは⾦属・無機・有機繊維と摩擦調整材など⼗数種類の材料を熱硬化性樹脂で固めた摩擦材料を鉄製プレートに接着したものである.摩擦材料には,高い摩擦係数やその安定性,耐摩耗性,ディスクロータ耐摩耗(低攻撃)性が求められる.摩擦係数が安定しないと制動性能が不安定になるばかりか,ブレーキ鳴きやクリープグローンなどのブレーキノイズが発生する.
制動中の摩擦熱で,摩擦面温度は熱硬化樹脂の分解温度を超え,摩擦面には摩擦材料,その分解物とディスクロータに由来する成分で構成された潤滑被膜が生成する.制動によっては摩擦⾯温度が約700℃まで上昇することがある.その状態では,熱分解した樹脂の一部がタール状の潤滑被膜として残留するため,摩擦係数が低下する.
また,車両を⼀晩放置するような高湿度環境下では,ディスクロータと制動中に摩擦界面に生成した潤滑被膜との間に錆が発⽣する.その状態で制動すると潤滑被膜が剥がれ,摩擦係数や摩擦係数の速度に対する勾配が⼤きく変動し(図8),ブレーキ鳴きが発⽣する.これらのようなさまざまな状況でも安定した摩擦係数を保ち,ブレーキノイズが少ない製品の開発が進められている.