(7) 研究会会員の研究内容紹介
研究事例4:ブレーキ振動ロータ熱変形解析 ㈱キリウ 岡村 俊和
ブレーキジャダーは,鳴きに並ぶ振動騒音の重要課題である.鳴きは摩擦による自励振動だが,ジャダーはロータの円周方向のDTV(Disc Thickness Variations)に起因する強制振動によって発生する.コールドとホットに大別され,コールドジャダーの要因は,ロータの錆やパッドの貼り付きなどの化学的要因と,ロータの加工精度あるいは材料の不均⼀による偏摩耗である.ここでは,ホットジャダーの要因で ある熱変形の解析について紹介する.
自動車の常用ブレーキは,摩擦ブレーキであり,走行中の運動エネルギーを熱に変換することによって,車を減速・停止させる.そのため,使用状態によっては,500℃を超える高温にさらされる.その際, 摩擦を発生する摺動部とハブに締結されているハット部の温度差によって,ロータが変形する.著者らは,制動中のロータの温度分布と変形状態を,回転しているロータの座標に同期させて計測・分析した.図7に熱変形の代表例を示す.図7のAは摺動部が円錐状に変形しており,コーニングと呼ばれる.摺動部とハット部の温度差および両者間の接合構造によって,コーニングの方向や大きさが変化する.円周方向のうねりはほとんど含まれておらず,これだけではジャダーの原因にはならないが,パッドとの接触状態が変わるため,制動力などに影響する.Bはコーニングに加えて,円周方向のうねりを含む.バタフライとも呼ばれ,半径方向の温度分布に起因する熱膨張差による熱座屈が⼀因である.