13. スゥイングの概念が 取り入れられないのは何故?
13. スゥイングの概念が 取り入れられないのは何故?
べシーシック 解説
なぜ社交ダンスには「スウィング」の概念が取り入れられていないのか?
項目3. 4. で解説した 3連符基調とした 4ビート リズムの概念の事です。
社交ダンスの音楽理論には、ジャズやブルースに見られる「スウィング」の考え方が
体系的に扱われることはほとんどありません。これは、ダンス界の歴史的な成り立ち
が大きく関係しています。
スウィングとは?
ここで言う「スウィング」とは、 音を少し跳ねさせるようなリズムの感じ方(3連符
の揺れ)のことです。ワルツの“振り子のような動き”とは別の概念です。
項目3. 4. で解説した 3連符基調とした 4ビート リズム
スウィングの概念が取り入れられなかった主な理由
1. 社交ダンスはクラシック音楽を基盤に作られた
ワルツやクイックステップなど、初期のダンス音楽は 拍が均等に進むクラシック的な
リズムで作られていました。 そのため、拍を揺らす「スウィング」という考え方が存
在しませんでした。
2. スウィングは黒人音楽から生まれた
ジャズやブルースのような黒人音楽は、 拍の中に揺れや重みがある独特のリズムを持
っています。 しかし、当時のダンス界では「大衆音楽」として軽視され、 理論に取り
入れられませんでした。
3. 審査で使いにくい
社交ダンスは競技会や資格試験が中心の世界です。 スウィングの揺れは数値化しにく
く、審査基準に向かないため、 扱いやすい「均等拍」が優先されました。
4. 教育体系が変わらなかった
ISTD や WDC の教本は長年クラシック的な理論を踏襲しており、 スウィングを取り入
れる機会がありませんでした。
まとめ
社交ダンスの音楽理論は、 クラシック音楽の“均等な拍”を基礎に作られたため、 ジャ
ズ的な“揺れるリズム=スウィング”が入る余地がなかった。歴史的な流れとしては自
然だったとも言えますが、 今日の音楽感覚から見ると、少し物足りなさを感じる部分
でもあります。
アドバンス解説
社交ダンスにスウィング概念が取り入れられなかった構造的理由の検証
社交ダンスの音楽理論・教育体系において、 「スウィング」という音楽理論上のリ
ズム概念が体系化されていないことは、 ダンス界の構造的欠陥とすら言える問題で
す。その背景には、歴史・文化・教育・制度が複雑に絡み合っています。
本稿で扱う「スウィング」の定義
ここで言うスウィングとは、 1拍を3連符的に分割し、跳ねるようなフィールを生む
リズム構造 ( 項目 3. 4. で示した 4ビート SlowFox、QuickStep、Jive )を指します。
身体動作としての“スウィング”とは区別します。
1. 社交ダンス理論は「ヨーロッパ古典音楽」を基盤として成立した
社交ダンスの理論は、 19〜20世紀初頭のヨーロッパ宮廷舞踊・軍楽・ワルツ文化を源
流としています。
その音楽観は以下の通り:
音価=拍の等分
拍=時間の等間隔
グルーヴ=存在しない
つまり、 拍の内部を不均等に揺らす“スウィング”という概念は、理論上存在しなかった。
2. スウィングは「アフロ・アメリカン文化圏」の発明だった
ジャズ・ブルース・ゴスペルなど黒人音楽は、 ヨーロッパ音楽とは異なる拍感覚を持
っていました。
特徴:
拍の内部に揺れや重みがある
音符の長短比が 2:1 や 3:1 に変化
“Groove” “Feel” を重視する文化
しかし、1930〜1950年代のダンス界では、 これらは「下層の大衆音楽」と見なされ、
ISTD などの教育機関は理論に取り込もうとしませんでした。
価値観の対立:
スウィング=黒人音楽的=即興的=測定困難
イーブン=クラシック的=秩序的=測定可能
3. 「審査基準」としての“測れるリズム”が優先された
社交ダンスは教育産業であり、審査・資格試験が中心です。
スウィング感は数値化・標準化が困難
イーブン拍は「拍=等間隔」で説明でき、扱いやすい
結果として、 教育的・審査的な都合が、音楽的現実を上回った。
4. 現代においても変わらない理由
ISTD・WDSF の教本は刷新されつつあるが、音楽理論は依然クラシック枠内
指導者の多くが音楽教育を受けておらず、拍感を「数」で教える文化が強い
審査員も“Feel”より“Form”を評価する傾向
実際の演奏にスウィングがあっても「形式上は均等拍」として扱われる
■ 結論(アドバンス版)
社交ダンス理論は、 西欧古典音楽の「均等拍」という枠組みに閉じ込められ、 アフロ
系音楽の「スウィング=揺れる拍感」を取り入れることができなかった。
その背景には:
起源の制約(宮廷舞踊=均等拍の世界)
文化的偏見(黒人音楽の軽視)
制度上の優先順位(審査で測れる理論が優先)
教育体系の慣性(教本の踏襲と改訂の停滞)
という構造的要因がある。
■ 最後に
ジャイブ シャッセ のビート・バリューを サンバと同じと 未だに 定義している事
は、歴史的に見れば、この流れの中では “やむを得なかった” とも言える。 しかし
それでもなお――スウィング概念を取り入れられなかったことは、 社交ダンス
理論に残された構造的欠陥であり、 克服されるべき「負の遺産」である事には
違いない。