10. ヴェニーズ・ワルツは4拍子と捉えよう
10. ヴェニーズ・ワルツは4拍子と捉えよう
テンポの速いヴェニーズワルツを とてもゆっくりな4拍子と 捉えようと言う
提案です。ヴェニーズワルツのテンポ感と拍感の再構築によって、踊り手の身
体的・心理的負担を軽減する。「音楽を味方につける」というアプローチのメ
カニズムを分解して解説します。
ヴェニーズワルツのテンポと拍感の問題
ヴェニーズワルツは通常 1分間に60BPM 程度の速さで演奏されます。 これは
1小節(3拍)あたり約1秒という速さで、踊り手にとっては「1・2・3…1・2
・3…」と数えるのが忙しく、身体の動きを拍に合わせる事が目的化してしま
い、音楽の流れや身体の表現に集中できないという問題が起こりやすくなりま
す。
3拍子を「3連符的な1拍」として再構築する発想
1小節の3拍(1・2・3)を1つのまとまり 3連符のように 1拍と見なすという
ものです。これは音楽的 再解釈になります。ヴェニーズワルツの4小節(12拍)
を、ゆっくりな4拍子の1小節(4拍)として感じることで 踊り手は「1・2・3
・4」と余裕を持ってカウントできるようになります。
( 1 2 3 ) ( 2 2 3 ) ( 3 2 3 ) ( 4 2 3 ) ----3拍子 4小節
イイチ ニイイ サアン シイイ
1 2 3 4 ----4拍子 1小節
この「3拍子を1拍に圧縮する」感覚は、音楽理論的には**拍の階層構造の**
再編成にあたります。
この発想の音楽的な裏付け
音楽には 拍の階層構造 があります。
* 小さい単位:1拍(1,2,3)
* 中くらい:1小節(3拍まとまり)
* 大きい単位:4小節などのフレーズ(12拍)
速い曲ほど、大きな単位 メトリック・リダクション で感じると踊りやすく
なる。
(メトリック・リダクション)
楽曲の表面的な装飾を取り除き、その根底にある構造的な骨格を明らか
にするための分析手法で「拍の強弱(メトリック)を手がかりにして、
楽曲をシンプルな形へと段階的に単純化(リダクション)していく
プロセス」
実際、指揮者や演奏者も速い3拍子の楽曲を「1拍子感(ワルツの1小節を1拍
にまとめる)」で 振ることがある様です。
ダンスにおける実践的メリット
* 身体の動きが拍に追いつく:1拍ごとの動きが広がり、急かされる感覚が
減る。
* フレーズ感が明確になる:4小節単位の音楽的フレーズを1小節と捉えること
で、踊りの構成が自然になる。
* 指導がしやすくなる:初心者に「1・2・3・4で踊ろう」と伝えることで、
拍の取り方がシンプルになる。
* 音楽との一体感が増す:拍を数えるのではなく、音楽の流れに乗る感覚が
生まれる。
音楽理論的補足:拍の再解釈は「拍節構造の抽象化」
このような拍の再構築 ジャズでは、4拍子の中に3連符を感じて「スウィング
感」を出します。つまり、拍をどう感じるかは、演奏者・踊り手の解釈次第で
あり、「身体にとって自然な拍感」を選ぶことは非常に合理的かつ芸術的な判断
です。
結論:この発想は「拍を味方にする」ための戦略
8. 裏カウントの項でも書きましたが カウントする事に 重点を置くと曲の流れ
を見失い 裏カウントでスタートしてしまう場合があり、ナチュラルターンを繰
り返すパターンの多いヴェニーズワルツでは大きな悲劇を生みかねません。
この発想は、単なるテンポの問題を超えて、音楽と身体の関係性を再構築する
ものです。拍を数えるのではなく、拍を感じる・乗る・遊ぶという方向に導く
ことで、踊りの質も格段に向上する事でしょう。