12. ワルツは イーブン か スゥイング か?
12. ワルツは イーブン か スゥイング か?
〜テネシー・ワルツに揺られて考える、拍の分割とダンスの表現〜
ワルツを除いて、8種目のダンスはイーブンとスウィングに大別できる——と
書いてきました。ワルツはイーブンだとする見解もちらほら見受けます。さて
真相はいかに。
まず確認しておきたいのは、「スウィング」という言葉の使われ方。 ダンスの
世界で「スウィングダンス」と言えば、振り子のような動作を指します。ブラ
ンコがゆらゆらと揺れるような、あの感じです。 一方、音楽理論での「スウィ
ング」は、拍の分割方法に関する話。1拍を2分割(イーブン)するか、3分割
(スウィング)するか。 つまり、同じ「スウィング」でも、動作とリズムで意
味が微妙に異なるのです。とはいえ、両者は無関係ではありません。音楽の揺
れが身体の揺れに繋がるのですから。
3拍子のスゥイング と 4拍子の スゥイング
3拍子のワルツは 1小節(3拍)単位にスゥイング感があるのに対し、4拍
子のスゥイングは1拍が3連符基調であり そこにスゥイング感があるわけです
とは言え テンポが速くなるとスゥイング感は消えてしまいますが・・・
ワルツの拍は、実は両方ある
意外かもしれませんが、ワルツにもイーブンとスウィング、両方のリズムが
存在します。 ただし、4拍子のように明確な違いが出るわけではなく、踊りや
歌が大きく変化することも少ないため、気づかない場合が多いでしょう。
では、実際に聴いてみましょう。
題材は、ワルツのスタンダードナンバー「テネシー・ワルツ」。
1948年にリリースされたこの曲、実は最初はカントリー調の男性目線でした。
「俺の彼女を取りやがって…」という、ちょっと切ない男の歌です。
イーブン
テネシーワルツ スタートは
カントリー だったのです。
女性目線に変わって世界へ
1950年、Patti Pageが女性目線の歌詞に書き換えてカバーしたことで、この曲は一気に世界へ広がります。
イーブン調
マーキュリーレコードから
リリースされたこのバージョン
ミリオンセラーとなり、
数々のカバーを生む
きっかけとなりました
スゥイング調
1963年、Patti Pageはコロンビア・
レコードに移籍し、再びレコーディング
このバージョンは3連基調のスウィング
感があり、4ビート風の揺れが感じ
られます。
Anne Murrayも 2 パターン
カナダの歌姫Anne Murrayも「テネシー・ワルツ」を2つのスタイルで歌っています。
イーブン調
スゥイング調
結論:ワルツはイーブンでいい…けれど
YouTubeなどで見ても、圧倒的にイーブン調のワルツが多いのは事実。
ですので、「ワルツはイーブン」としても、実用上は問題ないでしょう。
ただし、スウィング調のワルツも確かに存在するということは、知っておいて
損はありません。音楽の揺れを感じるかどうかは、耳の感度と心の余裕次第。
「スウィングしてるかも?」と気づいた瞬間あなたのダンスにも、ちょっと
した色気と深みが加わるかもしれません。