さらに学習を深めたいと考えるあなたに
1.たとえば,MIT(マサチューセッツ工科大学)が公開している動画で,英語の学習を兼ねて,学習した内容を見てみるのはどうでしょう.
https://ocw.mit.edu/courses/5-111-principles-of-chemical-science-fall-2008/resources/
無機化学で学習した内容で関連のあるものをピックアップすると.
a. Lecture 11: Lewis Structure
b. Levture 14: Molecular orbital theory
c. Lecture 15: Valence Bond Theory and Hybridization
d. Lecture 27: Transition metals
e. Levture 28: Crystal Field Theory
などがあります.いずれも,内容をある程度知っている事柄なので,留学気分を味わいながら英語の学習に最適かと思います.Transcriptで英語字幕も表示できます.
2.ブルーバックスシリーズ(講談社)などの読み物なども適しているかと思います.
a. 生命にとって気温族とはなにか 誕生と進化のカギをにぎる「微量元素」の正体 (桜井弘)
c. 活性酸素の話(永田親義)
良い夏休みをお過ごしください.第1回講義 (2025.07.23)
第一回目の講義では,導入講義として,無機化学の講義概要を説明したのち,原子と電子配置について講義します.
原子番号7番の窒素Nの電子配置は1s22s22p3であり,アンモニアNH3分子中の窒素原子は,sp3混成をとると説明できる.4つの等価なsp3混成軌道のうち,3つのみが水素との結合に関与している.残り1つのsp3混成軌道には,孤立電子対(非共有電子対,ローンペア)が存在し,アンモニア分子は三角錐型構造をとる.孤立電子対が存在するアンモニアは,ルイス塩基として働くことができる.
上記文章は,すんなりと理解できますか.
すでに,これらのことは既習である人も多いかと思いますが,まずは,これらのことが理解できるように,用語,関連事項に触れながら,講義を進めていきます.
原子と電子配置の講義では,原子の電子配置に関するルールについて講義します.
ルールは3つ,
1.構成原理,
2.パウリの排他原理,
3.フントの法則です.
原子中の電子が存在できる領域,すなわち原子軌道のどこに電子が存在するのか,理解していきましょう.
この理解が今後の講義において必須となります.
次回講義までの課題もあります.(講義時のアナウンス,配布プリント参照)
必ず予習をお願いします.なお,予習部分は,次回の講義では省略し,まとめた形で振り返ります.
第1回 講義動画 (YouTube)
宿題として課した穴埋めプリント部分の解説動画(YouTube)
動画の要点をまとめてあります(講義の復讐にも使えます)
第2回講義では,電子配置について,さらに深く掘り下げます.また,最後に,混成軌道の概念について,簡単に説明します.この概念は他の科目でも学ぶかと思いますが,無機化学の講義において,頻繁に登場する概念なので,この段階でしっかりとおさえておいてほしいところです.メタン分子が正四面体型である理由を説明できる概念です.
講義内容
(1) 4つの量子数 (テキストp.13-16)
(2) 原子の電子配置と構成原理の例外 (テキストp.16-19)
(3) 有効核電荷・遮蔽・貫入・スレーターの規則 (テキストp.19-20)
(4) 混成軌道 (テキストp.57-62)
第2回 講義動画 (YouTube)
(追加説明)
動画の要点をまとめてあります(講義の復習にも使えます)
第3回目の講義では,今後の講義で必ず使用する用語,例えば,電気陰性度,分極などを説明します.
最初に,水素に関して講義します.プロトン,ヒドリドに関する説明,そして,酸・塩基の定義であるLewis酸,Lewis塩基を解説します.
最後に,皆さんよくご存じの炎色反応について触れます.アルカリ金属の話題は,第4回の講義に続きます.
第3回 講義動画
(追加説明)
五塩化リンがルイス酸となる理由ならびに三塩化リンがルイス塩基となる理由を説明しています.
五塩化リンがルイス酸に,三塩化リンがルイス塩基として働くことができる理由 (YouTube 14:46)
動画の要点をまとめてあります(講義の復習にも使えます)
混成軌道に関する動画
(1)二酸化塩素の混成軌道(07:11) (4/29追加)
(2)二トロニウムイオンNO2+における窒素原子の混成軌道 YouTube (06:30)
(3)亜硝酸イオンNO2-における窒素原子の混成軌道 YouTube(10:52)
(4)二酸化窒素NO2における窒素原子の混成軌道 YouTube(14:55)
(4)硫黄を含む化合物の混成軌道 YouTube(11:40)
硫黄原子を含む3つの化学種(SO2, SOCl2, H2SO4)に関して説明しています.
第4回講義では,1族元素を取り上げます.基本的な事項に関しては,高等学校で学習済みではありますが,ここではいくつかのトピックに関して掘り下げて解説します.1族元素の中でリチウムは,そのサイズが小さいゆえに,ほかの1族元素とは異なった性質を示します.その性質を利用した医薬品として,抗躁薬の炭酸リチウムを取り上げます.また,テキストには記述はありませんが,1電子を放出しやすいという1族元素の性質を利用したBirch還元への応用を解説します.最後に,イオンサイズを認識して,特異的に取り込む性質を有するクラウンエーテルを紹介します.
アルカリ金属の酸化物 (テキストp.110)
Liの特異性 (テキストp.110)
アルカリ金属の反応への応用 (テキスト該当ページなし)
クラウンエーテル (テキストp.168-169)
以上に関して,講義します.
アルカリ金属と酸素の反応はテキストにあるように,反応式で書けば非常に単純ですが,これら反応が優先して進行する道理を考えることは,科学的思考を鍛えるうえで大事であると考えます.また,アルカリ金属の酸化物は塩基性酸化物ですが,例えば,超酸化物イオンと水との反応がどのようにして起こるのかを推測するのも面白いでしょう.このようなトレーニングが将来につながると思います.配布プリント掲載の,Kapustinskiiの式に関しては,自主学習とします.動画でも説明していますので,興味のある学生は,動画を視聴してください.試験の範囲外ですが,ある事象が起こる理由を,何らかの形で考察できるのは化学の面白みです.
超酸化物イオンと水との反応機構に関する動画は,下のリンクより確認してください.二つの考え方を動画では示していますが,ほかにも考え方があるかもしれません.
アルカリ金属の反応への応用で講義するバーチ還元については,反応機構について試験で問うことはありませんが,還元剤となる溶媒和された自由電子についての考察は試験範囲となります.
第5回講義では,2族元素として,特に,マグネシウムを取り上げ,制酸剤としてのマグネシウム化合物ならびにマグネシウムの定性反応について説明します.また,2族ハロゲン化物についても講義でとりあげます.さらに,13族元素のアルミニウム化合物も,制酸剤として用いられているので,制酸剤としてのアルミニウム化合物に関する話題をとりあげます.取り上げた水酸化アルミニウムゲルは,アルミニウム錯体なので,この化合物を題材に,錯体の命名法の規則についても簡単に説明します.命名法の規則に関しては,試験で詳細を問うことはありません.2族ハロゲン化物のところで取り上げる,塩化チオニルと水との反応については,講義中に説明しないので,以下の補足説明のリンクから動画を御覧ください.また,塩化チオニル中の硫黄原子の混成軌道についても講義中には詳しく説明しませんので,一つの考え方を,補足説明の動画にしてありますので,ぜひご覧ください.
講義内容
(1) 制酸剤としてのマグネシウム化合物 (テキストp.112(b),(c),(d))
(2) マグネシウム塩の定性反応
(3) 緩下剤としての酸化マグネシウム
(4) 2族ハロゲン化物 (テキスト該当ページなし)
(5) 制酸剤としてのアルミニウム化合物 (テキストp.114(d))
(6) 水酸化アルミニウムゲル(錯体)(テキストp.155-)
第5回 講義動画
補足説明
動画の要点をまとめてあります(講義の復習にも使えます)
第6回講義では,13族ホウ素の話題を取り上げましす.最初に,ホウ素の水酸化物(テキストp.113)であるホウ酸をとりあげ,ホウ酸が一塩基酸であることを説明した後,ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)(テキストp.191-192)を紹介します.ホウ素は,他の元素に比べて中性子をより広い面積で補足しやすい性質があります.このホウ素の性質をがん治療に応用したものがBNCTです.ついで,ホウ素の水素化物であるジボラン(テキストp.114)について説明します.三中心二電子結合構造を有するジボランの構造的特徴,反応性について講義します.最後に,ベンゼンの窒素をすべてホウ素と窒素に置き換えたボラジン(テキスト該当なし)という化合物に関して講義します.
第6回 講義動画
動画の要点をまとめてあります(講義の復習にも使えます)
錯体の幾何異性体
錯体の幾何異性体に関して,[Al(OH)3(H2O)3] を例に基本を解説します.
参考動画
(A)ジボランの製法 (YouTube 04:31) 水素化ホウ素ナトリウムを原料とするジボランの生成機構
第6回講義に引き続き,13族ホウ素の話題として,ハロゲン化ホウ素のルイス酸性度について取り上げます.その後,これまで学習した混成軌道の概念では説明できない事象を説明するため,分子軌道法の概念を導入します.酸素単体がビラジカルであるということを,分子軌道法の観点から確認します.
なお,分子軌道法の発展編に関しては,講義では触れず,各自の自習項目となります.分子軌道法の基本を理解したら,下記の,発展編の動画並びの演習問題で更に学習を深めてください.
(1) ハロゲン化ホウ素のルイス酸性度 (テキストp.117(e)-118)
(2) 分子軌道法 (テキストp.62-)
第7回 講義動画
(補足)
一酸化炭素の分子軌道エネルギー準位図の解説 (YouTube 20:35)
動画の要点をまとめてあります
Q.窒素の分子軌道で,結合性のシグマとパイ軌道のエネルギー準位が逆転する理由は?
A.これは,なかなか難しい問題です.そういうものと現時点で解釈しておくとよろしいかと思います.なお,上記の問題に関して,発展編の動画を見るか,YouTubeに5分程度の解説をしていますので,ご覧ください.
第8回講義では,15族の窒素に関する話題を扱います.まず,分子軌道法を用いて,一酸化窒素の性質を見ていきます.さらに,その他の窒素酸化物についても取り上げます.
(1) 一酸化窒素 (テキストp.118(c),121COLUMN NOSと薬物)
(2) 一酸化窒素の分子軌道エネルギー準位図 (テキストp.69図3.50)
(3) その他の窒素酸化物 (テキストp.118(c))
第9回講義では,15族元素の話題を続けて講義します.窒素に関しては,ニトロ化,ジアゾ化,ニトロソ化について,リンに関しては,リンのオキソ酸,骨粗しょう症治療薬の一部)について講義します.
(1) ジアゾ化,ニトロ化 (テキストp.118-120)
(2) ニトロソ化(テキストp.118-120)
(3) リンのオキソ酸 (テキストp.120-122)
(4) 骨粗しょう症治療薬(テキスト該当ページなし)
第9回 講義動画
ジアゾ化の反応機構のうち,互変異性からジアゾニウム塩に移行するまでの,最後の段階に関しては,試験で問うことはありません.
動画の要点をまとめてあります
第10回は,16族元素としてO,Sの話題を取り上げます.基底状態の酸素分子と比較して反応性の高い酸素種を一般に活性酸素種と呼びます.活性酸素種は,細菌や真菌などの殺菌を行う生体防御や細胞内信号伝達への関与などを担う一方で,その高い反応性から,過剰に発生すると,組織・細胞障害を引き起こすという生体にとって有益と有害という2面性を有します.この活性酸素種について詳しくみていきます.また,活性窒素種,そして,硫黄のオキソ酸についても講義します.硫黄のオキソ酸では,解毒剤としてのチオ硫酸ナトリウムに関して講義します.最後に,一重項酸素の発生を利用したがん治療法である,光線力学療法(PDT)について講義します.
(1)活性酸素種(テキストp.182-187)
(2)硫黄の酸化物とオキソ酸(テキストp.125-126)
(3)チオ硫酸ナトリウム(テキストp.126)
(4)光線力学療法PDT(テキストp.185)
第10回 講義動画
(参考)ロダネーゼによるシアン化物イオンの解毒機構(YouTube 03:31)
動画の要点をまとめてあります
第11回は,まず,ハロゲンのオキソ酸について講義します.次いで,電荷移動錯体(ヨウ素デンプン反応など)について講義します.その後,遷移金属の話に移り,遷移金属に関しては,各論は扱わず,金属錯体という観点から,金属特にd軌道を見ていくことになります.配位子の命名法の内,monodentate ligandの命名法に関しては,詳細な説明は省略しますので,教科書をご確認ください.また,新たな理論として,結晶場理論をとりあげます.これにより,金属錯体の色について議論できるようになります.
(1) ハロゲンのオキソ酸と電荷移動錯体(テキストp.128-130, p.74-75)
(2) 配位子,キレート (テキストp.159-160)(配位子の命名法に関しては,詳細な説明は省略します)
(3) 結晶場理論 (テキストp.162-165)(LMCTおよびMLCTならびに配位子内電荷移動は試験範囲外,プリントでは最後の2つ)
(4) 高スピン.低スピン (テキストp.162-165)
第11回講義の動画は以下の4本になります.
(1) ハロゲンのオキソ酸と電荷移動錯体(YouTube 20:15)
配布プリント内の例題(例題1,例題2)の解答
第12回では,錯体の話題を続けて講義します.内部軌道錯体・外部軌道錯体,結晶場安定化エネルギー,錯体の安定度定数とキレート効果,配位子置換反応を講義します.
(1) 内部・外部軌道錯体 (テキストに該当ページなし)
(2) 結晶場安定化エネルギー (テキストp.162)
(3) 錯安定度定数とキレート効果 (テキストp.165-167)
(4) 配位子交換反応 (テキストp.170-173)
第12回講義の動画は,以下の5本となります.
(3)の動画は,演習問題(配布プリント1枚目の右側上から3番目)にトライしたのち,視聴して下さい.
(2) 結晶場安定エネルギー 基本説明 (YouTube 12:21)
(3)結晶場安定エネルギー演習編(YouTube 10:48)(自主学習用,講義内では扱いません)
(4) 錯安定度定数とキレート効果 (YouTube 20:06)
動画(5)の最後に説明している会合機構の部分のスライドは以下のリンクからご覧いただけます.
ただし,動画の13:09~18:25の部分は会合機構の詳細な反応機構を説明していますが,期末試験の試験範囲外です.また,講義内での説明も省略します.
なお,動画内ではコメントしていませんが,すでに学習したクラウンエーテルも,キレート効果の観点から,安定な金属錯体を形成すると考えられます.例えば,18-クラウン-6は6座配位子として機能し,カリウムイオンと1:1の錯体を形成したとすると,キレート環が6個できることになります.
第13回では,錯体の反応の話の続きとしてトランス効果を講義します.続いて,白金錯体であるシスプラチン(抗がん剤)について講義します.
(1) トランス効果 (テキストp.171)
(2) 抗がん剤シスプラチン (テキストp.187-188)
(予習しておくと良い点)
平面四配位錯体のd軌道分裂様式
第13回講義の動画は以下の4本になります.
(2) シスプラチン 導入編 (YouTube 17:12)
(3) シスプラチン 活性発現機構編 (YouTube 22:16)
(4) シスプラチン 構造活性相関編 (YouTube 16:42)
配布プリント 問題
(解)問1.complex A 問2.2 問3.略
授業評価アンケートにご協力をお願いします.
第14回講義では,キレート療法剤ならびに,金属含有医薬品を紹介します.最後に時間があれば,ホウ素を使った鈴木カップリング反応について講義します.
(1) キレート療法剤 (テキストに該当ページなし)
(2) 金属含有医薬品 (テキストp.187-190)
(3)鈴木カップリング反応(テキストp.114)
(参考)
第14回講義の内容は,試験範囲外です.