演習1
(1)省略
スレーター則により各々の有効核電荷を計算してみればよい.
また,CとNは同一周期にある元素であることという前提が必ず必要である.
(2)下図の通り 反結合性のπ軌道は(5)
下図のように,σ2sとσ2pとの相互作用により,σ2sはより安定化し,σ2pは不安定化する結果,σ2pのエネルギー準位がπ2pより高くなった,と考える.なお,結合性軌道は結合性軌道としか相互作用できない.よって,この場合,反結合性軌道は変化しない.
(3)CNの分子軌道に電子を埋めると下図のようになる.
すなわち,σ軌道に1電子が収容されたラジカル分子である.ここにもう一電子を付与したシアン化物イオンの分子軌道エネルギー準位図は以下の通りである.
σ軌道には2電子が収容され,結合性軌道がすべて電子で満たされた形となっている.この電子配置は,N2と同じである,すなわち,CN-とN2は等電子化合物(注)であり,安定であることが予想される.
結合次数を計算してみるとCNではBO=2.5, CN-ではBO = 3であり,結合がより強固であることが推察される.よって,CNは1電子を収容して1価の陰イオンになりやすいと推定される.
また,COの分子軌道エネルギー準位図における考察からもわかるように,軌道エネルギー準位の高い方の原子がドナー原子となるので,シアン化物イオンが配位子となる場合,ドナー原子はCである.例えば,シアノコバラミンは,鉄イオンにシアン化物イオンが配位子した構造であるが,配位形式は,Cがドナー原子である.(下図)
シアノコバラミン
(注)等電子化合物 構成原子数と価電子数が等しい関係にあるもの
演習2
問1.BO= (1/2)✕(6-0) = 3↑非結合性の電子は計算に入れない→考え方の違いで,結論が変わるわけではないことを学ぶ.ここを(8-2)とした答案は不正解
問2.BO= (1/2)✕(6-1) = 2.5反結合性軌道に不対電子が入ることになり,不安定となる.(結合次数も減少している)
問3.不対電子が存在しないので,反磁性
問4.電子を供与する際に反応に関与するのは,HOMOの軌道である.
COの分子軌道エネルギー準位図において,HOMOの軌道は,炭素の2sと2p軌道由来の非結合性軌道であることが,ダイアグラムからわかる.よって,電子供与は,この軌道から行われることになり,ドナー原子は,炭素原子である.
よって,HOMOの軌道は,2sと2pから構成された,sp的な軌道となる.すなわち,炭素2p軌道のうち,この考え方では,2pzと2sが混成されていると考えているので,結合軸のz軸に沿って電子供与が行われると考えられる.
分子軌道法を無視して答えたものは不正解とする.
例えば,共鳴式で,酸素がプラスチャージを帯びるから,金属のプラスチャージとの反発を避ける,とか,二原子分子だから直線なので,配位も直線(NOも二原子分子だが,このような考えは当てはまらない)など