災害が発生した場合、どこから手を付けたらいいのか。途方に暮れるのが普通です。
まずは自分や家族・関係者の安全確保・確認が最優先です。
それらが確認できたとして、いざ無線による災害対応活動を始めようとしたとき、何に気を付けて何を準備したらよいのでしょうか。
無線機を持参して避難所に行っても、そこで役に立つことはありません。
自分の立場と役割、災害対応計画全体の中での立ち位置を理解し、全体の流れを理解していなければ、その行動は全体の流れを阻害するものになりかねません。
自分は善意のつもりでも、受け入れられなければ邪魔者扱いになるでしょう。
ではどうしたらよいでしょうか。
そのためには、我が国の災害対応計画の全体像を理解する必要があります。
災害時に円滑に活動に取り組むため
1.組織の明確化
2.指揮命令系統の確立
3.活動に関わる者は指示に従う
市民・アマチュア無線家としての考え方
1.自分(チーム)の立場を明確にする(市等と協定を結ぶ)
2.情報伝達の相手(カウンターパート)を確認する
3.あらかじめ計画した通りに実施する事が基本
勝手な行動をしないこと。多くの場合、他人と意見は一致しない。各々が夫々の「正義」を持っています。
大災害時の「正義」は直感や感情とは相反する。(最大多数の最大幸福)
平時よりリスクコミュニケーション(被害想定、何を何から守るのか)をしておかなければ、
発災後に話し合ってもうまくいきません。守るべきものは人によって異なります。
それでも医療者は大いなる矛盾(最大多数と個々の利益の双方への責任)と向き合っています。
Safety (3S: Self , Scene, Survivor)
1.自身の安全 (チームの安全)
2.活動現場の安全確認・確保
3.生存者の安全
市民・アマチュア無線家としての考え方
1.自分やチームの安全確保が第一
個人防護具(ヘルメット、軍手)等の装備
2.危険な場所には絶対に行かない
3.避難誘導、励まし(共助)
大規模事故/災害時に活動が失敗する原因で最も多いのは情報伝達の不備
広域災害時には通常の通信手段は使用不能
通信技術、簡潔明瞭な交信
通信機器の操作、通話表を用いた正確な交信
災害現場直近 (避難所レベル)で情報伝達のスキルを有する者は
日常的に情報伝達を行っているアマチュア無線家である
ニーズとリソース(必要なもの、入手可能な資源)の確認
計画通りに達成したこと、達成できなかったこと、その原因分析
次の目標設定、そのために必要な資源の調達のための方策
計画表の作成と周知
無線家としての現状分析と明日の計画
避難所等で不足するもの(または不要なもの)
必要な情報・物資が必要な場所に届いたか(情報は適格か)
明日の計画作成と引継ぎ
トリアージ(必要な者を医療機関へ。不要な受診・搬送は控える)
応急手当、応急処置・安定化処置
移動・搬送(緊急度・重症度に合った医療機関。※軽傷を救命センターへ運ばない)
いつ災害が起きてもいいように 備える 「訓練していない事項を災害時に実行する事は不可能」
通信機器の整備(本体、電源、空中線、付属品)
通信機器の操作に精通する(普段から使っている、マニュアルを読んでいる)
通信方法を熟知し、実践できる(電波法・規則等を理解している、標準の和文・欧文通話表を知っている)
災害時に必要となる情報と標準的な用語を知っている
行政(市町村)との協定の締結
災害時にボランティアとして無線通信を行う場合であって、どの無線(業務無線、簡易無線、アマチュア無線等)を使用するにあっても、その無線の通信の相手方や目的に合致していなければ電波法違反となります。令和3年に電波法施行規則に基づく総務大臣の告示により災害時の使用や特定非営利活動としての活動が認められ、法的な規制は緩和されました。とはいえ、そもそも災害時の重要な通信(自助・共助レベルの情報は除く)をボランティアに依頼してくれるでしょうか。
法で義務化されていないが、行政の活動の一部にボランティア活動として参画する(公助レベル)のであれば、あらかじめその手順や内容を記載した協定を結んでおくとよいでしょう。既に協定があっても、法改正が行わた今でこそ、改正法に合った協定を結びなおす方が賢明でしょう。
(参考)寒川町における協定 改正法に合った協定の例
一般市民であるわれわれには、BCPに基づく事業継続の義務はありません。臨時情報に基づく避難勧告や指示に従います。その際、電池、バッテリーへの充電、空中線の状態など、あらためて全ての準備がうまくいっているか確認します。事情が許せばあらかじめ決められた配備先に資器材を移動させ、自身もそこで待機する事も考えられます。しかし、自身の安全が最優先される事を決して忘れてはなりません。