片麻痺患者の歩行訓練機

研究内容

リハビリによる歩行獲得

 現在でも多くの国民が発症している三大死因の一つ脳血管疾患は、6割が運動麻痺や感覚麻痺、言語障害など様々な障害が残るとされています。医療の進歩により死亡者数は減少していますが、それと同時に何らかの障害を負う患者が増えていることを意味しています。その障害が回復するかどうかは、回復期と呼ばれる発症から3カ月までの期間でのリハビリ練習量に大きく依存します。

 しかし、現実のリハビリテーションでは、患者一人に理学療法士が割くことの出来る時間は限られており、練習量が十分確保できていません。これに対して、見守り無しでも安全に歩行訓練が行えるようにすることで、量的訓練を支援することが最終的な目標です。

訓練機の追従性向上

 これまで本大学で開発してきた歩行訓練機(右図)では、従来の手で押す歩行訓練機とは異なり、腰部に取り付けたハーネスを介して引っ張る新しい歩行訓練機を先行研究で開発しました。しかし、引っ張ることにより歩行相における加速度の変動が伝わるのに遅れによる操作性の低下の可能性や、歩行獲得を目指す患者にとって一般的な歩行と異なる動作になる可能性がある。

 そこで本項目では、既に開発した歩行訓練機のタイヤにモータによる動力を与え患者に追従動作させることで、患者の負担を軽減することを目標とします。また、その動作をさせるために患者につけたセンサの情報を基に、次の歩行動作をリアルタイムで推定する手法を提案していきます。

筋電位センサを用いた患者の直進・曲進判別

 片麻痺患者が歩行訓練を行う際、はじめに直線を歩けるようにならなければいけません。しかし、片側が麻痺しバランスをくずして、意図せず曲がって歩行してしまうことがあります。さらに、視界の半分が見えても認識ができない半側空間無視のように機能障害をもっている人は、曲がっていることに気づかず壁に衝突し、けがを負う可能性があります。以上のことから、片麻痺患者が曲がる際の身体動作を解析していきます。

 人が曲がる動きにはいくつか種類があります。その曲がる軌跡をモーションキャプチャーで測定し、その際の脚筋力の活動を筋電位で測定していきます。

振動刺激による運動錯覚を利用したフィードバック

 半側空間無視によって、私生活に支障が出ている事例は複数存在しますが、その中でも歩行の症例について問題解決を図っています。

 具体的には、曲がるときの身体動作の分析をもとに、健常足に振動刺激を与えて運動錯覚を起こさせます。それによって、曲がっていることを認識させて、歩行の進行方向の修正を促します。