第6回楡文賞は,選考の結果,石川めぐみ 氏(1990年中国文学専攻課程卒業)が選ばれ,3月25日,学術交流会館においてその授与式が行われました。氏は1990年に中国語中国文学専攻課程を卒業したのち、NHK函館局に就職し、10年ほどディレクターとして活躍しました。この時期に石川氏は、1993年、たまたま取材で奥尻島にいた折りに、北海道南西沖地震に遭遇しました。現場の惨状を伝えた最初の報道は、石川氏によるものでした。 1996年、東京のNHK本局に移動していた彼女は、中国語の能力を買われて「NHKスペシャル・故宮」の制作に加わりました。その後2001年、NHKを退職し、中国での日本語教師という新たな道に踏み出し、北京第二外国語学院で日本語教師を務めました。日中の間をつなぐ仕事を広くやってみたいという気持ちがこの時につのりました。そこで石川氏は、2004年に「北京東邦互恵コンサルタント」という中国の内資会社を立ち上げました。その主要業務は、中国に進出する日系企業の支援です。石川氏は、日本人と中国人の文化の違いや会社感覚のズレから生ずるさまざまなトラブルを解決しながら、会社を軌道に乗せました。
そのほかの仕事としては、北京オリンピックの際のNHKのリサーチャーおよび通訳。上海万博の準備状況リサーチと報告 小冊子の作成。中国茶関係の本のリサーチと取材交渉などをし、さらにはNHKテレビ「中国語講座」のスキットにも出演しました。
以上が北京での活動内容であります。こうした仕事で生活も安定し始めると新たなチャレンジ精神がうずいてきました。立ち上げた会社に関して、道なき原野を切り開く時期はもう終わり、あとは中国の社員たちが引き継いで発展させていけばよい、と彼女は判断し、彼女の視線は、今ふたたび北海道に向けられています。すなわち中国人観光客を北海道に呼ぶ仕事です。現在、北海道は中国人の間では憧憬の的です。そこで彼女は北海道専門の旅行会社を作ろうと考え、猛勉強で旅行業務取扱管理者の資格を取り、2009年10月に法人設立の申請を行い、今年から実際の業務が始まります。
石川氏はさらに、北海道大学中国同窓会の副会長として、同窓会活動にも熱心に携わっています。現在、北大中国同窓会の会長は中国農業大学の李里特教授が務めておられま す。彼は例年6月に札幌で開かれる北大連合同窓会総会に出席するほどの、同窓会活動に熱心なかたですが、石川氏はその片腕として活躍しておられます。また彼女は、北海道人 会の幹事をも務めておられます。
以上が石川めぐみ氏の、現在に至るまでの活動のあらましです。彼女の活動は、学術文芸活動でもなく、社会貢献事業でもありませんが、楡文賞の授賞対象をもっと広く捉えるべきであるというのが、選考委員全員の一致した意見でした。その意味では、日本と中国の間をつなぐというパワフルで国際的に活躍する起業家が先輩がいることは、文学部の後輩たちにも大きな励みになると思われます。こうした一連の諸活動に鑑み、北海道大学文学部同窓会楡文賞選考委員会は、2009年度の楡文賞を石川めぐみ氏に授与することに決定しました。