08.オシャレ! 1950年代ファッション

 Falloutをプレイしていて、防具の一種である「服」のデザインに惚れた経験はないだろうか。「あ、この服ステキ!」「かっこいい!」「かわいい!」——特に最新作であるFallout76では、プレイキャラ用のスキンとして実に沢山の洋服がラインナップされており、筆者はあれこれと楽しく悩みながらついつい色んな服を買ってしまっている。今回はそんな「ステキでオシャレ」な1950年代アメリカのファッションについて調べてみよう。(なお資料の関係上、女性ファッションに関した内容が多めになることを先に断っておく)



1950年代アメリカで活躍したブランド

 ファッションというものは得てして流行そのもの、とも言える。そして流行を牽引するのは、最先端を行くブランド・メーカーたちだ。まずはその流行の最先端を走ったファッションブランドについて挙げてみよう。
 まず一つ目は、クリスチャン・ディオール。現在でもデザインの最先端を行くブランドのひとつである。ディオールが作り上げた「なで肩のフレアスカート」などに代表されるファッションの新しい形は当時「ニュールック」スタイルとして爆発的に流行した。
 二つ目は、バレンシアガ。パリを本拠地とするこのブランドは1950年代にディオールと肩を並べるほどの人気だったという。バレンシアガは当時ディオールが発信した流行の逆を行き、滑らかな、そして肩を広げ腰の強調を取り除いたシルエットを発表したそうだ。
 三つ目は、チャールズ・ジェームス。アメリカ初のクチュリエ(男性の裁断師)とも言われ、彫刻や建築のように造形的で美しいシルエットが特徴だったという。そのデザインはディオールの「ニュールック」と比較され、賞賛を集めた。
 四つ目は、ジャック・ファット。第二次大戦後にアメリカにおける既製服の展開で成功を収めたブランドだ。現在では香水が有名なようである(検索すると服よりもまず香水が先に出てくる)。カジュアルなデザインが持ち味で、ドット柄のイブニング・ドレスなどがその象徴である。しかし42歳の若さで亡くなったことから、現在ではあまり知られていないデザイナーでもあるという。



1950年代の女性ファッション

 では次に、当時のアメリカで流行したファッションスタイルについて調べてみよう。先にも述べた通り、当時はディオールが発表した「ニュールック」スタイルが人気だった。ゆったりとなだらかな肩のライン、そして細く絞ったウエストから長く広がるロング・フレアスカートという組み合わせのシルエットだ。
 女性らしさを強調したその形状から「コロール(花冠)・ライン」、また数字の「8」に似ていたことから「8ライン」などと呼ばれるスタイルである。戦争が終わり、女性が女性らしさを発揮する機会=ファッションを楽しむ機会を求めていたところに誕生したのが、この「ニュールック」だったという。そのため、このスタイルはすぐに人気となったそうだ。
 ディオールの「ニュールック」スタイルは、現在でも人気のAラインなどを取り入れていた。その他にも1950年代のファッション界は様々なシルエット・ラインを提案し、バレンシアガからはウエストを絞らないストレートなシルエットや「バレル(樽)・ライン」と呼ばれるものが登場。他にもジバンシィやシャネルなどが「サック(袋)ドレス」を発表した。
 また、洋服に合わせて帽子やグローブをつけることも流行っていたようだ。スーツやドレス、色んなスタイルに帽子・グローブを合わせ、エレガントかつモードに仕上げることがこの時代のファッション・シーンで人気だった。
 そしてシルエット、ラインとは別に流行ったものに「洋服の柄」がある。次はこの柄についてみてみよう。1950年代アメリカでは「ポルカドット」と呼ばれる中程度の大きさの水玉模様や、チェック、そしてストライプが流行していた。特に「ポルカドット」は定番ともされていたようで、様々なワンピースやドレスなどにその模様が使われている。現在でも通用するようなオシャレな服装が、この時代は多かったようだ。



男性ファッションについて

 変わって次は男性ファッション。1950年代アメリカで男性ファッションとして輝いてたもののひとつに「バイカー」「ロカビリー」スタイルがある。これは読んで字のごとく、バイクに乗るような人たち、ロックンロールな人たちのスタイルだ。Tシャツ、革ジャン、そしてデニムや細めの黒パンツにブーツ。また服とは別だが、このバイカースタイルに合わせて髪型をリーゼントにすることも流行った。Fallout3に登場する主人公の友人ブッチやNew Vegasに登場するザ・キングスなどは、総じてこのバイカー、ロカビリースタイルであると言えよう。
 また、他にも意外(筆者感)ではあるがアロハシャツなども人気のアイテムだったという。アロハシャツに太めのズボン、そして夏用のつば付き帽子「パナマ帽」。これだけで、すぐに夏の定番スタイルの出来上がりだ(これはFallout76の「Fallout 1st」特典であった「ハワイの衣装」で再現できるかもしれない)。
 男性用のスーツについても語る必要があるだろう。スーツは基本的な構造こそ変わることはないが、時代によって様々なスタイルに変化している。1950年代の男性用スーツは、少し太めのものが主流だったようである。身体を大きく見せることが、カッコ良く見える時代だったのだ。



1950年代のアクセサリー

 服のスタイルが変われば、アクセサリーも変わる。戦争が終わり経済が上向きになってきた1950年代、女性が身につけるアクセサリーも様変わりした。先にも触れた「ニュールック」スタイルに合わせるように、アクセサリーもイヤリング、ブローチ、リング、ネックレスなどをセットで揃えることが多くなった。これらは「コスチュームジュエリー」と呼ばれた。
 コスチュームジュエリーはそれまでの主流であった宝石や貴金属で作られた「ファインジュエリー」と異なり、ガラスやプラスチックなど安価な素材で作られたもの、いわゆるイミテーションなジュエリーを指す。そう聞くと単なる安物の大衆文化かと思われるが、驚いてはいけない。その先駆者はまさかのココ・シャネルだ。
 ヨーロッパの上流階級の間ではあまり価値を見出されなかったコスチュームジュエリーだが、それがアメリカに渡ることによってその価値と存在が評価されるようになったという。コスチュームジュエリーの持つイメージやコンセプトが、アメリカ社会に上手くマッチしたのだろう。
 1950年代では、40年代に戦争のためなかなか手に入らなかったジュエリーの素材がまた使えるようになり、まずは真珠が人気を博したという。それまで養殖だったものが、天然モノを使えるようになったのだ。そうして多くの女性が再び真珠の輝きに魅了された。デザインは主に大粒をひとつといったものではなく、何連にも重ねた豪華なネックレスなどが人気だったようである。
 また、50年代に入り戦争の装備品の素材として使われていた「ルーサイト」と呼ばれるアクリル樹脂が大量に余り、デザイナーがその素材に目をつけた。ルーサイトはその透明度の高さや強度からアクセサリーに使われるようになり、それが当時のファッションに非常に良く合っていたという。また重みがないため大振りで大胆なデザインのアクセサリーを作ることを可能にし、ボリュームのあるジュエリーが生まれた。



1950年代ファッションは今でも可能なのか

 さて、ここまで1950年代のファッションについてあれこれと語ってきた。レトロ雑貨の回でも触れたが、知ると欲しくなってしまうのが筆者である。そこで、今でもそれら50年代のファッションを買う・身につけることは可能なのか調べてみることにした。簡単にであるが、入手方法についてまとめてみよう。
 まずビンテージな古着屋がその視野に入ってくる。店によってはきちんと年代ごとに古着を仕分けているところもあるので、店員に聞いてみるか、もしくはネット通販で「50年代」「50's」といった単語で検索してみるのが手っ取り早い。
 次にオススメなのが、これら1950年代のファッションにインスパイアされた現代のブランドを模索すること。厳密には実物のビンテージではないが、そのスピリッツは受け継がれているためデザインや素材など似通っていることが多い。また現代にリアルタイムで流通しているため、ある程度安価で手に入りやすいという利点もある。
 他には、当時の素材を使って自分で作ってしまうという手もあるだろう。先にも触れた「ルーサイト」などは、現在もビーズ屋で手に入る素材だ。これを使って自分でアクセサリーを作ってみるのも良いと思う。
 ぜひ色んなものを見て、当時の流行に思いを馳せてみて欲しい。



参考文献



2019.07.30 初版
2023.09.19 掲載