Melanomma 科の分類学的再検討

この度は弘前大学若手優秀論文賞を頂きまして受賞講演を致しました。受賞論文はStudies in Mycology に掲載されたPseudodidymellaceae fam. nov.: Phylogenetic affiliations of mycopappus-like genera in Dothideomycetes です。私のみならず共著の皆様あっての研究でした。この受賞に際して平成29年度弘前大学学術特別賞受賞者講演会で発表する機会を頂きましたので、簡単な講演のまとめを致します。

子のう菌類の分類には有性世代と無性世代で異なる分類体系が構築され、それが今もなお尾を引いている問題があります (参照 子のう菌類について)。それらを解決するためには正体不明のままにある無性世代の菌類の系統を明らかにしつつ、現行の体系を修正していくアプローチが一つの解決方法だと思います。本研究の主役となるPseudodidymella およびMycodidymella は、かつて青森県で報告されたブナ、トチノキの大型輪紋葉枯れの原因菌です (Wei et al. 1997, 1998)。先行研究によるとMelanomma 科は子実体構造が著しく発達した有性世代を持つことで特徴付けられますが、無性世代は"多様である"というくくりのもとで大まかに特徴付けられてきました。

そこで、上記の疑問を解決するためにMelanomma 科関連属菌を集め形態観察および分子系統解析を行いました。Pseudodidymella およびMycodidymella およびその関連属は狭義Melanomma 科のメンバーと大きく異なる特徴を持ち合わせることから別科として区別すべきであると結論づけました。

    • 生活環にプロパギュールという大型の感染胞子をもつ
    • 無性世代が糸状不完全菌型である
    • 有性世代が炭質に発達するMelanomma と大きく異なる

本研究のあるところはかつて報告されてきた正体不明の菌類の生活環を改めて見直し、それらの形態的・生態的特徴付け、宿主ー寄生者の共進化にスポットを当てたことにあります。