EI-TERRACE 2020

第224回 - 2020/12/27
Will 2021 be a good year?
2021年は良い年となるか。

コロナ禍終息の見通しが立たないなか、この問題の解明に向け、各分野の専門家が日夜、AI・スパコンなどの科学的手法を用いてさまざまな分析・予測を行っています。英語では「予測」は、anticipate, calculate, estimate, forecast, foreknowledge, foresee, foresight, foretell, forethought, guess, outlook, predict, project, prognose, recognizeなど、ニュアンスに応じて使い分けられています。


また、「備えあれば患いなし」(well prepared means no worries in time of need) という格言があります。この格言のとおり、将来予測は危機管理に欠かせません。危機管理能力が高い人と低い人との間には大きな違いがあります。たとえば、危機管理能力が高い人の特徴には、常に目的意識を持って行動している、計画してから行動する、調べる習慣がある、充分な備えがある、トラブルが起きても焦らない、固定観念を捨てることができる、豊富な知識・経験が人一倍あるなどがあります。そのような能力を持つ人材を育成する必要性が、国家レベルで問われています。


NRI (野村総合研究所) は書籍やセミナーなどで毎年、さまざまな分野の予測(NRI予測)を発表しています。今回はその年表を参考にして、各自が従事する分野で用いる「予測」の種類およびその重要性のほか、危機管理能力を向上する方法を学ぶことを目的にミニ議論を行います。


第223回 - 2020/12/20
Are cows more useful than mice during the COVID-19 pandemic? 

コロナ禍、ウシはネズミより役立つか。


今年は十二支で子年(ねずみどし)でしたが、来年は丑(うし)です。ネズミは、英語でmouse・mice・rat・rodent等と呼ばれ、ウシは、cattle・cows・bulls・Bovinae・Bos tauras・ox 等と呼ばれて、ネズミとウシに由来する熟語・慣用句は多数あります。(*)


言うまでもなくネズミもウシも古代から人間の生活に深い関係を持っている動物です。ネズミは、一般的に病原菌やウイルスを運ぶ害獣として忌み嫌われていますが、新薬を作るのに欠かせない実験動物です。これはなぜでしょうか。アフリカ東部タンザニアでは、非政府組織(NGO)「アポポ」が、嗅覚の優れたネズミを使い、結核菌の検出や地雷探知に取り組んでいます。またネズミを使った解析モデルには、コロナウイルス用ワクチンの効能を評価する為に使われまています。


一方ウシは、家畜として乳牛、肉牛の他、土壌改良、娯楽、信仰等にも幅広く使われています。その胆石は五黄という生薬として高価で売られ医薬品の成分となっています。米国サウスダコタ州スーフォールズ市にあるSAB Biotherapeutics社は、人間の免疫系遺伝子を与えたウシからコロナウイルス用の抗血清Polyclonal antibodiesを製造しています。さらに、現在、コロナウイルス用ワクチンの流通では、冷凍保存・配送システムが最大の課題になっています。インドで実用化されている、牛の凍結精液配送システムが遠隔地への配送に応用できる可能性があり期待されています。


今回は、新年を迎えるに当たり、ネズミとウシの事を学びながらミニ論議を行います。


(*) 例、mouseの熟語・慣用句cowの熟語・慣用句


第222回 - 2020/12/13
Is technocracy impediment for recovery?
テクノクラシーはパンデミックに有利か不利か。

世界中で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 感染が更に加速する中、米国ではトランプ大統領の影響で“Science Denialism” (科学否認論) を支持する有権者の動きが止まりません。一方、常にトランプ大統領と相反する事を断固述べ続けた「ホワイトハウス・コロナウイルス・タスクフォース (White House Coronavirus Task Force) 」のメンバーでアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長に因んだ “Fauci Effect” (ファウチ効果) により、医学部への志望者数が増加しています。これは何を意味しているのでしょうか。


イギリス初の女性元首相Margaret Thatcher、アメリカ合衆国元大統領Jimmy Carter、ドイツ初の女性首相Angela Merkel、そしてフランシスコ・ローマ法王The Popeの共通点は何でしょうか。答えは、皆理系の指導者です。サッチャー元首相は化学、カーター元大統領は原子力工学、メルケル元首相は分析化学、ローマ法王は化学を専攻しました。更に、大規模5カ年計画、高速道路・鉄道網計画、大型重力式コンクリートダム計画等を果たした中華人民共和国のトップ政治指導者の多くは理系出身です。


後藤新平鈴木善幸田中角栄鳩山由紀夫の共通点は何でしょうか。技術立国を目指していた日本で、皆どのような役割を果たしたのでしょうか。今回は、科学技術に裏づけられた高度の専門知識によって国家の政策決定に関与する高級技術官僚や専門家 (テクノクラート) の事を学びながらミニ論議行います。(*) 


(*) 2019年11月時点、60ヶ国の技術強化国中、日本のランキングは32位です。


第221回 - 2020/12/06
Is gerontocracy impediment for growth?
長老支配はパンデミック対策に不利か有利か。

高度で迅速な政治的判断が求められる新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対策で、高齢の指導者を選ぶ事が有利か不利か、世界で論議されています。ジョー・バイデン氏が来年1月20日正午に次期米国大統領としての任期が始まる時、1942年11月20日生まれのバイデン氏は史上最高齢78歳です。バイデン氏の年齢や健康状態に関して様々な報道が流れてます。

又、現時点公開されているバイデン氏の閣僚中、財務長官に任命されるジャネット・イエレン氏 (女性) は74歳、国連大使に任命されるリンダ・トマス-グリーンフィールド氏 (女性) は69歳、合衆国下院議員長のナンシー・ペロシ氏 (女性) は80歳です。今までのデータで、高齢者 (又、肥満を含む基礎疾患者) のCOVID-19感染率・死亡率は50代・60代と比べて高い事がわかっています。

一方、今世界各国で30代・40代の若い指導者が相次いで誕生している現象も見られます。オーストリアのクルツ首相 (34)、ニュージーランドのアーダーン首相 (40)、アイルランドのレオ・バラッカー首相 (41)、フランスのマクロン大統領 (42) 等です。これは、なぜでしょうか。パンデミックは、どのような年齢の指導者により効果的に解決されるのでしょうか。

今回は、指導者の年齢と指導力に関するメリットとデメリットを学びながらミニ論議を行います。


第220回 - 2020/11/29
Should we pay people for donating blood?
献血を有償にすべきか。

献血血液には、赤血球 (40-45%)、白血球 (約1%)、血小板 (約1%)、血漿 (約55~60%) が含まれています。それから作られる輸血用血液製剤には、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、全血製剤があります。さらに、血漿に含まれる「たん白質」からは、免疫グロブリン製剤、血液凝固第VIII因子製剤、アルブミン製剤、その他が作られています。

日本赤十字社によると、「血漿分画製剤は、一部を除き、献血血液の成分である血漿を原料としてのみ製造が可能、H27年度からR1年度までの4年で血漿の必要量が1.2倍」とあります。この背景に何があるのでしょうか。どこで何の目的に使われるのでしょうか。そして、これらの製剤は誰によりいくらで売られているのでしょうか。

血漿分画製剤の世界市場規模は、DIIレポートで「2020年の286億米ドル (約3兆円) から、2025年までに395億米ドル (4兆円以上) まで拡大し、予測期間中のCAGR (年平均成長率) で6.7%の成長が予測されいる。」とあります。WSJでは「コロナ回復期血漿は1ミリリットル11万円で売られている」と報道されています。(*)

今回は、国によって異なる「無償」・「有償」献血の背景を学びながらミニ論議を行います。

(*) ウォール・ストリート・ジャーナル(英語: The Wall Street Journal、略称:WSJ)は、ダウ・ジョーンズ社が発行する国際的な影響力を持つ日刊経済新聞です。


第219回 - 2020/11/22
Should we donate blood during the coronavirus pandemic?
コロナ禍中 、献血すべきか。 (*)

新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に献血協力者の減少が続いていると言われてます。実際、輸血用血液の在庫量 (特にO型) が不足し始めている地域が発生しており、(日本) 全国的に推移すると、必要な輸血用血液の供給に支障が出てくる可能性があります。日本赤十字社のスポークスマンによると、「コロナ禍中であっても輸血を待っている患者は全国で毎日約3,000人いる。それを支える献血者は毎日約15,000人。」との事です。

献血を含む「血液事業」には、国 (厚生労働省)・自治体・日本赤十字社・製薬会社等が関係しており、その中どのような環境・状況で血液が「不足」しているのでしょうか。因みに、全国で献血の窓口となっている日本赤十字社は、世界181カ国ある国際赤十字赤新月社連盟 (世界最大の人道主義団体) の一つで、国内単独の民間組織です。しかし、その設立は、日本赤十字社法(昭和27年8月14日法律第305号)という法律に基づいて設置された認可法人です。

今回は、世界各国で行われている「献血」の内容、メリット・デメリット等を学びながら、ミニ論議を行います。

(*) 一般的に英単の “donate” は、貧しい人達、困っている人達を助ける意味で何かをあげる事「寄贈する、寄付する」慈善行為を指しますが、実際色々なニュアンスと異なる現実 があり、「献血」を意味する時は、”Blood Drive(s)” とも言います。


第218回 - 2020/11/15
Drug Recycling - Yes or No? 
リバイバルドラッグを飲みますか。

2019年7月に発表されたOECD (経済協力開発機構) の医療関係統計によると、日本の対GDP保健医療支出は10.9%(36か国中6位)となっています。日本の保健医療支出に占める医薬品およびその他非耐久性医療財支出の比率はG7の中ではもっとも高く、薬剤師数、薬剤師養成数ももっとも多いと報告されています。日本のような健康保険制度のない米国の対GDP保健医療支出は18%で、新型コロナウイルス (COVID-19) の影響を受けて、保険料は約4割り上がる見込みです

このような中で、残薬の扱いが社会問題になっています。日本では、自宅に保存されている飲み残した薬の粗推計金額は、年間約500億円以上にもなると言われています。これは、薬が残っているにもかかわらず、薬局でまた同じ量の薬を受け取ってしまうと、必要以上の薬を保持することになってしまうからです。さらに、薬局では、年間100億円分以上の医薬品を期限切れの為に廃棄しています。近年これを有効に利用するビジネス (和製英語でリバイバルドラッグ) が注目されています。

米国では、2009年にスタンフォード大学の2人が始めた非営利会社 SIRUM (Supporting Initiatives to Redistribute Unused Medicine) 「未使用医薬品の再流通の取り組みをサポートする」が、社会起業家大賞を受けました。日本でも、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第24条等の法的規制がある中、様々な試みが行われています。

今回は、Drug Recycling (リバイバルドラッグ) の現状を学びながらミニ論議を行います。


第217回 - 2020/11/08
Chemical Drugs vs Chinese Herbology
化学薬品か漢方薬か。

H28の国内医薬品生産金額は、医薬品全体が約6兆6,239億円、内漢方製剤等は約1,626億円(OTCも含め)でした。医療用漢方製剤に関しては、約90%の医師が幅広い診療で漢方薬を処方していると言われてます。現代医学にのっとって漢方薬を使用する「サイエンス漢方処方」という新しい概念もあり医療現場で実践されています。漢方薬は化学薬品とどう違うのでしょうか。

農林水産省の補助事業である薬用作物産地支援協議会では、「漢方医学は中国起源の医学を基に日本で独自の発展を遂げた伝統医学」と定義しています。漢方薬の原料となる生薬には、植物の花、葉、茎、根、樹木の樹皮、果皮、動物由来資源、鉱物由来資源が含まれ、それらの77%が中国から輸入されています。安全性に問題ないのでしょうか。副作用は?

本草学 (Herbal Medicine) を応用した Phytotherapy (フィトセラピー) 分野では、新型コロナウイルス対策に役立つ研究が行われています。WHO (世界保健機関)によって組織化されたアフリカ版CDCでは、「本草」を使った研究に力を入れ、現在Phase IIIの臨床実験を行っています。 先月Phytotherapy Research誌に発表された論文では、クェルセチンが新型コロナウイルス治療に果たす役割が述べられています。(*)

今回は、化学薬品と漢方薬の違いを学びながらミニ論議を行います。準備は不要ですが、お時間のある方は参考リンクをご覧になって下さい。

(*)  クェルセチンは、遊離した形で柑橘類、タマネギやソバをはじめ多くの植物に含まれます。


第216回 - 2020/11/01
Do you take generic drugs yourself? 
後発薬品を飲みますか。

トランプ大統領が、新型コロナウイルスに感染した時、ワシントンDC近くのアメリカ陸軍病院で Regeneron社 (米国ニューヨーク州本社)が開発途中のポリクローナル中和抗体カクテルを受けました。ここで言う、カクテルとはバーで飲むお酒の事ではありません。 この新薬は未だFDAに承認されていませんが、市場に出回る時の将来価格は1バイアルで3,000ドル (約32万円) と言われています。これに比べ1975年に発見されて、後発薬品(ジェネリック)として同じ効果が期待できるIvermectin (イベルメクチン) の販売価格は6mg3錠で約38ドルです。 (*)

ジェネリック医薬品市場は、オーソライズド・ジェネリック(AG) やバイオシミラー (BS) を含め拡大し続けており、23年は1兆2727億円と言われています。そもそも、新薬 (先発薬品)、 ジェネリック医薬品、ブランドジェネリック医薬品、オーソライズド・ジェネリック(AG) やバイオシミラー (BS)の違いは何でしょうか。それぞれの、特徴は何でしょうか。価格は、新薬より本当に安いのでしょうか。世界中のOEM工場での製造過程、製品の安全管理に問題はないでしょうか。保険医療制度面で、それぞれの取り扱いはどうなっているのでしょうか。

今回は、様々な種類の薬品のメリットとデメリットについて学びながら、ミニ論議を行います。

(*) 現在、北里大学病院で治験中です。


第215回 - 2020/10/25
Is the US destined for another civil war? 
アメリカで第2次南北戦争が始まるか。

トランプ大統領は、Commander-in-Chief (最高指揮官) として、アメリカの持つ全ての軍隊を指揮監督する権限を有しています。大統領は、核兵器の発射コードとフットボールと呼ばれる核攻撃の許可を出せる道具が入った黒いブリーフケースを携帯しています。このアメリカで、「第2次南北戦争」が始まると言われています。その確率は昨年の段階で35%、大統領選挙直前の確率は想像を絶します。これは何故でしょうか。社会・経済・外交に、どのような影響を及ぼすのでしょうか。

 又「Deep State」(ディープ・ステート)という言葉 (陰謀論) が頻繁にメディアで使われています。それは「国家の内部に潜んでいる国家に従わない官僚」を指します。米CIAやFBIを含めて、トランプ大統領支持者の中に多くいる事を保守派陰謀論者は指摘しています。因みに、強い権力をもつ個人ないし団体が一定の意図を持って一般人の見えないところで事象を操作している陰謀論は国を問わず数多くあります。新型コロナウイルスに関連して、中国人民解放軍生物兵器陰謀説や米軍伝染陰謀説があります。

今回は、国家元首とは何をすべき人なのか、陰謀論者と対話する10のヒントは何か等を学びながらミニ論議を行います。


第214回 - 2020/10/18
IF YOU ARE A US CITIZEN, would you vote for someone else? 
もしもアメリカ市民だったら、他の人に投票するか?

米国は230年以上も大統領選挙を行っています。来月3日実施(予定)のアメリカ合衆国大統領選挙は、今後の日米関係、その他諸国との政治・外交・経済にも大きく影響してきます。現在、米国大統領選挙候補者はメディアの影響で、トランプ大統領とジョー・バイデン元副大統領の事を中心に報道していますが、米国連邦選挙委員会 (fec.gov) の最新情報 (10/13/2020時点の2020年米国大統領選挙候補者リスト) によると、1218人が候補者として登録されています。その殆どは、どの政党にも属さない"Independent"もしくは"WRITE-IN" と呼ばれる人達です。後者は、候補者リストに出ないので、投票者に名前を書いてもらわなければならない公職への立候補者ですが、その中には目を引く候補者もいます。

無所属で唯一大統領になったのは初代大統領George Washington (ジョージ・ワシントン)です。1789年4月から1797年3月までの2期を務めました。今回の選挙でも多くの無所属立候補者がいます。その中でも、元ディズニー映画子役で有名なBrock Pierce氏は、仮想通貨ビジネスで大成功を収め、起業家としても大活躍しています。又、女性クラシックコンサートピアニスト、起業家、ミス・シカゴ等として知られる Jade Simmons氏、ジャーナリスト、ブロガー、コンピュータープログラマーとして活躍しているアメリカインデアンのMark Charles氏等の事を、英国放送協会 (BBC) は伝えてます。 これらの候補者の活動は、目先の選挙ではなく将来のアメリカを考えて地道に草の根を広げていると考えられます。

今回は、目の前に迫った米国大統領選挙に関連した事を学びながら、ミニ論議を行います。


第213回 - 2020/10/11
To Fast or Not to Fast? 
断食した方が良い?

新型コロナ (COVID-19) 禍中、心と体の免疫力を強く保つ事が自己防護策として望まれています。断食は、マハトマ・ガンディーにより始められたハンガーストライキのような政治的意思表示も含めて、その種類とやり方で様々な効果が歴史的に証明されています。ゾロアスター教、ユダヤ教、キリスト教、、イスラム教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教、シク教等では、その習慣が大切に守られています。ジャイナ教では、Paryushana (パリューシャナ)と呼ばれる一年間で最も大切なお祭りで (2020年は8月15日から22日まで) 8日間も断食します。

断食の デメリット (一部) として、一時的に筋肉が落ちる、疲れやすくなる、気分が不安定になる、身体が冷える、社交を目的とした会食に参加できない等がありますが、プロアスリート・格闘技家は怪我の回復、特に関節痛の治療法として取り入れています。一定期間続けると、疲れにくくなり、又体の動きが良くなり、何よりも「脳力」がアップすると言われてます。断食の逆、食べ過ぎ、栄養の摂りすぎのデメリットとして、COVID-19の重症化リスクとなっている「肥満」等があり、それ自体がエピデミック (伝染病) です。各国のリーダーに真の健康体が求められます。

今回は世界中で実践されている断食 (fasting) に関して学びながら、ミニ論議を行います。


第212回 - 2020/10/04
What happened to “LADIES FIRST” amid COVID-19?
コロナ禍中、レディーファーストが必要か。

国連は、創立75周年を迎え、22日から一般討論演説が始まりました。グテーレス国連事務総長は「(新型コロナウイルス・COVID-19の)世界的流行は、女性のリーダーシップの有効性をかつてないほど明確に示した」と演説で強調しましたが、初日に登場した首相全員は男性でした。そして、最初に演説した女性は23日、スロバキア共和国第5代大統領 Zuzana Čaputová (ズザナ・チャプトヴァー)氏で、演説予定の計196人中、51人目でした。因みに、UN WOMEN (国連女性機関) によると、今年1月1日現在、女性が首脳を務める国は20カ国。国家元首は152カ国中10カ国、政府トップは193カ国中12カ国で、いずれも6%台にとどまっています。

COVID-19により女性は特有の状況(非正規雇用、無償労働従事、賃金格差等)が理由で、より大きな影響を受けています。女性と女児に対する暴力の事を、陰のパンデミック(世界的大流行)と呼んでますが、UN WOMENはCOVID-19蔓延に伴い増加する女性・女児に対する暴力に関するデータ・証拠を政府・国際機関・市民社会を含む社会の全てのセクターに向けて発信してます。これらのデータも国連総会演説のように後回しになっていないでしょうか。COVID-19用のワクチンも女性は男性の後に接種するような状況にならないでしょうか。騎士道に由来するマナーのレディーファーストは死語になったのでしょうか。

今回は、「レディーファースト」そのものが差別と言われている現代、再度その起源と考え方を学びながらミニ論議を行います。


第211回 - 2020/09/27
Should we “UPCYCLE” food waste? 
食料廃棄物をアップサイクルすべきか。

世界規模の異常気象で干ばつ・洪水・火災被害が発生する中、新型コロナウイルス (COVID-19) の影響で各地でSupply Chain (供給連鎖) ・物流が大きく変化、経済は失速 (一部で破綻)、多くの人は家・職をなくし、栄養不良に苦しむ子供たちが急増しています。同時に、世界は食品ロス・廃棄問題で、前例のない食糧危機に向かっています。FAO (国際連合食糧農業機関) は、「1日に飢えで死亡する人の数は、年末までにCOVID-19による1日の死者数を上回る」と予測しています。

このような中で、今注目されているのが「アップサイクル食品」です。これは、米国の業界団体が初めてその正式な定義を示した、廃棄されるはずの食材に工夫加えて新しい食品に生まれ変わらせた食品の事です。去る9月13日米国公共放送サービスは、これに関する番組を紹介で、おからを使ったチップを製造する会社を取り上げて話題になってます。

日本では、食品ロス低減化に、環境省、農水省が20年来取り組んでいますが、未だに有効な施策が講じられていません。永年取り組んでいたプログラムも、最近では動きが鈍くなっています。マスコミも'食糧安保'と喧伝しながら、過度なまでの廃棄についてはあまり突っ込んだ報道を避けています。

今回は、世界の食料問題を学びながら新しい形の食べ物に関してミニ論議を行います。


第210回 - 2020/09/20
Are you lying more in the Pandemic? 
パンデミックの中、もっと嘘をついてますか。

森鴎外が深く傾倒していたドイツの劇作家・批評家レッシングは、「いかなる虚偽も、そのためにさらに別の虚偽を捏造することなくしては主張できない。」と述べました。トランプ大統領は、「新型コロナウイルス(COVID-19)の脅威を当初から認識しつつ、軽く見せたかった (downplay)」の理由で米国民に嘘をついた事を正当化しました。著名な映画監督マイケル・ムーア氏は、トランプ大統領を「大量殺人者」だと非難していますが、トランプ大統領の決断を支持する人も多くいます。

嘘 (Lie) には実に多くの種類と定義があります。時代によっても大きく変化しています。世界的に広がったCOVID-19で経済的、社会的に影響を受けている人達は、健康状態 (症状)・家庭の事情を余儀なく周囲に伝えられない状況が出てくる可能性もあります。COVID-19の症状があるにも関わらず、3割り以上の人達がが否定している調査結果 (カナダ、オンタリオ州、ブロック大学実施) が米国ニューヨークタイムズ紙で報道されました。(2020.9.11)今回は、様々な「嘘」の種類 (20+) とその表現、嘘/偽り/法螺 の使い分け、見分け方、ピノキオ症候群等について学びながら、ミニ論議を行います。


第209回 - 2020/09/13
Do you believe in Astrology? 
占星術を信じますか。

Astrology (占星術もしくは占星学) は、古代バビロニアが発祥の地と言われ、ギリシア・インド・アラブ・ヨーロッパで発展した西洋占星術・インド占星術と、中国など東アジアで発展した東洋占星術に大別されています。その中でも、2020年のパンデミックを正確に予測したインドの占星術が今話題になってます。インド最高峰の占星術師と言われるディヴァラト・カシヤップ導師は「ラシ占い」と題する本を出し和訳されました。

神童と呼ばれる14歳のアビギャ・アナンド少年は、「人類は最終的にワクチンを開発するかもしれないが、また別の種類のウイルスがやって来て、どんな抗生物質も効かないスーパーバグ(超多剤耐性菌)が現れる。より大きな災害は、今年12月20日から来年3月31日まで続く、新型コロナウイルスよりも深刻になる。」と予言してます。これはYouTubeにもアップされました。

日本の占星術は、平安時代「宿曜道」と呼ばれ密教の一分野としてもたらされました。一般的に天体の動きが人体に影響を及ぼすことは知られてますが、天文学と占星学の違いは何でしょうか。信憑性の根拠はどこにあるのでしょうか。「鰯の頭も信心から」(Placebo Effect) でしょうか。今回は、色々な占星術を比較しながらミニ論議を行います。


第208回 - 2020/08/30
Do Essential Oils Really Work? 
アロマオイルは本当に効くか。

13-14世紀ヨーロッパには、Plague Doctor と呼ばれる医師がいました。Plagueとは英語で伝染病の意味ですが、当時はペスト菌の感染によって起こる黒死病が蔓延していたので「ペスト医師」とも呼ばれました。そして、このペスト医師は、頭からつま先まで感染された空気から身を守るために"Beak (鳥のくちばし)Doctor Costume”  と呼ばれる衣装を身に着けていました。 

ペスト医師はカラスの頭ように見えるマスクをつけました。このBeak部分には香辛料、ドライフラワー、酢を含ませたスポンジ、現在アロマセラピー等で使われるユーカリ、ペパーミントを含む薬草 (アロマオイルの原料) を入れました。これらは体内に吸い込む空気をフィルターする役割を果たしていたと言われてます。

「ノストラダムスの大予言」で知られる、ルネサンス期の医師、占星術師ミシェル・ノストラダムスは、この「ペスト医師」としても知られてます。当時の様子を書いた『化粧品とジャム論』第一部第8章に は、今の新型コロナウイルス感染症対策に役立つ記述があります。

杉やユーカリから抽出するエッセンシャルオイル(精油)には抗菌作用があります。アロマセラピーでは色々なエッセンシャルオイルが使われます。今回は、アロマセラピーの事を学びながら、ミニ論議を行います。


第207回 - 2020/08/23
Do you prefer quiet beaches? 
ビーチは静かな方が良いか。

新型コロナウイルス (COVID-19) 感染対策のストレスから、海に限らず、自然環境の中で生まれる音に浸りながら解放されたくありませんか。

愛知県常滑市大野町には、「世界最古の海水浴場」と称されるビーチがにあります。「海水浴」とは、そもそも塩湯治として皮膚病や神経痛を治す医療目的でした。これは日本だけではなく、海水浴場からリゾートへと発展させたイギリスも同じです。欧米では海洋療法(かいようりょうほう)「タラソテラピー(thalassotherapy)」と呼ばれます。

現代のような海水浴の歴史は、17世紀のヨーロッパに遡りますが、18世紀後半から一般的になりました。欧米の「海水浴場」は静かで落ち着いてますが、(低迷傾向にある) 日本では多くの海水浴場で、大音量で音楽をかける海の家の増加、いわゆる「クラブ化」問題が起きています。BGMは購買意識とも大きく関係するので、賛否両論があります。

今回は、「海水浴場」の歴史と事例を学びながら、ミニ論議を行います。


第206回 - 2020/08/16
Can AI-Supercomputer make better decisions than politicians? 
人工知能搭載スパコンは政治家より的確な判断が出来るか。

国の新型コロナ感染拡大対策で「何かおかしい」と感じている人が多いと思いますが、それはなぜでしょうか。一時落ち着いたかのように見えた感染者数、夏に入ってなぜ急上昇したのでしょうか。国の指導者は、”I am painfully aware of my responsibility.” とか “It’s a great pity.” 等の発言を (日本語で) 繰り返すだけで、LOGOS (論理) や MORAL (道徳的規範) が欠如してないでしょうか。尾崎治夫・東京都医師会長は「政治家は現場を見に来い!」と怒りの叫び続けてます。

このような中、「富岳」と呼ばれるスーパーコンピューター (スパコン) の試行運用が理化学研究所で始まりました。これには、文部科学省が中心となり1300億円 (国費 1100億円、民間 200億円) の資金が投じられています。このスパコンは、新型コロナウイルス (COVID-19) の性質解明、COVID-19の治療薬物質の探索などに利用されるようですが、さらにAI (人工知能) 機能を搭載して政治的な意思決定を支援するのに使える可能性もあります。

世界的にPPE製造会社・製薬会社等の政治癒着・汚職・腐敗が指摘される中、今回はCOVID-19を含む惨状に要求される「政治的判断とは何か」を考え、さらに国外での事例を学びながら、ミニ論議を行います。


第205回 - 2020/08/09
Will President Trump be re-elected? 
トランプ大統領は再選されるか。

今年11月3日、第59回アメリカ合衆国大統領選挙が行われます。今回の選挙に当たり、今までとは異なる状況 (例えば、新型コロナウイルス感染パンデミック、BLM人権問題等) が選挙結果予測を困難にしているとの見方があります。又、バイデン前副大統領が優位との見方がメディアで流れてますが、実際そうでしょうか。

2016年の大統領選の時は、アメリカ・ワシントンDCにあるアメリカン大学で歴史学を教えるアラン・リクトマン教授が、トランプ氏の勝利を正確に予測してます。リクトマン教授は、地震の研究からヒントを得て、米大統領選挙の結果を予測するシステムをロシア人科学者と共同開発しました。過去9回の大統領選挙中8回を当てています。

来たる11月の選挙に関して、ニューヨーク州立大ストーニーブルック校・政治学部ヘルムート・ノーポス教授は、91%の確率でトランプ大統領が再選する事を予測しています。ノーボス教授の予測システムも科学的根拠に基づくものです。米国で歴史ある時事ニュース誌 “The Atlantic” でもトランプ氏が勝利を収めるかもしれない理由を述べています。

今回は、来たる米国大統領選挙の表と裏を学びながら、ミニ論議を行います。


第204回 - 2020/08/02
Are we prepared for a perfect storm? 
パーフェクト・ストームの準備は出来ているか。

パーフェクト・ストームとは、 一般的に複数の厄災 が同時に起こり、破滅的な事態に至る 「究極の嵐」を指します。1991年北大西洋上で三つの嵐が重なり、巨大な高波が発生して漁船が沈没した事故を描くノンフィクション小説と、2000年に映画化された作品のタイトルに用いられ、広く使われるようになりました。2008年の世界規模で起きた金融恐慌 (リーマン・ショック) の時も頻繁に使われました。

2020年に入り猛威を振るう新型コロナウイルス (COVID-19) 感染、秋から冬にかけて始まるインフルエンザ感染、各地で起きる自然災害を含むパーフェクト・ストームは、未知の部分を多く含んでます。投資信託の業務に就くファンドマネージャーにとっても最悪の年になりました。7/27日 COVID-19とインフルエンザを同時検査できるキットが開発され事が発表されました。問題はその後です。又、今年インフルエンザのワクチン接種を受けた方が良いのでしょうか。

今回は、2020年パーフェクト・ストームで影響を受ける分野と相互関係を学びながらミニ論議を行います。

第203回 - 2020/07/26
Is web conferencing safe? 
ウェブ会議は安全か。

新型コロナウイルス (COVID-19) の影響で、インターネットを介したウェブ会議の利用が急増しました。例えば、Zoom、Google Hangouts、Google Meet、GoToMeeting、Skype (for Business)、Cisco Webex、. BlueJeans、Slack、Appear.in、BigBlueButton等があります。

それらの中には、パソコンやスマホのようなデバイス (機器) を用いて無料で使用できるものがありますが、What is the catch? (裏はなんでしょうか) 何がどう違うのでしょうか。安全に使う方法・世界的に決められた基準はあるのでしょうか。ビデオ会議 (テレビ会議)との違いは何ですか。

今回は、COVID-19用ワクチン開発を標的とした複数国による巧妙で組織的なスパイ活動 (例) と、未だに世界で唯一スパイ防止法のない「スパイ天国」と言われる日本の状況を学びながらミニ論議を行います。


第202回 - 2020/07/19
New Normal or Next Normal? 
ニュー・ノーマルか、それともネクスト・ノーマルか。

各地で発生した自然災害、新型コロナウイルス感染 (COVID-19) で、世界は大きく動き変わる必要性を感じています。各地で「ニューノーマル」を論議する学会・会議が開催されています。問題は、その先です。英語では "What's next?" と言いますが、"What's new?" とは使いません。"New" と "next" には大きな違いがあるからです。(参考リンクをご覧ください)

さらに、「論語」に「温故知新」 - History has a lot to tech us (weblio) - とありますが、 これは何故でしょうか。COVID-19に関して今後の対策を考える時、過去のパンデミック - 汎発流行した感染症 - を徹底的に研究する事は非常に役立つと考えらます。例えば"1918 Flu Pandemic" - 1918年に起きたH1N1 インフルエンザ感染症です。(*) 

今回は、問題の過去・現在・ 将来を論議するために必要な要素、今だけで終わらない根本的な問題 を学びながらミニ論議を行います。

(*) "Spanish flu" (スペインかぜ) とも呼ばれてますが、なぜそのように呼ばれるようになったかは、参考リンクのWhy Was It Called the 'Spanish Flu?'を ご覧ください。因みに、"1918 Flu Pandemic" を 「スペインかぜ」 と呼ぶ事は歴史的に誤った知識を招く危険性があります。


第201回 7月12日
Is resilience more important than efficiency?
レジリエンスは効率より大切か。

最近、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関連して「レジリエンス(resilience)」という表現が使われます。ALCでは「〔病気・不幸・困難・苦境などからの〕回復力、立ち直る力、復活力」とあります。"Efficiency"とは能率(性)とか効率(性)を意味します。レジリエンスと効率性の関係は、分野を問わず論議されますが、どちらを優先させるか、どのような状況で"TRADE-OFF"出来るか、どちらかに偏っていると他方にネガティブな影響を与えないかが論点です。世界経済フォーラム(スイス・ジェネーヴ州コロニー本部)は、その解決策として"GO CIRCULAR"を唱えてます。

新型コロナウイルス感染が止まらない米国のNPR(米公共ラジオ局)では、"How I Built Resilience (私がどのようにレジリエンスを構築したか)" と題するシリーズ番組を放送中です。和訳されたページはありませんが、生の声を聞くことができ、国・文化が異なっても共通する要素がある事を学べます。又、2011年東日本大震災を受けて仙台市青葉区荒巻字青葉に設立された学際的な東北大学災害科学国際研究所では、江川新一教授が来る16日「ニューノーマルを創る」と題する一般公開・オンラインセミナーシリーズの中で「目指すレジリエント社会構築とは?」と題する公演をされます。

今回は、レジリエンスと効率の関係を色々な角度から考えながらミニ論議を行います。


第200回 7月5日
Does Japan need an equivalent of the CDC to fight coronavirus? 
日本は、新型コロナウイルスに打ち勝つために、アメリカ疾病予防管理センター (CDC) のような機関が必要か。

世界的に感染拡大した新型コロナウイルスに関する重要な情報・対策を講じている政府機関として、1946年に設立されたアメリカ疾病予防管理センター (CDC) があります。この機関が出すデータは「世界共通ツール (ガイドライン)」としてみなされ、日本でも活用されています。一部では世界中がこのデータに依存していると言っても過言ではありません。

日本でCDCと同じ機能を果たす機関として、1947年に設立された国立感染症研究所 - NATIONAL INSTITUTE OF INFECTIOUS DESEASES (NIID) - が存在しますが、その予算はCDCの1/100以下です。因みにCDCの年間予算は、約1兆3千億です。しかし、問題はお金でしょうか。

問題は日本の医療組織体制・政治・人事等が関係してないでしょうか。災害派遣医療チーム、消防、防衛、核関連省庁間の協力体制は出来ているのでしょうか。CDC設立の前に、FEMA (アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁) のような機関設立を考えるべきでしょうか。

今回は、東北大学 災害科学国際研究所、愛泉会日南病院・疾病制御研究所の事等も学びながら、ミニ論議を行います。


第 199回 6月28日
Should you breathe through your nose?
鼻呼吸すべきですか。

新型コロナウイルス感染症対策として、手洗いや手指の消毒、三密の回避、マスク着用等がWHOで推奨されています。ところが、ENTの専門家によると「鼻呼吸こそ天然のマスク」と言われてます。

日本は4世紀から中国の「道教」で教えられている「気」の重要性が、又最近はインドのヨガを通して呼吸に対する認識が高まっています。武道でも呼吸は基本です。ところが様々な社会的理由で、日本人の7割り以上が口呼吸をしています。アメリカ人は25-50%が口呼吸と言われてます。

人は平均1日500ml入りのペットボトル約2万本分の空気を吸って吐いています。ウイルスに負けない体の免疫力を維持するには、口と鼻の働きをよく理解して健康に保つことが大切です。副鼻腔では殺菌作用を持った一酸化窒素(NO)が作られます。又鼻呼吸は熱中症対策にも役立ちます。

今回は、スタンフォード大学鼻科学者のもとで、鼻を塞ぎ10日間口呼吸だけで過ごした被験者の体にどのような変化が生じたか、等の結果を検証しながらミニ論議を行います。


第 198回 6月21日
Should we drink G and T?
ジントニックを飲んだ方が良いですか。

6月15日、アメリカ食品医薬品局 (FDA) は、トランプ大統領が新型コロナウイルス感染症予防に飲んでいると報道されている抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンの使用許可を撤回しました。FDAのウエブサイトには、"FDA Revokes Emergency Use Authorization for Chloroquine and Hydroxychloroquine" とあります。

Chloroquine (クロロキン) と Hydroxychloroquine (ヒドロキシクロロキン) はどちらも抗マラリア剤で、前者は1934年ドイツで合成されました。後者は1955年アメリカで承認され、WHO必須医薬品モデル・リスト EMLの一つとなっている重要な薬品です。どちらもマラリアの特効薬である Quinie (キニーネ) を含むる植物キナノ木が由来です。

1631年に発見されたキニーネは、絶滅危惧種となった南米アンデス山脈固有キナノ木の樹皮から取れ、これがレシピとなっているのが苦みのあるトニックウォーターです。熱帯地方の英国植民地で香辛料貿易を主業務としたイギリス東インド会社間でマラリア防止のために (ジン等とミックスして) 飲まれるようになりました。

天然由来成分薬と合成薬の効力には差があり科学的に未知の分野が存在します。日本ではキニーネを含むキナ抽出物は食品添加物として使用許可されていて、使用量も規制されていません。今回は、ヒドロキシクロロキンに関するミニ論議をユーモア交えて行います。


第 197回 6月14日
Is it possible to have more than five BFFs?
5人以上のBFFを持つことは可能でしょうか。

Social Distancing (対人距離の確保、社会的距離戦略) や Self-(imposed) isolation (自主隔離) が継続する中、個人・ビジネス・国家間で新しい形態のBFFが求められています。BFFとは、"Best friends forever"の略で、「永遠の友達」・「親友」・「相棒」と訳されます。

1990年代に、霊長類の行動を専門とする英国の人類学者・進化生物学者Robin Ian MacDonald Dunbar (ロビン・イアン・マクドナルド・ダンバー) は、「ダンバー数」を提案しました。これは、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限 (平均150) を示し、それは脳の大きさに比例するとあります。

ところが、最近発表されたデータによると、本当に意味ある親しい関係が持てる限度は5人以内であると示しています。それから少し親しさが薄れた10人、さらに親しさが薄くなると35人程度、そしてその外側に100人が存在していることを指摘しています。Face Book、Instagram、LINE等で何百人もの「友達」を持つ人をどう理解すれば良いのでしょうか。

世界的に孤独死する高齢者が後を絶ちません。日本では、ニッセイ基礎研究所によると、パンデミック前に年間約3万人が孤独死で亡くなっています。現在は更に悲惨な状態が起きてます。今回は年齢・性別を問わずBFFの持つ意味・役割等を考えながらミニ論議を行います。


第 196回 6月 7日
Is WFH the new reality of the 'post-coronavirus world'?
テレワークは新型コロナウイルス感染終息後新しい現実となるか。

テレワークとは勤労形態の一種で、英語ではtelecommuting, telework, teleworking, working from home (WFH), mobile work, remote work, and flexible workplace等と言います。1995年 "work is something you do, not something you travel to" (仕事はあなたがすることであり、旅行することではない) という標語が著者・コラムニストのWoody Leonhardにより作られました。

テレワークの導入が可能な分野として、事務・各種IT関連業務・一部営業・管理職等、導入が難しい職種として生産・製造業、接客・販売業、医療・福祉業等があげられますが、例えば終業後・休暇中でも常に連絡を取り合っている医療・福祉従事者はある意味でテレワークで業務を持続している事になります。又、2010年12月9日米国連邦政府は緊急時の政府機能維持のため、テレワーク強化法を可決しましたが、日本には同等の法律はありません。

地域と職種により異なりますが、現在テレワークを採用している企業・団体は、新型コロナウイルス感染が始まる前から実施している所も含めて3割弱と言われてます。そして感染終息後も持続する所は1割弱と予測されています。今後様々な社会的要因を考慮し、生産性向上を見込んで増え続けるとの見方もあります。同時に、セキュリティやシステム構築の負荷、従事者の勤怠管理・評価体制等の未解決問題も多く存在します。

今回はテレワークのメリットとデメリットを様々な角度・視点から考えてミニ論議を行います。

第 195回 5月 31日
Do we need defensive pessimism?
防衛的悲観主義が必要でしょうか。

日本国政府は、5月25日新型コロナウイルス感染緊急事態宣言を全面的に解除しました。ところが在日米軍は、この非常事態宣言を6月14日まで延長する事を決めました。そして、高速道路各社は高速道路の休日割引適用除外を6月14日まで再延長しました。これらの判断を、楽観的に受け止めて良いのでしょうか。悲観的にとらえた方が良いのでしょうか。それとも「防衛的悲観主義」に基づいた考えた方が必要でしょうか。 。

多くの研究で、「楽観者は適応的、悲観者は不適応的」とありますが、1980年代に米国マサチューセッツ州にあるウェルズリー大学 (名門女子大) 心理学部のJulie K. Norem教授 (女性) と米国ニュージャージー州にあるラトガーズ・ニュージャージー州立大学Nancy Cantor現総長 (女性) は、過去の似たような状況で良い結果を出しているにも関わらず物事を"悪い方に考える" ことで成功している適応的な悲観者の存在を見出し防衛的悲観主義の概念を提唱しました。

新型コロナウイルス感染の第2波・第3波が懸念される中、米国ミネソタ大学感染症研究・政策センターOsterholm所長は、呼吸器を冒す病原体は数カ月から数年は止まらないと述べています。人々はこの間どのような心理状態でいた方が良いでしょうか。今回は悲観主義・楽観主義、又防衛的悲観主義に関する知識を学びながらミニ論議を行います。


第 194回 5月 24日
Have people become kinder during the Coronavirus pandemic?
新型コロナウイルスによるパンデミックの中、人々は親切になったでしょうか。

世界各地で新型コロナウイルス感染拡大に伴う、(特にアジア人に対する) 人種差別、(きわめてあいまいな心理学的概念と言われている) 外国人嫌悪恐怖症、人種を問わない家庭内暴力・脅迫・虐待等に関する報告、さらに殺人事件が後を絶えません。又、世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、緊急報告書『A Perfect Storm』を発表し「COVID-19感染拡大防止のための外出規制や、社会システムやセーフティネットの機能不全によって、身体的・性的・精神的暴力の被害にあう子どもたちが、今後3カ月間で最大8,500万人増加すると推測する 。」と述べています。

一方、多くの人の心を動かす、親切心に満ちた行動も国外で多く見られます。オーストラリアでは、「優しさのパンデミック」と言う表現も生まれてます。Face Bookでは、"The Kindness Pandemic" と呼ばれるPublic Groupが登場し70万人以上の人が賛同して色々なアイデアを紹介しています。又、88人のノーベル賞受賞者と世界の指導者は Laureates and Leaders for Children(子供のための受賞者と指導者)の一員として、世界各国の政府に団結してロックダウン中およびその後の期間に世界の子供たちを最優先するよう呼び掛ける声明 "JOINT STATEMENT BY LAUREATES & LEADERS FOR CHILDREN" を発表しました。

今回は、今後も長引く新型コロナウイルス感染に関連した世界の様々な「親切」と「不親切」を学びながらミニ論議を行います。

第 193回 5月 17日
Will you shake hands again?
再び握手しますか。

握手の習慣は有史以来、相手に敵意のない事を示す行為として始まりました。そして、男女間で禁止される宗教等を除き、多くの文化・国で (他のジェスチャーも含め) 挨拶の標準となりました。1439年、英国で腺ペストが起きた時、ヘンリー6世国王は頬にキスする事を禁止しましたが、その代わりに固く握手する習慣が生まれました。

米国ホワイトハウス・コロナ対策チームの主メンバーで、国立アレルギー感染症研究所・所長のアンソニー・ファウチ氏は、新型コロナウイルスが終息しても多くの人は今までのように握手をしなくなる可能性を述べました。これは、新しい「パンデミックカルチャー」を指しているのでしょうか。今までの、文化的な伝統と価値が失われるのでしょうか。

握手に代わるものとして、単に "Hello" と言う事、 インド文化圏で使われるNamaste、 イスラム文化圏で行われるHand over heart、足を使った挨拶方法、アメリカSFドラマ宇宙大作戦に登場したヴァルカン式挨拶、ハワイで良く見かけるShaka等々考えられますが、ニューヨークのエチケット専門家、マイカ・マイヤーさんは、「ストップ・ドロップ&ノッド」、「グラスプ&グリート」を勧めています。

今回は握手に代わる世界の色々な既存方法と新しい手法を学びながら、ミニ論議を行います。


第 192回 5月 10日
Are contact tracing apps a solution to COVID-19?
接触追跡アプリは新型コロナウイルス感染の解決策になるか。

昨年2月時点、日本におけるスマートフォン (スマホ) の普及率は85.1%です。世界的には約半分 (45.04%) の人がスマホを使っています。(Statista) スマホには色々な機能がありますが、その1つであるBluetooth (ブルートゥース) 機能を使って、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性について通知する追跡アプリの開発が世界で広がっています。

各国・各地域でロックダウン緩和政策が進む中、まだ発症していない感染者、自覚症状のない感染者もいる可能性があります。経済活動を再開すれば、そうした人たちが他の人と接触することになり、再び感染爆発のリスクが起きます。追跡アプリはその (任意) 対策の1つで、米国ではアップルとグーグルが共同開発、ヨーロッパ、日本でも産学官体制で進められています。

しかし、このアプリが収集するデータは誰がどのように管理運用するか、検査結果や利用者以外との接触行動履歴等のデータ扱いはどうなるか。これを誤ると重大なプライバシー侵害問題になりかねない危険性があります。米国のMITでプライバシー侵害とならないPACTシステムを開発中ですが、まだシステム導入提案中です。

今回は、コンタクト・トレーシングに関して、現在多くの人員を動員してマニュアルで行なわれえている状況も学びながら、ミニ論議を行います。


第 191回 5月 3日
Should we all wear face masks?
皆マスク着用すべきか。

新型コロナウイルスの大きさは、直径65 – 125 ナノメーターです。新型コロナウイルス感染患者と接する病院で使用されているN95マスクが防げる粒子の大きさは、0.1 - 0.3 マイクロメーター。これをナノメーターにすると、100 - 300です。さらに、ウイルスを含む咳・クシャミ等による飛翔ガス速度は秒速10 - 30メートルで、最大飛翔距離は7 - 8メートルと言われてます。マスクだけでは新型コロナウイルスを容易に防げません。

最近ドイツでは"MASKEN"と書かれたマスクの自動販売機が駅内で見られるようになりました。又、4月27日からは、大半の州で公共交通機関・店舗などでマスク着用が義務付けられました。罰金を科す州もあります。日本でのマスク着用は、炭鉱などで働く人たちの粉塵対策が始まりですが、1918年に始まったインフルエンザがきっかけで広く普及しました。

世界保健機関(WHO)は、新型ウイルスが流行し始めた頃から、ホームページ等を通して「患者と患者の面倒をみる人だけがマスクを着ける必要がある」と述べ、「マスクはせっけんと水を使ったこまめな手洗いほどの効果はなく、使用者に誤った信頼感を与える」と示唆する研究も多くあります。WHOのマスクに関する最新の見解は、「一定の効果はある」としましたが、その評価が確立されてない事を指摘しています。

米国トランプ大統領もペンス副大統領も、マスクを着用しません。中国によるマスク外交の影響でしょうか。マスク着用には、「買いだめ」「誤った安心感」「誤用のリスク」といった問題もあります。今回はマスクに関する正しい知識を学びながらミニ論議を行います。


第 190回 4月 26日

Vaccination or not for COVID-19?
新型コロナウイルスに対して、ワクチン派か反ワクチン派か。

現在猛威を振るっている新型コロナウイルスに対して、世界保健機関(WHO)の報告によると、世界中で少なくとも62件のワクチン研究が進められています。 同時に、ワクチン接種の擁護派と反対派の間で様々な根拠を基に亀裂が生じています。

セルビア出身、男子テニス世界1位ランクのNovak Djokovic (ノバク・ジョコビッチ) 氏は、シーズン再開に際して新型コロナウイルス・ワクチン接種を義務付ける事に対して否定的です。一方、フランスの女子テニス世界1位の Amélie Mauresmo (アメリ・モレスモ) さんは、"No Vaccine = No Tennis in 2020" (ワクチンなくてテニスは出来ない) と唱えてます。

新型コロナウイルスは、DNAの系統地理学的分析で、A型・B型・C型に分れ、感染患者の症状はまちまちでその対応は複雑です。今までの感染者統計によると、人種・年齢・性別の差もありますが、一般的に肥満、高血圧、糖尿病、喫煙者、血液型A、更にストレスの高い人が多く感染しています。

しかし、この事態で他の感染症予防にまで影響を及ぼしており、国際連合児童基金 (ユニセフ) は、はしかのアウトブレイク(大流行)が起きる恐れがあると発表しました。37カ国で約1億1700万人の子供たちの命が危険にさらされるかもしれません。

今回は、前代未聞の速さで進められている新型コロナウイルス・ワクチン開発に関する事実を学びながらミニ論議を行います。

第 189回 4月19日

Will helicopter money save us from COVID-19 crisis?
ヘリマネでコロナウイルス難局を乗り越えられるか。

ヘリコプターマネー (略してヘリマネ) とは「中央銀行または政府が、対価を取らず、国債買い入れで財政資金を供給して、大量の貨幣を市中に供給する究極の経済政策。」(Wikipedia) の事です。 色々異論がありますが、今回のコロナウイルス感染によるパンデミックで、様々なヘリマネ給付金が支給される動きが見られます。

しかし、アイルランド中銀総裁マクルーフ・アイルランド氏は、「必要なのは家計と企業に対する対象を絞った支援策だ。ヘリコプターマネー政策は対象を絞ったものではないため、今回のような危機の対応に適切な措置ではないと考えている」(ロイター) と述べています。 「自粛」による制限で個人消費拡大は期待できないと考えられます。

今回は、COVID-19が引き金で再び国際的に注目を浴びているヘリコプターマネーに関して学びながらミニ論議を行います。


第 188回 4月 12日

Is it immoral to profit from pandemic?
パンデミックでお金儲けは不道徳な行為か。

薬事日報に、「パンデミックで火事場泥棒」に関連するニュースが出ています。新型コロナウイルス (COVID-19) 感染拡大でマスクの流通が混乱。これに乗じて、一攫千金を狙うブローカーが続々と誕生しています。又、倒産寸前の零細企業等を狙う悪徳業者が増加しています。

アメリカでは、ノースカロライナ州出身・共和党上院議員のRichard Burr (リチャード・バー) 氏と、ジョージア州出身・共和党上院議員Kelly Loeffler (ケリー・ロフラー) さんが、内部者株取引の疑いで批判を浴びています。この2人は、COVID-19の影響が深刻になる事を素早く察知して、大量の所有株を売却しました。

4月4日、米国アトランティック・マンスリー誌は、"The Four Rules of Pandemic Economics (パンデミック経済学の4法則) " と題する記事中、第1の法則として “Save the economy or save lives” is a false choice. (経済を救うか、命を救うかは、誤った選択・二分法) と述べています。

「誤った二分法」とは非論理的誤謬の一種で、実際には他にも選択肢があるのに、二つの選択肢だけしか考慮しない状況を指します。この誤謬には、問題の中間的部分を意図的に排除しようとする試みを反映したものが多くあります。

今回は、ビル・ゲイツ氏の新型コロナウイルスとの戦いに勝つための「3つのポイント」等を学びながら、ミニ論議を行います。


第 187回 4月5日
Amid COVID-19, should reusable bags be banned?
コロナウイルス感染のさなか、エコバッグを禁止すべきか。

Pandemic (汎発流行) となったCOVID-19 (新型コロナウイルス感染症) は、世界各地で大規模な流行が発生しています。このウイルスの生存期間は、マサチューセッツ内科外科学会によって発行されるThe New England Journal of Medicine (3月17日付け) によると、 ▼プラスティック:3日間 ▼ステンレス:2日間 ▼段ボール:24時間 ▼銅:4時間 ▼エアロゾル:3時間となっています。

日本を含む多くの国では、レジ袋の有料化が進み、スーパー等でエコバッグを持参する人が増えているます。アメリカでは現在8州でエコバッグの使用・持参が禁止になりました。代わりにペーパーバッグが使われるようになった所もあります。この傾向は今後増加すると考えられます。因みに、日本のStarbucksでは早くから持ち込み容器が禁止されており、使い捨てプラスチック容器が使用されています。

スーパーでの感染経路として、店内の空気以外、店員・買い物客が触れる商品、店内で使用するカゴ、カート、さらに紙幣・硬貨などが考えられます。そして、家に持ち帰った物を、どのように保管するかによっても大差が出ます。多くの人は、要冷凍・冷蔵品が入った袋表面を殺菌せずそのまま冷蔵庫に入れてしまいます。低温状態では最長28日間生きられるとの研究データもあります。

今回は、Infodemicに惑わされないSARS-CoV-2ウイルスに関する知識、感染対策を学びながら、サステナビリティとの両立等を論議します。


第186回 3月 29日

2020 Tokyo Olympics, GO OR NO GO?
2020年オリンピック、継続か中止か。

COVID-19 (新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患) はPANDEMIC (汎発流行) となりました。パンデミックは感染症により起こり、人類史上大きな被害を与えました。ペスト(黒死病)、天然痘、インフルエンザ (スペインかぜ)、エイズ (後天性免疫不全症候群)、等がその例です。14世紀にヨーロッパで起きたペストは当時ヨーロッパ総人口の約3分の1が死亡、1918-1919年のインフルエンザ (スペインかぜ)は、約5000万人から1億人の死者を出しました。

World Health Organization (世界保健機関) は、「COVID-19の新たなEPICENTER (中心地) はアメリカになる」と警告を発しました。同時に、2020年東京オリンピックは、延期となり、開催が2021年になっても、「2020オリンピック」と呼ばれる事となりました。因みに、3月25日 4:00 a.m.時点で、409,014人の感染患者が確認され、内18,245人が亡くなっています。(Johns Hopkins University Coronavirus Resource Center発表)

現代オリンピックの収入の大半が放映権です。日本は既に、$28 billionを費やしました。今回の延期で、2020年のGDPは1.4%減少すると予測されています。IOCは、2016年、2018年のオリンピックに対して各々$12 millionの保険金を支払いました。オリンピックを目指して、何年も学業や職業を犠牲にして訓練を続けてきた選手は多数います。今回の延期に関して、国際パラ委員会・会長は、「延期 唯一の論理的な選択肢」と述べました。

今回は、規模によって区別される疾患 (特に感染症の流行) endemic、epidemic、pandemicの違い、さらにinfodemic (疫病の流行に伴う誤報が広がって生活・社会に混乱をもたらす状況の事) を学びながら「2020オリンピック」のロゴス、パトス、エトス、カイロスをめぐるミニ論議を行います。


第 185回 3月 22日
Should we host the Intellectual Olympics?
知的オリンピックを開催すべきか。

オリンピック競技に参加するために、選手・関係者、関連業界は膨大な時間と資金をつぎ込みます。「お金がないとオリンピックは出来ないか」、「引き算を上手く使えないか」の論議もあります。例えば、一番お金がかかる競技として、馬術とセーリングがあげられます。競走馬の競り市(日本)において今までの史上最高額が6億円、これに対して競技馬は10億円以上で取引される時があります。

2017年9月15日から有効のオリンピック憲章 (OLYMPIC CHARTER) によると、「オリンピズムの根本原則1.オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学である。」とあります。さらに、「根本原則2.オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。」とあります。

膨大なお金をかけず、「オリンピック憲章」を貫く方法の一つとして"Intellectual Olympics"(知的オリンピック)が考えられます。例えば、毎年8月ロンドンで開催されるMind Sports Olympiad (マインドスポーツオリンピアード) です。1997年に第1回大会が開催されたマインドスポーツの総合競技大会です。競技種目に、数独、五目並べ、も含まれています。この団体のロゴは520BCに古代ギリシャの重装歩兵がボードゲームを楽しんでいる絵に類似してます。

今回は、「脳力」を養うのに役立つ知的オリンピックに関して国内外の動きを学びながらミニ論議を行います。


第 184回 3月 15日
Should Sumo be competed in Olympics?
相撲がオリンピックの種目に加えられるべきか。

3月8日、前代未聞、無観客の大相撲春場所初日が大阪で開催されました。 新型コロナウイルス COVID-19の影響でした。観客の歓声が全く聞こえない中、響いていたのは行司の勝ち名乗りや報道陣のカメラのシャッター音でした。柔道でオリンピックを目指していたジョージア・ムツヘタ出身、元大関、現在関脇の栃ノ心も力強い闘いを見せました。栃ノ心は、母国で柔道に励んでいましたが、異国日本で各界入りする決心をしました。なぜだったでしょう。

The World Sports Encyclopedia (世界スポーツ百科事典) によると、世界には8000以上のスポーツが存在しています。その中からオリンピック競技として認められ、実際オリンピックに出られるスポーツは極僅かで、その過程は複雑です。例えば、相撲は2018年10月「国際オリンピック委員会からオリンピックスポーツとして全面的に認めらました」との発表がありました。しかし、オリンピック競技としてIOCが定めた採用基準(オリンピック憲章に明記) を満たしてないと出られません。因みに、「夏季オリンピックの競技は、男子では4大陸75カ国以上、女子では3大陸40カ国以上で広く行われている競技のみ。」となってます。

相撲は、多くの人から日本の法令で定められた「国技」と誤解されています。お隣韓国ではテコンドーが法令で定められた「国技」となってます。相撲は日本の伝統文化として、日本の歴史・文化・神事・競技など様々な側面があります。女性に対する差別も問題になってます。相撲が、世界を相手に競うオリンピック競技として加えられるべきか。今回はオリンピックに関する広い知識を学びながらミニ論議を行います。


第 183回 3月 8日
2020 Tokyo Olympics, more disadvantages than advantages?
2020年東京オリンピックのデメリットはメリットより大きいか。

新型ウイルスの影響で2020年東京オリンピック開催の是非が論じられています。しかし、それ以前の問題として、日本には2011年の東日本大震災で発生した多くの問題を含めて、深刻な状況に面しています。例えば、炉心溶融(メルトダウン)した原子炉の冷却に使われた冷却水100万トン以上は、未だ巨大なタンクに貯められています。これらの貯蔵タンクは2年以内に一杯になるので、原田前環境大臣は「海に放出するしかない」と述べました。又、日本にとって"未知の領域" である廃炉作業がすべて終わるまでに約40年と推測されてますが、作業が本当にどれ程進んでいるか、進んでいないか、疑問です。

このような中で、前代未聞の「建設物ファースト」的思考で莫大な公的資金・税金を投じて開催予定の2020年東京オリンピック。採算性、大会後の維持費等に対する考えが欠けるため、結局"clear up someone's mess"するのは国民となります。このような背景には、「建設業者に仕事を回すという利権の構図があるのでしょう。」と安田秀一氏 (ドーム社長) は昨年日経新聞で述べています。オリンピック開催に伴う失敗事例は1896年開催初の近代オリンピック以来数多くあります。1998年の長野オリンピックもその一例です。長野新幹線の影響で"Commuter Olympics"と呼ばれ、開催地の収益性は望めませんでした。

2020年東京オリンピックの実際費用は4兆5千億円 (見積もりの1.5倍) と言われています。今回は、今までのオリンピック失敗例を学びながら、7月から開催予定の東京オリンピックに関するミニ論議を行います。


第 182回 3月 1日
Should "Nike Vaporfly" be banned in 2020 Summer Olympics?
2020 オリンピックでナイキ ヴェイパーフライを禁止すべきか。

ケニアの陸上競技選手、Eliud Kipchoge (エリウド・キプチョゲ) は、2019年10月12日、スイス化学大手のイネオス社が主催する「イネオス1:59チャレンジ」に出場。そこで、1時間59分40秒というタイムを記録しました。そのレースはIAAF (国際陸上競技連盟) が非公認で、 世界記録には認定されませんでしたが、フルマラソンで2時間を切った初めての選手となりました。又、同じケニアの女性陸上競技選手Ababel Yeshaneh (アバベル・イェシャネー) は、今年2月21日IAAF公認ゴールドラベルロードレースにあたるRAK女性ハーフマラソン競技で1時間04分31秒を樹立して世界記録を更新しました。これは、自己記録を1分以上も縮めたものでした。

ところが、その時キプチョゲ選手とイェシャネー選手が履いていた"The Nike Vaporfly Next%"と呼ばれる運動靴が、Technology Doping (技術ドーピング) と考えられるため、正式な競技では使用禁止すべきだと言う論議が起きています。"Doping"は元々「肉体を使うスポーツおよびモータースポーツの競技で成績を良くするため、運動能力・筋力の向上や神経の興奮などを目的として、薬物を使用したり物理的方法を採ったりすること、及びそれらを隠蔽する行為」を指します。近年ではLZR racer swimsuit (競泳用水着)、Ionized shirts (イオン化されたシャツ)、Interactive materials (インターアクティブ材料)、Mechanical doping (機械的ドーピング)、Artificial limbs (人工四肢)、Telemetry hacking (テレメトリ追跡) 等のハイテクも含まれるようになりました。

国内外のエリート選手が使用するようになったハイテクで高価なNike Vaporfly靴は、生体力学的に全てのランナーの足に適しているとは言えませんが、1月2日、3日に行われた第96回箱根駅伝では全出走選手210名中177名 (84.7%) が着用していました。今回はそのような靴の使用がオリンピックで公平か不公平かを論議します。


第 181回 2月 23日
Should prisoners be allowed to vote?
論題: 受刑者は投票を許されるべきか。

『世界刑務所概要(World Prison Brief)』によると、世界で受刑者が最も多いのは米国(200万人以上)で、次に中国(150万人以上)、ロシア(90万人近く)です。日本は5万人程度です。受刑者に投票権を与えるか否かは、国・地域の法律によってまちまちです。又受刑の理由、刑の種類でも大きく状況が異なります。

日本では公職選挙法第11条第1項第1号・第2号で、受刑者には選挙権と被選挙権がありません。しかし、憲法改正のための国民投票には受刑者も投票できます。これはなぜでしょうか。さらに、候補者が刑事施設に勾留されても、推定無罪で獄中から選挙に立候補可能です。因みに、刑法第9条では6種類の主刑と、没収という附加刑を規定しています。

受刑者が最も多い米国では、受刑者も国勢調査に含めて選挙において自党が有利になるように選挙区・規則などを改変・ごまかそうとする Gerrymandering (ゲリマンダー) が行われている地域があります。ゲリマンダー自体は多国で見られます。日本では、ハトマンダー、カクマンダー、ホソマンダーとも言われました。

今回は、世界の受刑者状況を色々な角度から学びながら、受刑者が投票できる事のメリットとデメリットを中心にミニ論議を行います。


第 180回 2月 16日
Should the voting age be lowered?
論題: 選挙年齢を下げるべきか。

2015年6月時点、170国中6カ国において16歳で、4カ国において17歳で選挙権が与えられています。アメリカでは、合衆国憲法修正第26条(1971年制定)により、連邦・地方政府とも選挙年齢が18歳になりました。これは、18歳以上21歳未満の者は徴兵の対象になるにも関わらず選挙権がなかったのは不当であると主張されたからです。

日本では2015年6月19年施行された公職選挙法の一部改正法律で、年齢満18年以上満20年未満 (一部17歳) の者が選挙に参加することができるようになりました。ところが「15歳からの国家公務員」陸上自衛隊高等工科学校生には選挙権がありません。この国家公務員の授業料は無料だけでなく、給与やボーナスも支給されます。

一方、例えば韓国の選挙権年齢は19歳、6カ国で20歳、12カ国で21歳、アラブ首長国連邦では25歳です。選挙年齢とその背景は国によって異なりますが、何を基準に選挙年齢を決めているのでしょうか。年齢を引き下げる引き上げる事のメリット・デメリットは何でしょうか。

今回はスウェーデンに住む「トランプ大統領も恐れる?」選挙権を持たない17歳グレタ・トゥーンベリさんの最近の活動を学びながらミニ論議を行います。


第 179回 2月 9日
E-voting, Yes or No? (*)
(公職選挙) 電子投票制、賛成?反対? 

2月4日米国アイオワ州党員集会の投票結果を報告するスマホ・アプリがクラッシュしました。その結果、米国大統領に出馬する民衆党候補を推薦する最初の投票結果の通知が遅れました。このようなアプリの使用にはアメリカ合衆国国土安全保障省の中に新しく設置されたCISA (サイバーセキュリティを専門にする政府機関) も懸念の色を示しています。

しかし同時にアメリカでは、アメリカ国外に赴任する軍関係者向けに開発されたスマホアプリ "Voatz" (ブロックチェーンとバイオメトリクス認証技術を基にしている) を使用して、特定の障害がある有権者に電子投票を認める動きがあります。例えば、米国ウエストバージニア州では、先月法案 (Senate Bill 94) が可決され、現在知事の承認を待つだけです。

IT技術の進歩は目まぐるしく複雑です。政治家を含む私達は、ネット投票のメリットとデメリットをどのように理解したら良いのでしょうか。今回は既にネット投票を導入している国・地域の例と問題点を学びながら、日本においてのメリットとデメリットを論議します。

(*) E-votingは、electronic voting、internet voting、online voting とも言われます。

第 178回 2月 2日
Mandatory Voting System, Yes or No? (*)
論題: 義務投票制、賛成・反対?

Voter turnout (投票率) の低下を防ぐ1つの対策として義務投票制 (もしくは強制投票制) を用いている国は31カ国あります。その中で、罰則適用が厳しいのが11カ国(例えばオーストラリア、シンガポール、スイス)、厳しくないのは13カ国(例えばアルゼンチン、ギリシャ、モンゴル)、そして罰則が定められてないのは (例えばイタリア、フィリピン、メキシコ)は7カ国です。

日本と強い友好関係を持つオーストラリアにおいては、有権者が正当な理由なく投票しないと罰金の対象となり、その支払い請求に応じないと裁判で有罪判決が下ります。その場合裁判費用も払わなければなりません。オーストラリアでの投票率は90%以上です。世界的に見ると、日本の投票率は非常に低く全体的に5割程度となっています。これは何を意味するのでしょうか。

2015年オバマ大統領は、オーストラリアの例を挙げた後 "It would be 'Transformative' if everyone voted." (意訳: 義務投票制は改革的な事だ) と述べました。「投票」する事は「権利」と「特権」であると憲法で定められているアメリカでも、最近「義務投票制」を支援する動きが高まっています。 今回は、投票に関して世界の最新情報を学びながらミニ論議を行います。

(*) "Mandatory voting" は "compulsory voting" もしくは "obligatory voting" とも言います。


第 177回 1月 26日
Are women better journalists than men?
女性は男性よりジャーナリストとして優れているか。

新聞業界を支えるジャーナリズムの世界も大きく変わっています。時間とお金をかけて真実を突き止めようとするSlow Journalism、予め用意されたアルゴリズム (算法) を基に瞬時に記事が出来る Robot (Automated) Journalism、取材に必要な情報源の調査費を抑えるために用いられるChurnalism、記者自らの実際経験に頼るImmersion (Stunt) Journalism等々、読者が独自に情報を吟味する事が難しくなっています。このような中で、女性ジャーナリストはどのような役割を果たしているのでしょうか。男性より優秀でしょうか。

アメリカ合衆国のジャーナリスト、Nellie Bly (ネリー・ブライ) 女史 (1864年5月5日 - 1922年1月27日)、本名Elizabeth Jane Cochranさんは、暴露報道の開拓者として有名です。ネリーさんは女性に対する職業差別が激しかった環境下、男性ジャーナリストには負けない不屈の精神力と男性には真似する事の出来ない想像力で数々の成果を収めました。メリーさんはブラックウェル島精神病院における患者虐待の実情を自ら患者となり、病院内に潜入して、後内情を暴露した事で多くの人を救いました。

日本では昨年「新聞記者」と題する映画が公開され話題になりました。東京新聞記者・望月衣塑子さんの原作で、若手の女性記者とエリート官僚の対峙(攻防)が見ものです。又紛争地の取材を続けた女性の新聞記者の半生を描いた「プライベート・ウォー」も紹介されました。これは、2012年にシリアで取材中に死亡した戦場記者メリー・コルヴィンの伝記作品です。江川紹子さんは元・神奈川新聞の社会部記者。現在はジャーナリスト。オウム真理教の徹底取材で有名になりました。

現在も、ジャーナリズム学で著名な大学生徒の大半が女性です。が、卒業後必ずしも希望する道を進んでいません。何がその妨げになっているのでしょうか。今回はこれらの理由を学びながらミニ論議を行います。


第 176回 1月 19日
Are Bloggers Journalists?
ブロガーはジャーナリストか。

1985年設立、パリに本部があるNGO国境なき記者団(Reporters Without Borders=RWB)の報告によると、2017年日本の「報道の自由 (Freedom of the Information) 」度ランキングはG7中最下位となりました。全体的には72位で台湾 (45位) と韓国 (63位) より下。2018年には67位まで上がってますが、「グローバルスコアは微減しており、順位向上の理由についてレポートに中に言及されていない」との指摘があります。因みに、1位はノルウェー、2位スウェーデン、3位フィンランドで、フランスは39位、イギリス40位、アメリカは43位でした。アメリカの場合は、トランプ大統領によるマスコミやメディアに対する批判が影響しています。

このような中、現在6億以上のブログ (個人や数人のグループで運営され、投稿された記事を主に時系列に表示する日記的なWebサイト) があります。存在するウエブサイトの数は17億以上なので、ネット上での発言力は大きいと考えられます。ブログは個人に限らず様々なビジネスにも活用され、多様な種類と目的があります。最近の傾向として文章の文字数が長くなっています。新聞・テレビのレポーターより正確でリアルタイムな情報が得られるブログが数多くあります。米国では、記者が情報源を秘密にすることを認めた法律 "Shield Law" (シールド法) に関連してブロガーがジャーナリストとしての権利が保障される判決が下されています。

今回は、ブロガーとジャーナリストの違いを学びながらミニ論議を行います。


第 175回 1月 12日
Do we need newspapers?
紙の新聞は必要か。 (*)

米国ニューヨーク市に本社を置く 1851年創刊のThe New York Times (NYT) ニューヨーク・タイムズ は米国内で3番目に発行部数が多い日刊新聞紙です。 そこで2014年5月から黒人で初めて編集主幹を務めるDean Baquet (ディーン・バケット) 氏は、 「今後2年間が米国のジャーナリズムにとって歴史的な転換期となる」、又「殆どの地方紙は5年以内になくなるだろう。」と語りました。因みに、トランプ大統領はNYTに対して批判的な発言が多いです。

日本においても、新聞離れが深刻となり、多くの新聞社が今後10年以内、倒産に追い込まれる可能性があるとの予測があります。これは、日本新聞協会の公式サイトに掲載されている様々な調査データが裏付けてます。今後の深刻な状態が伝わります。しかし、新聞社が亡んでも、新聞は生き残る可能性はあるのでしょうか。新聞と民主主義、新聞と国民の関係はどう変化して保たれるのでしょうか。それを支える新聞記者は「ペンは剣よりも強し」精神を発揮できるのでしょうか。

今回は、新聞の持つ色々なメリットとデメリットを考えながら、ミニ論議を行います。

(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。


第 174回 1月 5日
Is the pen mightier than the sword?
ペンは剣よりも強しか。(*)

この表現が文章として出たのは、1839年英国の作家エドワード・ブルワー=リットンが発表した歴史劇『リシュリューあるいは謀略(Richelieu; Or the Conspiracy)』の中でした。その前にも「言論は暴力に勝る」と言う考えは様々な形で言われてきました。新約聖書「ヘブライ人への手紙」の中、シェークスピア「ハムレット」中、又ナポレオン・ボナパルトも同じような事を述べています。

「ペンは剣よりも強し」は、慶応義塾大学創設者・福沢諭吉が建学のモットーとした言葉です。又ジャーナリストを目指す人達の基本精神を表していますが、日本国外でも人気の高い作家の村上春樹さんは、普段基本的に「ペンがあまり強くなりすぎないように」ということを意識して文章を書いていると言われています。これは何を意味しているのでしょうか。

又、"Actions speak louder than words" (言葉が語るより行動が語る方がよく聞こえる) の表現もあります。環境問題をめぐり、今世界が日本に求めているのは「言動より行動」と言われています。スウェーデンの16歳環境活動家グレタ・エルンマン・トゥーンベリが国連で行たスピーチで多くの人の心を動かしました。それが行動に変わる行動が期待されています。

今回は、インターネット・デジタル時代における「ペン」の存在と多面性も考えながらミニ論議を行います。

(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。