第 173回 12月22日
Is sensationalism damaging?
センセーショナリズムは有害か。(*)
センセーショナリズムは、比較的良いイメージで使われる"sensational" に"ism" を付けた言葉で、あまり良い意味では使われません。直訳すると「扇情主義」です。報道の世界では、「事実を単純化して、情緒的な勧善懲悪主義をとったり、猟奇事件、恐怖描写などをあおりたてて俗受けをねらったりする手法」(コトバンク) として使われます。1890年代にアメリカで始まったイエロー・ペーパーに由来する"イエロー・ジャーナリズム" が良い例です。
この傾向は、インターネットが普及して、何でもスマホ等で直ぐ情報検索ができるようになった近年に目立つようになりました。見る側は、余りにも簡単に入手できる(膨大な)情報を鵜呑みにして、"FACT CHECK" (事実確認) する重要性と必要性を感じなくなってきているように思えます。日本では、2017年6月「誤情報に惑わされない社会」を目指すNPO団体ファクトチェック・イニシアティブが発足しました。
今年5月24日行われた「総務省 プラットフォームに関する研究会」では、「ファクトチェックをとりまく世界と⽇本の状況・課題」 (by 楊井人文・弁護士 ) が述べられ、その実情と多くの事例が挙げられています。アメリカのトップIT企業では、AI技術を導入してMis-information, Dis-information, Mal-information等を含む虚偽情報を判別するシステムを導入し始めました。
今回は、言論の自由が叫ばれる中、センセーショナリズムをどのように考えて良いかミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 172回 12月15日
Does the end justify the means?
嘘も方便か。(*)
日本で「嘘も方便」は、事態を一時的に丸く収めるために仕方なく嘘をつく、といったニュアンスで日頃使われているように思われます。「嘘をつかない」という人は信用できない、、と言い切るマネジメント・アドバイザーもいます。
イタリア、ルネサンス期の政治思想家、Niccolò Machiavelli (ニッコロ・マキャヴェッリ) が残した有名な著書に『君主論』があります。その中で「どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進させるのであれば許される」(ウイキペディア) という考え方が述べられています。そして、この考え方が近年の国内政治・国際情勢に見られる事を多くの見識者が懸念しています。
『君主論』の思想を凝縮すると、今回のテーマ "The end justifies the means." (目的の達成は手段を正当化する) になります。英語では、"Circumstances may justify a lie." OR "It's sometimes necessary to stretch the truth." OR "A lie is often expedient." とも言います。「嘘も方便」の「方便」は元々サンスクリット語で書かれた仏教用語なので、オリジナルの意味を対比して当てはめようとするとズレを生じます。
今回は、女性が正論を言うことが未だ難しい日本社会の実例を挙げて、「嘘も方便」の歴史と深い意味を考え、ミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 171回 12月8日
Quid Pro Quo - Okay?
交換(条件)は良いか。(*)
英語には、ラテン語からきた表現が多く使われます。例えば、Ad hoc, Alibi, Bona fide, Bonus, Carpe diem, De Facto, E.g., Ego, Ergo, Et cetera, Extra, I.e, Impromptu, Intro, Multi, Per se, Pro bono, Re, Semi, Status quo, Verbatim, Versus, Vice versa等で、Quid Pro Quoもその一つです。
"Quid Pro Quo" の意味は"something for something" で、最近特にトランプ大統領に関するニュースで頻繁に使われています。"Quid Pro Quo" は、状況によって良い意味でも使われますが、今それが外交政策上、政治倫理上、問題ではないかとの見解が出ています。同じような状況は日本でも多く見られます。
「何かのお返しで」返礼品を上げる、貰う、習慣も"Quid Pro Quo" になります。職場でのセクシャルハラスメントには「代償型(Quid pro quo)」と「敵対的環境型」の2つの種類があります。「地位の高い人間がより地位の低い人間に対し、昇進や雇用を約束する代償として性的な行為を要求するタイプのセクシャルハラスメントを指します。」(Cross Current)
今回は、ラテン語から派生する英語を学びながら、"Quid Pro Quo"に関するミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 170回 12月1日
Are Whistleblowers Heroes or Traitors?
内部告発者は英雄か裏切者か。(*)
フェイスブックは個人情報流出問題で大きな波紋を呼びました。ソーシャルメディア・サービス利用者の多くは、利便性を優先して個人情報が誰かの利益のために使用されていることを恐れてないようですが、現在アメリカ・トランプ大統領の弾劾調査も、その一人の内部告発者によって始まりました。
日本でも近年、大企業による検査データ改ざん、虚偽報告などの不正、自衛隊の南スーダン日報の隠蔽、加計学園をめぐる内閣府から文科省への働きかけ、大学への研究資金不正利用など、内部告発により明らかになった事実が後を絶えません。ところが、日本の内部告発者を保護する制度は他国よりはるかに遅れてます。
米国ニューヨークに本社のある世界4大会計事務所のひとつDeloitte Touche Tohmatsuは、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務・法務のビジネスとコーポレート機能から構成されていますが、内部告発を専門としたグローバルホットラインサービスも提供しています。
今回は色々なところで起きている不正行為を暴くための内部告発に関して学びながら、ミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 169回 11月24日
Should we use body language?
ボディーランゲージ (身体言語) を使うべきか。(*)
日本人が海外でよく誤解を招く原因の一つに非言語型直接コミュニケーションの一つボディーランゲージ (身体言語) があります。手招き、ピースサイン/逆ピースサイン、親指を上げるサイン、親指を下げるサイン、人差し指と親指で丸を作るサイン、ストップのサイン、小指を立てるサイン、自分の鼻に人差し指を当てる仕草、口に手を当てる仕草、顔の前で手を振る仕草、タクシーを止めるときの仕草、等々です。
なぜ日本文化ではボディーランゲージ が少ないのでしょうか。2016年に一般社団法人国際ボディランゲージ協会を設立した安積陽子・代表理事は「表情や姿勢、しぐさから、相手の心理を理解し、相互の感情を尊重しながらコミュニケーションできる人材育成」の理念を掲げて、各分野でコンサルティングを行っています。「NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草」(講談社) の著者でもあります。
2017年、難病筋萎縮性側索硬化症・別名「ルー・ゲーリッグ病」 と診断され、余命わずな61歳の英国人科学者Dr. Peter B Scott-Morganは、AIのボディーランゲージを使用して反応する非常にリアルなアバターを開発中です。このプロジェクトは‘Radical Disability Project’と呼ばれ、自ら実験台となり、テクノロジーの活用により重度障害を持つ人々の生活の質を大幅に向上させる試みを行っています。
今回は、ボディーランゲージに対する理解を深めながらミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 168回 11月17日
Is silence really golden?
沈黙は本当に金なり? (*)
「この国民にしてこの政府あり」、"Red Tape" (形式的で非効率的なお役所仕事) 等の表現・格言を一般化させた大英帝国の歴史家・評論家のThomas Carlyleは、山路愛山、内村鑑三・新渡戸稲造など日本の思想家にも多大の影響を与えました。「雄弁は銀、沈黙は金」もその一つですが、「Sartor Resartus『衣装哲学』第三章目によると、これは彼がスイスで見たドイツ語の碑文である。」と言われてます。(ウイキペディア)
「雄弁は銀、沈黙は金」・「沈黙は本当に金なり」で言われる「金」に関しては、歴史的に「銀」と比較して、その希少性や有用性等に基づく価値は必ずしも「銀」より常に優位とは言ません。例えば、お殿様の毒見役が使っていた銀製の箸です。これは当時毒として使われた硫ヒ鉄鉱は銀と反応して黒くなるからです。韓国では、今でも銀箸が使われます。他、日本でも最近一般的な抗菌グッズに銀が使われています。
コミュニケーションにおける「沈黙」にも様々な見方と解釈があります。話す人により、その「沈黙」が何を意味するかによって効果が変わります。例えば、トランプ大統領、オバマ大統領、ジョージワシントン大統領の演説を比較すると違いがわかります。因みに、トランプ大統領のTwitter上での写真とビデオ数は11/11日現在で3,526ですが、ジョージワシントン大統領の演説は全部で9ページだけです。
今回は、使い慣れた表現を様々な角度から考察して、その本当の意味と使い方を学びミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 167回 11月10日
Does telepathy work?
「以心伝心」は通用するか。(*)
日本アイ・ビー・エム株式会社元会長・椎名武雄氏は、「以心伝心など外国人には通用しない。コミュニケーションを密にして、こちらの考えを的確に伝え、向こうがどう思っているかを聞くことが大事」と述べました。同じ事が、日本人同士でも言えないでしょうか。一般的に日本人の「伝える」能力は低いにも関わらず、言葉を介さない「あうんの呼吸」とか「その場の空気を読む」事が出来ない人を敬遠しないでしょうか。
そもそも、「以心伝心」は、良い事なのでしょうか。それともダメな事なのでしょうか。「子供でも分かることわざ格言辞典と慣用句の意味」によると、「以心伝心」は「禅宗での言葉でことばや文字では表すことができない真理や悟りを、心から心に伝えること」とあります。それが、「ちょっとしたしぐさや表情で相手の考えを推測する」という意味になったと考えられます。超能力でしょうか。
米国マサチューセッツ州にあるマサチューセッツ工科大学では、頭の中で考えるだけで、発声なしで「以心伝心」できる特殊なヘッドセット“AlterEgo”が開発されました。「皮膚を貫いたりするものではなく、あごや顔に装着するだけのウェアラブルデバイス」です。この装置の精度は非常に高く、色々な理由でコミュニケーションが取りづらい人の生活に役立つと考えられます。
今回は、「以心伝心」に関わる様々な文化・社会・技術を学んで、ミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 166回 11月3日
Are Japanese really polite?
日本人は本当に親切か。(*)
英語の"politeness"を別の言葉で言うと、affection, cordiality, courtesy, decency, forbearance, good will, goodness, graciousness, hospitality, humanity, patience, solicitude, sweetness, sympathy, tenderness, tolerance, understanding, unselfishness等があります。
日本語の「親切」はどうして“親を切る”と書くのでしょうか。語源由来辞典によると、「親を切る」という意味ではない。 「親」は「親しい」「身近に接する」という意味で、「切」は刃物をじかに当てるように「身近である」「行き届く」という意味がある。 つまり、身近に寄り添い、行き届くようにすることが「親切」の意味である、と説明されています。
海外で、一般的に日本人は親切だと思う人が多いようですが、日本の文化を勉強した人は、「本音」と「建前」を知っています。この文化を知らない人は、本音で言わず、建前で言うことは不親切と解釈します。同時に大きな誤解を引き起こすことにもなります。又、お隣韓国人、中国人は日本人を親切と感じているでしょうか。
今回は、直接型言語コミュニケーション、非直接型言語コミュニケーション、非言語方直接コミュニケーションの違いなどを学びながら、国際舞台で本当の「親切」とは何かを考えながら、ミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 165回 10月27日
Is Job-Hopping bad?
転職は悪いか。(*)
米国ニューハンプシャー州ナシュア市にあるAkumina社が今年6月発表したThe 2019 Millennial Manager Workplace Survey (2019年ジェネレーションY管理者による職場調査) の中で、"75% of millennials believe that constantly changing jobs advanced their careers." (75%のジェネレーションYは、何度も転職した事はキャリアの向上になった。) とあります。
厚生労働省が発表した平成27年転職者実態調査の転職者実態調査の概況を見ると、転職者が直前の勤め先を離職した主な理由として、「自己都合」が 75.5%となっています。その離職理由として最も高いのは「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が上げられています。次が仕事内容です。
アメリカの数字と日本の数字は偶然同じですが、その内容はどうでしょうか。日本の調査会社マクロミルが男女別転職理由を調査 した結果、離職理由NO.1は男女とも「給料」と「残業」という結果が出ています。これは、 2016年3月、20~30代 2年以内に転職した会社員の男女692名を対象にしたものでした。
今回は、転職するメリット・デメリットを考えながらミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 164回 10月20日
Should managers be elected?
管理者を投票で決めるべきか。 (*)
人材サービス企業Monster Worldwide社が行ったMonster Global Pollによると、管理者を投票で決めるとしたら、現在の上司を選ぶ率は24%、同僚を選ぶ率は25%、自分を選ぶ率は30%、外部者を選ぶ率は21%の結果が出ました。誰が管理者になるかは内部事情だけでなく、様々な外部事情も影響してくると思いますが、思い切ってこの方式を導入した企業では驚くべき成果が見られています。
選挙で決める人事制度を取り入れている日本企業の例として、ストレッチ専門店であるDr.ストレッチのフュービックとメガネ・サングラスの小売チェーン・オンデーズがあります。Dr.ストレッチは、内定者辞退防止の為に公開型イベント「みんなで上司を決める社内総選挙」決定戦を2019.10.16(水)行いました。又、オンデーズはこの制度を導入したことで、入社3年後の離職率が全国平均の約3割を大きく下回る5%に減少して。現在も店舗数が増え続けています。
今回は、選挙で決める人事制度のメリット・デメリットを考えながらミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 163回 10月13日
Is "Salary Transparency" productive?
給与の「見える化」は有効か。(*)
2018年に株式会社リクルートホールディングスに吸収された米国カリフォルニア州のGlassdoor社の調査によると、対象となった7カ国 (United States, Canada, United Kingdom, France, Germany, The Netherlands, and Switzerland) の7割り以上の雇用者が、給与を透明化する事に賛成する結果が出ました。
日本では、広島市に本社があり全国に100店舗以上ある『メガネ21』が、徹底した合理化と“丸見え経営”を (社内ウエブ上で) 行い、 で日本一の安さに挑戦しています。又、同社ではパートと社員の“同一労働・同一賃金”を原則としており、社員の離職率は1%台を保っているそうです。
「お金の話をすることは美徳ではない」と考える人が多い国 (日本) で、給与の透明化がどれ位浸透するか今後の課題です。外国人労働者が増える中、職種によりこのようなシステムを取り入れる利点は大きいかもしれません。今回は、給与の「見える化」のメリット・デメリットを考え、ミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 162回 10月6日
Is "Equal Pay for Equal Work" fair?
同一労働同一賃金は公平か。 (*)
10月から、新しいトピックに入る予定でしたが、神奈川県の某会社で監査役を務める「英テラス」遠隔参加者からの要望で、今回の論題としました。
「同一労働同一賃金」の原則は、1919年のヴェルサイユ条約で提起されました。その後1946年に示された国際労働機関「ILO憲章」の中では重要原則の1つになってます。ヨーロッパ、アメリカでは様々な問題・課題を残しながらも、その原則を重視した環境が整いつつあります。
日本では、2020年4月から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」が施行されます。これにより、同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止される事になります。企業と労働者、双方へのメリットとデメリット、問題点は何でしょうか。
今回も、海外の例を学びながら日本で予想される問題を含めたミニ論議を行います。又、前回の「過剰管理」に関する論題の思考ツール例は「参考リンク」ページの [思考ツール例] 部分からアクセス出来ます。他の論題に関しても、同じようにご覧いただけます。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 161回 9月29日
Do you want to be micromanaged? (*)
マイクロマネジされたいですか。
日本でも知名度が高いAmazon.com, Inc.(アマゾン・ドット・コム)、米国シアトル州に本社がある世界で有数な電子商法企業です。複数の巨大な物流センターを所有し、全世界で30万人(フルタイム、パートタイムを含む) 以上の従業員がいます。中国のAlibabaはライバルの一社です。
Amazon.comは様々な技術革新にも取り組んでいます。最近の一例が、"Ultrasonic bracelet and receiver for detecting position in 2d plane" (2次元の面における位置を検知するための超音波ブレスレットと受信機) の特許です。巨大な倉庫で働く作業者の手の動きをトラッキングするリストバンドです。
同じ時間働いても、その職場環境で仕事の成果に差が生じます。一般的に、マイクロマネジメントと言われるとネガティブな印象を受ける記述が多いですが、メリットはないのでしょうか。世界で高く評価されている"The Toyota Way"はどうでしょうか。誰の立場で、その効果を評価すべきでしょうか。
今回はマイクロマネジメントに関して、国内外の例を学びながらミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 160回 9月22日
Are working mothers better mothers?
働く母親はより良い母親か。(*)
「”働く女性”は評価されても”働く母親”は評価されない。」とよく言われます。このような偏見は、どこからきているのでしょうか。父親が職場に子供を連れて行くと好意的な目で見られるのに、母親が同じ事をすると変な目で見られる。これはなぜでしょうか。
メディアグループBonnier AB社 (スウェーデン・ストックホルムに本社) が発行するWorking Mother (働く母親) 誌によると、2000人のアメリカにいる母親を対象にした調査書の中で、「家族と仕事を持つ母親は週平均で98時間働いている。」と報じています。
厚生労働省の「平成28年版働く女性の実情」によると、平成28年の女性労働力人口は、労働力人口総数に占める割合の43.4%になりました。ところが、男女の雇用格差・賃金格差解消は程遠い状態で、働く女性 (特に母親) を支援・有効活用する体制には改善の余地が多く残っています。
同年7月の「国民生活基礎調査」によると、「18歳未満の子どもを育てながら働く母親の割合は2017年に70.8%となり、初めて7割を超えた。」とあり、10年前と比べて「仕事あり」は10ポイント以上伸びています。Working Mom人口は日本でも着実に増えていることを示しています。
今回は「働く母親」について学び、色々なメリットとデメリットを考えてミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 159回 9月15日
Should Workers Have the 'Right to Disconnect?'
労働者は「つながらない権利」を持つべきか。(*)
Northstar調査会社が2016年9月12日~29日間28ヶ国で行ったインターネット調査によると、休暇中でも「一日中」仕事のメールを見てしまう人の割合は1位韓国23%、2位は日本22%でした。まさに、せっかくのvacationがworkationになっている現象です。
BURN OUT (疲れ果てた) 労働者が増加したフランスでは2016年8月8日、El Khomri lawと言われる法律ができました。これは、労働者の「Right to Disconnect(つながらない権利)」を守る事が目的で、仕事以外の時間に仕事に関する連絡に対して一切返答・返信しなくても良いという「オフラインでいる」権利です。
Volkswagen、BMWを含むドイツ大手企業では、anti-stress (ストレス反対)法律に準じて、会社規定の労働時間外に仕事に関するメールを送信・転送する事を禁止しています。労働者は"always available"でなくて良いのです。今後デジタル時代における働く権利は、働き方改革を唱える国にとって重要な課題となります。
今回は「つながらない権利」について学び、その適応性等についてミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 158回 9月 8日
Is at-will employment fair?
随意雇用は公平か。(*)
"At-Will Employment" 又は"Employment at Will" (随意雇用) は、アメリカ合衆国労働法の用語です。米国では、極一部の上層部社員を除いて、殆どの雇用がこの形態で、モンタナ州を除く全ての州で認められています。
随意雇用とは、期間が定まってない雇用契約において、雇用者・被用者のどちらからでも・いつでも・いかなる理由でも・理由がなくても自由に解約できるという事です。辞職も解雇も即時に可能で、予告や手当金は不要となります。
日本でも民法第627条第1項で「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。」とあります。これは、米国の"Employment at Will"の考え方に似ていますが同じではありません。どう異なるのでしょうか。
今回は随意雇用について学び、そのメリット・デメリットを考えながらミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第157回 9月 1日
Do you want to be a zero-hour contract worker?
オンコール・ワーカーになりたいですか。(*)
これは、事業主の求めに応じて不定期に短時間もしくは長時間就労する契約労働者のことです。医療分野では、"PER DIEM" (ラテン語でPER DAYの意味) と言われ、看護師などの資格を持つ多くの医療従事者が利用しています。この形態にも色々メリットとデメリット(これは和製英語) があります。メリットの一つは多数の病院と掛け持ち出来て、短期間で高収入が得られる事です。
今回はメリット(ADVANTAGE) とデメリット(DISADVANTAGE) に関する論議をします。アメリカ合衆国建国の父の一人Benjamin Franklinは、酸素の発見者として知られるJoseph Priestleyの科学者チームが難問にぶつかって悩んでいた時、目の前にあった紙を二つに折ってメリット・デメリットが一目でわかる表を作ることをアドバイスしました。この表にも、メリットとデメリットがあります。
メリット・デメリットの査定方法には色々あります。ハーバード・ビジネス・スクールで行われた研究結果を学びながら、メリットとデメリットに関するミニ論議を行います。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第156回 8 月 25日
Do you really want to be employed?
本当に雇用されたいですか。(*)
一般的に、殆どの人は「雇う人」と「雇われる人」の2種類に分けられます。そして「雇う人」と「雇われる人」の間には大きな差があります。時間の制約度、報酬の格差、様々な法的責任の有無、ひいてはQOL (Quality of Life) の違い等があげられます。
国際労働機構 (ILO) によると、労働力の定義は "the sum of persons in employment plus persons in unemployment" (雇用されている人と雇用されていない人の合計) です。この中には、専業主婦と65歳以上の人は含まれていません。今後それで良いのでしょうか。
最近は、Uber、Lyft、 Airbnbなどで知られるGIG ECONOMY (ギグエコノミー) と呼ばれる新しい分野が確立しつつあります。これは、上の定義に含まれない新種の労働力です。今回は、異なる働き方について学びながら、ミニ論議を行います。
因みに、日本はILOの常任理事国ですが、労働者保護に関わる1号条約(1日8時間・週48時間制)、47号(週40時間制)、132号(年次有給休暇)、140号(有給教育休暇)などが未批准です。
今週の誤謬(logical fallacy) #7は、誤った二分法 (false dichotomy) です。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第155回 8月18日
Can we trust statistics?
統計を信頼できるか。 (*)
前回、OECDの労働時間に関する最新統計によると、日本は(36カ国中) 22位であることを指摘しましたが、同じOECDの調査で、全就業者に占める短時間労働者の割合をみると、日本は22.8%で5位となります。又、短時間労働者に占める女性の割合も高く、69.8%で8位です。さらに派遣労働者の割合は、国際人材派遣事業団体連合の発表調査によると、2015年日本は2.0%で7位です。
15から64歳男性の平均労働時間を、休日も含めた1日あたりの時間で算出すると、日本は2014年OECD諸国の中トップの375分。これは全体平均の259分に比べ2時間近く長い結果となっています。15から64歳女性の家事労働時間を、男性の何倍かで評価すると、2014年日本は4.82倍、インド、韓国に次ぐ3位になりました。
「日本人は働きすぎか」を論議するうえで、厚生労働省・OECD等が出す最新データ、EU・ILOが示した48時間の根拠となっているデータ、労働問題弁護士から得られる専門知識、また国際労働比較資料などを学ぶことが必要です。同時に、現在日本が抱える問題点と今後の状況を踏まえた"働き方改革"も何を基準にするかを考える上で大切です。
今回は、様々な統計資料の妥当性、正当性、信頼性の評価方法について学びながら、ミニ論議を行います。
今週の誤謬(logical fallacy) #6は、多義語の誤謬(Equivocation)です。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 154回 8月 11日
Are Japanese overworked?
日本人は働き過ぎですか。(*)
OECD - 経済協力開発機構 (加盟国36) の労働時間に関する最新統計によると、1位はMexicoで2255時間/年間、2位はCosta Ricaで2212時間/年間、3位はKoreaで2069時間/年間、4位はGreeceで2035時間/年間、5位はChileで1974時間/年間です。日本は22位( 1713時間/年間)で、時間あたり労働生産性は20位で42.1ドルです。G7中では、1970年以来最下位、アメリカと比較すると約6割です。
EU法における指令の1つに、欧州連合労働時間指令(Working Time Directive 2003, 2003/88/EC)があります。これは、EU圏内労働者に対し、週当たりの労働時間として48時間を超えない権利、他労働者に様々な条件を与えています。この48時間は何を基準にしたものでしょうか。その歴史的・社会的背景を学ばないで、これを日本に当てはめる事は適切でしょうか。
国際労働機関 (ILO)が1919年11月28日に採択、1921年6月13日に発効した条約に、"Convention Limiting the Hours of Work in Industrial Undertakings to Eight in the Day and Forty-eight in the Week" (工業的企業に於ける労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する条約) があります。2018年4月時点で52か国が批准しており、EU諸国も含まれています。欧州連合労働時間指令はこれをモデルにしたのでしょうか。
少子化・高齢化・多死化した国は、何を基準に最も適した労働時間・条件等を決めるべきでしょうか。今回は、労働時間に関する事情を学びながら、ミニ論議を行います。
今週の誤謬(logical fallacy) #5は、 藁人形 (Straw man)です。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 153回 7月 28日
Is Cruise Ship Harmful?
クルーズ船は有害か。(*)
世界最大の豪華客船は、ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社 (本社所在地・米国フロリダ州マイアミ市) 所有のハーモニー・オブ・ザ・シーズ号です。(クイーン・メリー2を建造した) フランスのアトランティーク造船所で2016年に建造されました。総工費はUS$1.35 billion、総トン数22万6963トン、最大乗客7000人、乗員2300人。合わせると一つの町に匹敵する大きさです。
この巨大な船を動かすには、1日平均11万リットルが必要です。その燃料として使われているのは、環境汚染度が最も高い (陸地では使用禁止されている) 重油です。英語では、"heavy oil" もしくは "fuel oil"です。重油の別名は「残油」で、ガソリン、灯油、軽油より沸点が高く、重粘質であるため、汚染度は普通のディーゼル・オイルの3500倍にもなります。入港後は精製度の高い軽油に切り替えますが、その場合でも一般のディーゼル車が使用する軽油の約100倍の汚染度です。
さらに、クルーズ船デッキ上の空気、大気汚染は相当酷く、北京やチリの首都サンティアゴと同じレベルである事がジョン・ホプキンズ大学の研究で明らかになってます。他、乗客・乗員からの人的廃棄物、浴室・トイレ・食器洗浄・洗濯などに使用される水、廃棄されるゴミ等を考えると、手放しで喜べる旅とは言えない状況です。はたして「綺麗な観光業」と呼べるでしょうか。
今回はクルーズ船に関する様々な問題を考えながら、ミニ論議を行います。
今週の誤謬(logical fallacy)#4は、人身攻撃 (Ad Hominem)です。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 152回 7月 21日
Should we travel?
旅行すべきか。(*)
アメリカの天才詩人、Emily Elizabeth Dickinson (エミリー・エリザベス・ディキンソン)は、人生の大半を米国マサチューセッツ州西部アマースト町の生家で(旅行することなく)過ごしました。ディッキンソンは、その町で英語学、西洋古典学、ラテン語を学び、アエネアスを読破しました。また、宗教、歴史、数学、地理、生物学も学びました。2016年に公開された "A Quiet Passion" (静かなる情熱 エミリ・ディキンスン)と題する映画では、エミリーの生い立ち、作品などが紹介されてます。
アメリカの女性政治ジャーナリスト、Elizabeth Drewさんは旅行に関して、"Too often travel, instead of broadening the mind, merely lengthens the conversation.(心を豊かにすることもしないで頻繁に旅にでたとしても、それはただ単に会話が豊富になるだけである。)" と述べました。人が旅に出たくなる理由として、日本では「美味しいものを食べたい」、「絶景を見てみたい」、「傷心を癒したい」等をよく聞きますが、他の国・文化では異なる理由が多くあげられます。なぜでしょうか。
今回は、「旅行」と「旅」の違いを考えながら、「心を豊かにする」論議を進めます。
今週の誤謬 Logical Fallacy #3 - Ad ignorantiam 無知に訴える論証です。
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 151回 7 月 14 日
What happens in Las Vegas stays in Las Vegas?
旅の恥は搔き捨てか。 (*)
「旅の恥は搔き捨て」は万国共通でしょうか。「旅の恥は掻き捨て」の類義語として、「後は野となれ山となれ。」、「旅の恥は弁慶状」などがあります。英語で同じこと意味する表現として"What happens in Las Vegas stays in Las Vegas." がありますが、この表現が使われるようになったのは2003年です。
日本航空の客室乗務員、訓練所教官として30年間に渡り勤務された橋本文香(はしもと・ふみか)さんは、「日本での当たり前が、海外では通用しない、海外旅行へ行ったことのある人なら、そんな思いを一度は経験したことがあるのではないでしょうか。」と述べてます。「旅の恥は搔き捨て」に対する注意でしょうか。
1960年ラスベガスで開催されたNational Council of Catholic Women (カトリック女性評議会) 会議で演説したMother Teresa (マザー・テレサ) さんは、"What happens in Las Vegas WILL NOT stay in Las Vegas." である事を自らの行動で証明しています。
今回は言葉と文化的背景の違いを学びながら、意義ある論議をするためのミニ論議を行います。
今週の誤謬 Logical Fallacy #2 - Affirming the consequent 後件肯定
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第 150回 7 月 7 日
Should Instagram be blamed for overtourism?
オーバーツーリズムの原因はインスタグラムか。(*)
昨年9月東京ビッグサイトでツーリズムEXPO2018が開催されました。基調演説者の一人は、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会 / 世界旅行産業会議)の最高責任者Gloria Geevara Manzo さん (女性) でした。そこでグロリアさんは、現在オーバーツーリズムが世界的な問題となっていることを指摘しました。
2015年から観光業界で使われるようになった造語 overtourism (オーバーツーリズム) とは、ある観光地にその場所のインフラに耐えられる以上の観光客が押し寄せて過剰な混雑 (過密) を招くことを意味します。UNTWO (世界観光機関) は、このオーバーツーリズムにより地元住人のQOLと同時に観光客に対しても悪影響が出ると警告しています。
オーバーツーリズムの例として、 Venice, the Taj Mahal, the Galápagos islands, the Great Wall of China, Cuba, the Isle of Skye, Machu Picchu, Cinque Terre, Antarctica and Mount Everest などがあります。この中には、インフラ整備にあまりにも負担がかかり、経済的にマイナスになっているところもあります。
今回は、世界のツーリズム、オーバーツーリズムの現状を学びながらミニ論議を行います。
今週の誤謬 Logical Fallacy #1 - Ad populum 衆人に訴える論証
(*) これは仮の論題です。最終論題は当日決まります。
第149回 6月30日
Should children be taught about death in school?
子供達は学校で死について教わるべきか。
全ての生命体は生きる為に生まれてきました。では、生きる事の意欲はどこから来るのでしょうか。ドイツ生まれ、イエズス会司祭、哲学者、死生学者、上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン氏は「死を見つめることは、生を最後までどう大切に生き抜くか、自分の生き方を問い直すことだ。」と唱えています。
海外では、「死への準備教育」が様々な活動を通して行われています。公立図書館、DEATH CAFE、Death Over Dinner、Death Dinner Party などです。直訳すると誤解を招く英語表現ですが、最近は「デスカフェ」で検索すると日本での活動も紹介されるようになり、全国に広まりつつあります。
では、自殺やゲーム的な衝動殺人が多い国の子供に死 (生観) を (どのように) 教えるべきでしょうか。家族の死、ペットの死、身近な人の死、暴力的なビデオゲームによる死。さらには、平和な名前を付けた殺人・殺戮兵器による死。子供たちは 混乱しないでしょうか。誰が教えるのでしょうか。
今回は、Death Education の海外事情を学びながらミニ論議を行います。
第148回 6月23日
Do you want to live forever?
永遠に生きたいか。
インターネット他通信ネットワークを介したサービスとして、ホームページ、フェイスブック、ライン、ツイッター等々があります。多くの人の生活の中で利便性の向上に貢献しています。同時に「なりすまし」等を含むネット犯罪は増加する一方です。特に技術に疎い高齢者は被害者となっています。それらのサービスを介して収集された情報は、一体どのくらいの期間ネット上のどこに存在するのでしょうか。存在する理由・目的は何でしょうか。
米国連邦機関の1つアメリカ国立科学財団は、2002年7月Digital Immortality (デジタル不死) を含む高度情報インフラとその応用分野に関する研究開発資金を米国内3つの大学に提供しました。その成果は、例えば葬儀場において "AI chatbot" (AIを駆使したチャットボット) という形で出てくるでしょう。これは、亡くなった人に関するデジタル化された全ての情報を入力して、人工知能を使い、あたかも本人のように会話するロボットです。
ところが、ネット上等に本人とは異なる、本人が認めてない情報 (デジタル化された文書・画像・音声など) が流れていたらどうなるでしょうか。どこで何を目的に使われているか予測できない各種の人工知能は、本人とは異なる (顔写真を含む) 人物像を作る事になり、それがネット上で半永久的に残る事になるかもしれません。技術の進歩に伴い、ますます事実・真実を残す事が難しくなります。
今回は、様々な角度で「死後」のことを考えながら、ミニ論議を行います。
第147回 6月16日
Will you use a death pod?
デスポッドを使うか。
今年4月アムステルダムで開催された葬儀関連展示会で、最新ジェット戦闘機のキャノピーを思わせるハイテク自死幇助機が発表されました。この機械の名前はSarco (サルコ)。オーストラリアのフィリップ・ニチキ医師が開発しました。3Dプリンターを使って作られ、内部は人一人が横たわれる大きさのカプセルで、どこへでも移動可能です。
この装置で死を希望する人は、使用前に厳格な診察を受け、精神の正常さと自らの意思を証明する試験を受けなければなりません。そして合格した人だけが時間制限付きの暗証番号をもらいカプセルに入ります。その後暗証番号を入力してボタンを押すと、内部に窒素が満ちて気を失い、5分後に息を引き取ります。
安楽死・尊厳死は現在、スイス、アメリカ(6州)、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリア (ビクトリア州)、そして韓国で合法化されています。 スイスでは「安楽死ツアー」も有名です。死の権利は誰が有するべきでしょうか。日本でも尊厳死を合法化すべきでしょうか。
今回は、命を救うブラックジャックと心を救うドクターキリコを思い出しながら、ミニ論議を行います。
第146回 6月9日
Human Body Composting, Yes or No.
遺体堆肥化を認めるか。
米国西海岸ワシントン州Jay Inslee知事は、先月遺体の堆肥化を認める法案に署名しました。これによって認可を受けた施設で、遺体の堆肥化が可能になりました。同州はこれを「環境により優しい遺体の処理方法」と捉えています。この方法による埋葬費用は一般的な埋葬の約半額と言われています。
このサービスを初めに提供するのは、女性実業家Katrina Spadeさんがワシントン州に創設した公益法人Recomposeです。この団体の前進Urban Death Projectは2014年設立。Katrinaさんは、日本では余り聞きなれない "Death Care Advocate" (デスケア擁護者) の一人です。
スウェーデンでは、女性科学者Susanne Wiigh-Mäsakさんが20年以上を費やし、遺体を粉末化状に堆肥化して草木の栄養にできる新しい埋葬法を開発するPromessa社を設立しました。Susanneさんの理念は「死者を、尊厳ある愛情を込めた方法でケアする」です。
今回は、前回の論題を再考しながら、新しい埋葬方法に関するミニ論議を行います。
第145回 6月2日
Is there a good death?
望ましい死はあるか。
長年、絶世の美女と言われたクレオパトラ7世の死は、自らの胸をエジプトコブラに噛ませた死と言われてきました。シェイクスピアの戯曲「アントニーとクレオパトラ」の中でもそのように描かれています。ところが近年、クレオパトラは「時間がかかり外見 (美貌) を損なう死に方を選ぶとは考えにくい」の学説が有力になっています。
英国のエコノミスト誌調査部は "The 2015 Quality of Death (死の質) Index Ranking palliative care (姑息的治療) across the world (世界の緩和ケア現状比較報告書)" を出しました。アジア諸国の中で最も点数が高かったのは台湾が6位。日本は14位でした。これは、何を意味するのでしょうか。因みに1位は英国で米国は9位です。
日本の高齢化社会は間もなく多死社会になると言われています。予想では、2040年前後事態が最も深刻になります。ところが他国と比べ日本では、Quality of Death (QOD) を高めようとする動きが著しく欠けています。現在これに必要となる研究、人員、インフラも不足しており、一般教育活動もこれからの課題です。
第144回 5月26日
Is favoritism bad?
えこひいきは悪いか。
英語で「えこひいき」は favoritism 又は、in-group–out-group bias、in-group bias と言います。場合によって、discrimination、inequity、unfairness、preference、one-sidedness 等と区別が複雑になる時があります。
Favoritism の中でも、官職の任命で友人をえこひいきする事をcronysim、縁故関係でのえこひいきはnepotism と分けられます。最近K-POPグループの中で2番目の人気だった14Uは、何らかの「えこひいき」が原因でデビュー後わずか2年間で解散したと言われています。
トランプ大統領の義理の息子 (イヴァンカの夫) ジャレッド・クシュナー 氏の家族は、旧ソビエト連邦からのユダヤ移民。現在政府をビジネス的に運営する目的でホワイト・ハウス内に設けられた Office of American Innovation の局長を務めています。不動産開発企業、新聞社のオーナーでもあります。クシュナー氏が縁故関係を使い、学問、ビジネス、政治の世界で成功した事は度々報じられています。
コロンビア・カレッジ・シカゴで哲学を教えるStephen T. Asma 教授は、2013年シカゴ大学出版局から"Against Fairness (公正に反して)" と題する本を出しました。社会学・哲学の観点から「えこひいき」を研究して、それを擁護する理由を述べています。国際社会においても「公正とは何か」が問われる中、今回はその内容を学びながら論議を進めます。
第143回 5月19日
Should implicit / unconscious bias training be required?
潜在する無意識の偏見を失くす教育・訓練を義務付けるべきか。
昨年4月スタバで友人を待っていた黒人男性2人が逮捕されました。その2人は何も注文せず友人を待っていました。トイレを使用したいと店員にお願いしましたが断られました。その時のビデオがYouTubeにアップされています。その後、スタバのCEOは謝罪しました。2人は市から和解の象徴としてお互い賠償金1ドルを受け取り、さらに同市は市内の公立高校で起業を目指す生徒たちの支援事業として20万ドルを寄付すると約束しました。
4年前ワインで有名な米国カリフォルニア州ナパバレーを走る観光列車の中で、ワインを堪能して騒ぎ過ぎていた女性グループが下車させられました。女性達は悪意のある行為だと運営列車会社を訴訟して500万ドルを要求しました。一般的に、女性に対する時代錯誤・男尊女卑的偏見はどこの国でも未だ激しく残っています。その上に人種・宗教等の問題が重なると更に複雑さを増します。お金で解決できる問題ではないと思います。
潜在する無意識の偏見は、様々な形で存在します。人はいつも「心の中にあるもの」を語ってはいません。国際社会ではそれらを正確に知る必要があります。Implicit Association Test (IAT) と呼ばれる試験は、「われわれが意識できない思考や感情の根源を探る手段として開発されました。」 現在研究者の中には、アジア人の潜在的自己観と顕在的自己観の特質、公的/私的状況下における潜在的・顕在的な自己ステレオタイプ化を専門にする潮村公弘教授もいます。
今回は、上に述べた例や試験方法 (等) を学びながら論議を進めます。
第142回 5月12日
Is Elitism a dirty word?
エリート主義は汚れた言葉か。
Eliteの語源は「選択」を意味するラテン語です。日本で「エリート主義 (叉は選良主義) 」は明治以降、あいまいな定義や意味で用いられるbuzzword の一つになりました。学歴主義、官僚主義などがその例で、様々な功罪をもたらしました。エリート主義の対義語は、anti-elitism (反エリート主義)、populism (大衆主義)、egalitarianism (平等主義)、pluralism (多元主義) です。
フランスでは昨年11月「黄色いベスト運動」が起きました。政府への抗議活動です。国民はマクロン大統領の辞任を要求しました。これに対してマクロン大統領は今年4月25日フランスでエリートの対象となっている自らの母校フランス国立行政学院(ENA)の閉鎖を約束しました。ENAは1945に設立され、歴代大統領、高級官僚を輩出し、エリート主義の象徴となりました。反面、貧困家庭から学生募集をしませんでした。
アメリカでは、「経済的差別とエリート主義」との批判を受けて、Amazonの直系店Amazon Goが現金支払いを受け入れる事を決めました。Amazon Goは2016年開店以来キャッシュレス決済を売りにしていました。ところが、移民の多い米国では、州・町によって銀行口座を持っていない人が多数います。それらの人達に対する差別と報じられましたが、メディアではそれを「エリート主義」と呼んでいます。
今回は、世界から見た「エリート主義」を学びながら論議を行います。
第 141回 5月5日
Is stereotyping wrong?
ステレオタイプする事は間違っているか。
ステレオタイプとは、「多くの人に浸透している固定観念や先入観、思い込み、認識などの類型化された観念」を意味します。例えば、人種・宗教・年齢・性別・出身地・地域・配偶者の有無・体格・血液型・学歴・職歴などが挙げられます。ステレオタイプにはメリットとデメリットがあり、その両面を検討する必要があります。
ステレオタイプに関する研究分野の一つに Stereotype Threat (固定観念に対する恐怖) があります。英辞郎 on the WEBでは、「たとえば、黒人の好きな音楽はジャズで、黒人の得意なスポーツはバスケットボールだというように、固定観念で自分を判断されることに対する恐怖、あるいはそのような判断を自分がしてしまうことに対する恐怖のこと」 とあります。
スタンフォード大学のClaude Steele教授は、Stereotype Threat 研究の第一人者として知られています。2010年に出版した本、Whistling Vivaldi: And Other Clues to How Stereotypes Affect Us (口笛を吹くビバルディ: ステレオタイプが及ぼす影響を知る手掛かり) では長年の研究成果を述べています。
今回は、ステレオタイプに関する様々なケースを学び論議を進めます。
第 140回 4月28日
Should museums return artifacts to their home countries?
博物館は芸術・文化財を母国に返還すべきか。
大英博物館には文明の謎を解き明かすロゼッタ・ストーンが展示されてます。それは、元々エジプトの物です。エジプトは「大英博物館、ロゼッタ・ストーンを返してよ!」と再び要求しています。ところが、ロゼッタ・ストーンが大英博物館へ行った経緯を見ると、様々な疑問が生じてきます。又世界的に広がっているナショナリズムの動きと合わせて文化財返還の動きに拍車をかけています。
今月10日、イタリアは中国の新石器時代から明・清・民国時代までの文化財796点を中国へ返還しました。先月18日、台湾大は琉球時代の人骨63体を沖縄県へ変換しました。昨年11月、フランスのマクロン大統領は、かつて植民地だったアフリカ西部ベナンの文化遺産26点を返還することに同意しました。
日本にも、小倉コレクション等の戦時中植民地から持ち帰った他国の文化財が多数あります。日本側は1965年の協定により解決済みとしてますが、2010年には朝鮮王室儀軌1205点の返還 / 引渡しを決定しています。他に、未解決の問題が多く残っています。
今回はこれらの問題等を例として、議論を進めます。
第 139回 4月21日
Is beauty in the eye of the beholder?
美は人それぞれか。
「美は見る人の目の中にある」、「美しさの基準は人によって異なる」、「蓼(たで)食う虫も好きずき」、「あばたもえくぼ」等の表現がありますが、本当にそうでしょうか。このような表現を最初に使ったのは紀元前3世紀古代ギリシャのプラトンと言われてます。又同じような事を、1588年エリザベス朝イギリスの作家・戯曲家ジョン・リリーは散文の教訓物語『ユーフュイーズ』の中で、1588年ウイリアム・シェイクしピアは『恋の骨折り損』の中で、1741年ベンジャミン・フランクリンは「貧しきリチャードの暦」の中で、1742年デイビッド・ヒュームは『道徳政治論集』の中で述べています。
一方、レオナルドダヴィンチが描いたモナ・リザを見ると、誰でもその美しさに惹かれると思いますが、それはなぜでしょうか。薔薇の花を見て、美しいと思わない人はいるのでしょうか。英語を母国語とする人が、漢字で書かれた文字「愛」と、同じ意味を持つアラビア語の文字を見比べて、どちらを美しいと感じるのでしょうか。それはなぜか。脳と芸術の関係を研究して、その成果を様々なで活用する分野があります。「神経美学」又「分析美学」と呼ばれます。 美の世界が更に広がります。
今回は、アメリカの女性ジャーナリスト・Esther Honig さんが実際行った非常に面白い実験結果、世界的に有名な商品デザイナーのリチャード・セイモアのビデオ等を見ながら「美の定義」を考えて論議を行います。
第138回 4月14日
Should we invest in art?
芸術に投資すべきか。
2018年11月30日、文化庁主催シンポジウムがありました。タイトルは、「芸術資産『評価』による次世代への継承─美術館に期待される役割」でした。人口減少と超高齢化社会が進行する日本で、文化・芸術資産の活用の重要性、価値評価を高めていくための方策、今後の美術館の在り方などを議論するのが目的でした。男女差別の激しい芸術分野とは言え、キーノートスピーチ、他パネルディスカッション参加者に女性は一人もいませんでした。
アメリカでは、ジュリアンズ・オークションが2017年10月19日に開催した競売で、ドナルド・トランプ大統領が1990年代に黒マジックで描いた「エンパイア・ステート・ビルディング」のスケッチが (予想価格を上回って) 1万6000ドル (約180万円) で落札されました。購入者は、不動産界で有名なElie Hirschfeld氏でした。トランプ大統領が、このスケッチを描いたのは1995年フロリダ州で行われた慈善オークション用でしたが、その時の落札価格は100ドルでした。
4年前ドイツでは、ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーが描いた水彩画やデッサン等が計40万ユーロ(当時約5580万円)で落札されました。ノイシュバンシュタイン城を描いた絵が10万ユーロで、カーネーションの静物画は7万3000ユーロで売れました。欧州、中国、中近東、南米からの (投資家) 購入者達は、特定画家の作品を専門にはせず、美術品として値打ちが高い物に関心を持っていると言われてます。
果たして、日本の投資家・美術館はこのような作品を購入するでしょうか。「芸術資産」の基準は何なのでしょうか。女性の立場はどうなのでしょうか。今回も専門家からのインプットを入れて、芸術に関する知識を学びながらミニ論議を行います。因みに、古代ギリシアやローマの頃から絵画の分野ではAnaxandraやTimareteのような女性が活躍していました。
第137回 4月 7日
Is fashion art?
ファッションは芸術か。
ポニーテールの白髪、黒のサングラス、高襟のシャツで知られれ、ファッションの皇帝と呼ばれた故・Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド) 氏は、「ファッションは商いであって芸術ではない」と言い切りました。ラガーフェルド氏はドイツ出身で、世界的なブランド「シャネル」「フェンディ」、シグネチャーブランドのヘッドデザイナー、クリエイティブ・ディレクター等を務めました。 ラガーフェルド氏は 天才であったと言われますが、 彼自身は 業績をそれほど評価していなかったようで、「何も言うことはないので、むしろ私のことは忘れてもらいたい。そうなるように手配している」 という理由で回顧録を残してません。
チェコスロバキア・プラハ生まれ超現実主義芸術家のJan Švankmajer (ヤン・シュヴァンクマイエル) 氏は、「世界を変えようとする気がないクリエイターは辞めたほうがいい」と述べました。数年前他界したファッション・デザイナー故・石岡映子さんは、"TIMELESS, ORIGINAL, REVOLUTIONARY" が創作のテーマとして知られ、「社会を変えるとまで言ったら大げさかもしれないけど、デザイナーも世の中が『おっ!?』と思うようなものを志さないとダメだと思う。」と言いました。 これらの精神は、哲学・科学のように全ての分野に必要・共通する要素だと考えられます。
ファッションは消耗品なのでしょうか。消費者のために作られるのでしょうか。見識者の中には、「ファッションはアートである!」と声高に叫ぶ人たちもいま。そもそも、Fashion、Artとは何でしょうか。語源・由来をたどると色々な意味、使い方があり、境界を判断する事が難しくなります。
今回はファッション・芸術の専門家から学びながら (日本語と英語で) ミニ論議を行います。
第136回 3月24日
Will you accept an autonomous vehicle (AV) ?
自律走行車を受け入れるか。
この論議をする時に、倫理学上考えねばならない事 (難問) があります。それは、1967年にイギリスの女性哲学者・フィリッパ・ルース・フット(Philippa Ruth Foot) さんが、アリストテレスの倫理学を基に提起した「トロッコ問題」です。"Should you pull the lever to divert the runaway trolley onto the side track?" 例えば、(2台の車が正面衝突する状況下で) 1台の車に乗っている1人 を助けるために、もう1台の車に乗っている5人を犠牲にするのは許されるか、、等を考える思考実験です。この手法は、他人の命に係わる多くの場面に応用できます。
MIT (マサチューセッツ工科大学) でのMORAL MACHINE (道徳機械) プロジェクトは、この思考実験に基づいています。プロジェクト・チームは、(上のような状況下で) 「誰を殺すか」に関するデータを、233ヵ国と地域3960万人から収集して (文化差等を含めた) 様々な共通点、相違点、傾向などを2018年10月24日英国の総合学術誌ネイチャーに発表しました。"Self-driving car dilemmas reveal that moral choices are not universal" (自動走行車が明らかにする道徳的選択は万国共通ではない) と題する論文です。
実際AVに使用されるアルゴリズムを誰が決めて作るのでしょうか。エンジニア?哲学者?保険会社?事故の際に、億万長者かホームレス者か等が区別・判断出来るのでしょうか。そのような事が判断基準になるのでしょうか。 正解は存在するのでしょうか。今回はそのような事を討議しながらミニ論議を行います。
第135回 3月17日
Wheat Flour or Cricket Flour?
小麦粉か、コオロギ粉か。
日本を含めた先進国では少子化現象が進み、同時に温暖化による資源枯渇現象が深刻になりつつある中、世界の人口は今世紀半ばまでに100億人を突破すると言われてます。その中でも、上位10位、インドは16億5900万人、中国は13億6400万人、ナイジェリアは4億1100万人、アメリカは3億9000万人、インドネシアは3億2200万人、パキスタンは3億700万人、ブラジルは2億3300万人、バングラデシュは2億200万人、コンゴは1億9700万人、エチオピアは1億9100万人になると推定されてます。地球は、この人口を食べさせていけるのでしょうか。
米国カリフォルニア州のシリコンバレーでは、コオロギ粉で作った食べ物が "power brain food" として注目を浴びています。 コオロギ粉には豊富な栄養分が含まれ、カルシウムも牛乳と同じ量摂取可能です。又、タンパク質もビーフジャーキーの二倍含まれてます。コオロギを育てるには、家畜と比べて飼育に必要な資源 (飼料や水など)、又手間が少なく、環境に優しい sustainable (持続維持できる) 資源と考えられています。 日本でも現在商品化に向けて色々な試みが行われています。
今回は、近い将来タンパク質源の主流になるかもしてない昆虫食 (特に、コオロギ) に関して学びながらミニ論議を行います。
第134回 3月10日
Should there be laws against food waste?
食品ロス防止法があるべきか。
2015年5月21日、フランスでは大手 (店舗面積が400平方メートル以上) スーパーマーケット がまだ食べられる食品を廃棄処分することを禁じる法律を全会一致で可決しました。売れ残りは、慈善団体に寄付、もしくは家畜飼料・肥料への転用です。フランス政府は、2025年までに廃棄される食品量を半減する事を目標にしています。さらに、今後化学薬品を使っての食品処分も禁止されます。
日本の対応は非常に遅く、昨年11月28日、「食品ロスの削減の推進に関する法律案」に関し、今臨時国会での成立を目指すための緊急院内集会が、一般社団法人全国フードバンク推進協議会主催でやっと行われました。何と日本は食料自給率が40%台にもかかわらず646万トンの食べ物 (金額111兆円分) -- 7000万人が1年食べていける量 -- を捨てているのです。同時に、様々な貧困問題で栄養失調者・餓死者が存在しています。
"N’OUBLIEZ JAMAIS LES PAUVRES."
今回は、様々な食品ロスに対する問題を学びながら、ミニ論議を行います。
第133回 3月3日
Do we really need 5G?
本当に5Gが必要か。
通信技術の進歩には他の分野をリードする要素を多く含んでいます。同時に他分野が一挙に飲み込まれてしまう危険性が存在します。米中間ではHuawei (ファーウェイ) をめぐって激しい攻防戦が繰り返されています。欧州も多大な影響を受けています。それに対して日本のメディアは5Gのもたらす明るい未来を主に報道しています。一般消費者は利便性だけを考えています。
インターネット技術は非常に複雑で、その構造を理解するのは容易ではありません。99%のデータは世界の海底深くを通っているケーブルで運ばれています。これを妨害 AND/OR 破壊出来る技術を持った国は限られていて、その事自体中国、アメリカにとっても脅威です。そのような技術があっても使用できない日本は「長い物には巻かれろ」的スタンスでしょうか。
今回は、既に日本を巻き込み始めた5Gに関して学びながら論議を行います。
第132回 2月24日
Is a cashless society problematic?
キャッシュレス化した社会は問題か?。
現在世界の約40 - 60% の国でキャッシュレス化が進んでいます。これに対して日本は約20%です。日本では官邸が平成29年6月9日に発表した「未来投資戦略201 7 ― Society 5.0の実現に向けた改革」の中で、2027年までにキャッシュレス率を現在の2倍、全体の4割程度を目指す事が述べられています。経済産業省は昨年5月「世界的な キャッシュレスの流れを踏まえ、キャッシュレスを通じたデータ の利活用により、国全体の生産性が向上し、実店舗等、消費者、支払サービス事業者がそれぞれ付加価値を享受できる社会の実現を目指す。」と述べています。
キャッシュレス化する事で、色々生活が便利になります。が、キャッシュレス化の基盤 (前提) になるのは、消費者データ (どこの誰が、いつ、どの店で何を買ったか等) の監視と共有です。ハーバードビジネススクールの Shoshana Zuboff (ショシャナ・ズボフ) 教授は、新刊 "The Age of Surveillance Capitalism -- 監視資本主義の時代" (2019/1/15) 中で、益々巨大化・複雑化する情報社会でのプライバシー侵害や独占的ビジネス慣行、又その構造に都合よく構築される社会・経済組織、それらによる個人の自由弱体化等を強く非難しています。
今回は、キャッシュレス化のもたらすベネフィットとデメリットを学びながら論議を行います。
第131回 2月17日
Is the earth over-populated?
地球は人口過多か。
2017年12月に米国で公開されたSFコメディ映画の1つに「ダウンサイジング」があります。アレクサンダー・ペインが監督・脚本・製作、マット・デイモンが主役を務めました。又これは、第74回ヴェネツィア国際映画祭でのオープニング作品でした。ノルウェーの1科学者が人口過多になった社会での様々な問題を解決するために、全人体を13cmにして相対資源が82倍になるという「人類縮小プロジェクト」を描きました。
英語で Downsizing とは、モノのサイズを小さくすることで、非効率部分をなくして (広義に) 利益を大きくすることです。工業製品でも「ダウンサイジング」の概念は重要で、自動車においては (スーパー) ターボチャージャーなどの過給機を使った排気量少量エンジン設計のコンセプトを意味します。他、生活、組織、経営、ビジネスでも同じコンセプトが使われています。
今回は、この「ダウンサイジング」のベネフィットとデメリットを多方面から考えながら、地球の人口と資源に関する論議をします。
第130回 2月10日
Powerful Passport -- Advantage or Disadvantage?
強力なパスポートは有利か不利か。
英系コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズ(Henley and Partners) は、毎年各国が発行するパスポートのランキングを作成しています。そして2019年最新のIndexによると、(例えば) 日本政府が発行するパスポートは第1位、最も強力なパスポートにランク付けされました。その根拠は、日本のパスポート所有者は世界190の行先国・地域に visa-free or visa-on-arrival access で行ける事があげられています。逆に、短期滞在に限って日本入国の査証免除措置を行っている国と地域は68あります。この差は何でしょうか。日本国発行のパスポートには何故日本国憲法が記載されてないのでしょうか。
今回は世界情勢を考えながら、これを論議します。
第129回 2月3日
Should the U.S. build a wall along the southern boarder?
米国は南部国境線に壁を作るべきか。
日本は島国です。一般に国境管理に対する関心は低く実感がありません。ところが、隣の朝鮮半島、中国、ロシアなどは様々な国境問題を抱えています。今なを残る分断の壁は、現在建設中も含めて65もあります。
今回は、先ず1648年に結ばれたヴェストファーレン条約などの国境に関する基本的な知識を学び、米国がメキシコとの国境に壁を作るか、作るべきでないかを論議します。
第128回 1月27日
Can we globalize without silos?
「タコツボ化」する事なく国際化できるか。
近年、「タコツボ化」から脱却することが、日本の生き残る道であると言われてますが、英語では「タコ」 の代わりに、家畜飼料・穀物などの貯蔵庫である「サイロ」を使います。このSILOには、「自己中心的な仕事のやり方、他部門と連携を取らない仕事のやり方・窓がないサイロの中にいると周囲が見えないように、組織内の各部門が組織全体のことを考えず、自己部門のことだけを考えること。」(英辞郎より) の意味もあります。そして、日本語で言う「タコツボ化」を英語で言うと "Silo Forming" になり、集団心理・経営管理分野の領域として (海外では) 長年研究がおこなわれています。それを解決する手段として商品化された物の一つがERP (企業資源計画) です。
Quick-Fix (何でも手っ取り早く解決する) スマホが普及した現代、スマホで見る情報に頼るユーザーは、情報 (心理) も「タコツボ化」している事に気付かないまま生活・仕事をしています。
今回は、「タコツボ化」の実態を学びながら、国際化に必要な"counter-measure" に関する論議も行います。
第127回 1月20日
Is GNH more important than GDP?
国民総幸福量は国民総生産より大切か。
経済・社会の進歩を測る指標にGDP使われていますが、これは元々英国の経済学者 William Petty 卿が オランダ-イギリス戦争 (1652 - 1674) の時に地主の不平等な税金取り立てに対して考えられた概念で、後 重商主義経済学者の Charles Davenant 卿がこの概念を具体化して、米国のノーベル賞受賞・経済学者のSimon Kuznets教授によって近代的な指標となり、1934年米国議会の報告書に初めて使われました。
一方GNHはGDPで表すことの出来ない精神面の豊かさも指標に取り入れ、1972年にブータン王国のワンチュク元国王により提唱されブータン国立研究所によりシステム化され実施され始めました。その調査方法 (詳細) とランキング・システムの結果は色々あり、平均すると北欧諸国が上位を占めていて日本のGNHは世界で中位でした。ところが、日本でも高度急成長後期に「幸福度」を数値化して行政に繁栄させる手法が開発されました。それは、TLP (Total Level of Provice) 「総合地域指標」と呼ばれるもので、昭和45年(1970年)6月の第55回九州知事会議で提案されました。
TLPの開発を手掛けたのは宮崎県庁で、当時最新のIBM mainframe コンピューターを導入して因子分析法と要因分析法を駆使して「即時処理」の要素を満たすシステムを構築しました。画期的なことだったと思います。これは、地域行政に限らず国政にも使える可能性を秘めていました。
今回は、GDP、GNH等の指標の意味を学び、ミニ論議を行います。
第126回 1月13日
Should the Imperial / U.S. Unit System be replaced by the Metric System?
帝国単位と米国慣用単位はメートル法に置き換えられるべきか。
調理本に初めて正確な計量数値が使われたのは、米国マサチューセッツ州ボストン市の Fannie Farmerさん (身障者の女性) が1896年に出版した The Boston Cooking-School Cook Book (ボストン料理学校料理本) でした。Fannieさんは、調理の他に、科学、栄養学、衛生学、回復期患者食事療法なども学び、ボストン料理学校の校長も務めました。この本の中で使われた計量数値の全ては帝国単位と米国慣用単位で、本は再版を重ね、今でも入手可能です。
調理本に正確な計量数値が使われる前は、pinch (指先握り)、drop (滴)、hint (気持ち程度) 等の表現が使われ、バターの量を測る時は、a piece of butter - the size of a walnut (くるみ割りサイズのかたまり) のような言い方をしていました。今でも、米国慣用単位 (体積、重さ、長さ、温度等を表す) は米国で出版される料理本に使われており、その他生活の中で (一部を除いて) この単位は幅広く (ネット上でも) 使われています。
現在、帝国単位と米国慣用単位を主としている国は少ないですが、例えば航空業界では高度目盛りはmb, hPa & inHgを、高度はFeetかMetersを、飛行距離はnautical mile (nm)、風速はKnotsかMeters/Secondを、と異なる単位を同時に使用しています。が、1983年カナダ航空B-767型機は、給油の際 gallonではなくlitterで入れ間違えて飛行中に燃料が尽き大事故を起こしました。アメリカではガロンをカナダはリッターを使うからです。
今回は世界を二分している計量法の違いを学び、その後ミニ・ディベートを行います。
第125回 1月6日
Should Japan also celebrate the lunar new year?
日本も太陰太陽暦 (旧暦) で新年を祝うべきか。
日本は明治5年「太政官布告第337号・改暦ノ布告」により、グレゴリオ暦(*) に基づく新年を正月として祝うようになりました。1582年ユリウス暦からグレゴリオ暦に改良したカトリック教会で1月1日は聖母マリア様の祭日です。日本は飛鳥時代から日本の風土と文化に基づいて使われてきた元嘉暦をほぼ完全に廃止してしまいました。因みに、イスラム圏ではグレゴリオ暦と並行してヒジュラ暦も使ってます。又、中国、朝鮮半島、ベトナム、香港、マカオ等ではグレゴリオ暦を使用してますが、お正月は旧暦で祝ってます。明治時代の風潮の中で、旧暦が使われなくなった理由は多々説明されていますが、例えば農業の為には太陽暦の方が適しています。さらに、Dual Calendar (双数暦) を取り入れる事でビジネス・チャンスは拡大すると考えられます。
風化しつつある日本の歴史的背景に関するディスカッションの後、ミニ・ディベートを行います。