「糸もつくるが人もつくる」として、神奈川県茅ヶ崎の地で今から100年程前に操業していた「純水館茅ヶ崎製糸所」に関する情報発信をしていきます。

昭和天皇御大典献上繰糸

  昭和天皇の即位礼に際し、昭和3年(1928年)に純水館茅ヶ崎製糸所は皇室への献上繰糸を行なっています。

    写真はしめ縄を張って純水館茅ヶ崎製糸所で繰糸をしている様子です。

『御大典奉祝事業記念写真帖』より

   昭和天皇がご成婚(大正12年〈1923年〉皇太子時代)の際には、全国で唯一選ばれた製糸工場として献上繰糸を行ないました。

純水館茅ヶ崎製糸所の跡地(2019年)

現在のヤマダ電機がある場所を含めて、茅ヶ崎駅の北側に約1万2千坪の大製糸工場がありました。

ヤマダ電機が改築される前の写真です。


純水館茅ヶ崎製糸所記念碑(掲示板)について

 純水館茅ヶ崎製糸所があった敷地にあたる場所には、現在ヤマダ電機の店舗が建っています。その店舗北側の場所に、純水館茅ヶ崎製糸所の記念碑(掲示板)が建てられ、令和4年12月14日に除幕式が行われました。この記念碑(掲示板)の表面には次のような文が掲載されています。これは茅ヶ崎純水館研究会の名取龍彦会員が書いたものです。


  純水館記念碑(掲示板)

                 

純水館茅ヶ崎製糸所跡 ~世界屈指の技術を誇る製糸工場~

純水館茅ヶ崎製糸所  大正6(1917)年~昭和12(1937)年

 純水館茅ヶ崎製糸所は、現ヤマダ電機茅ヶ崎店LABIを中心とした敷地約1万2千坪、約350名が働く大工場として、館長の小山房全(こやまふさもち)により大正6(1917)年に繰糸(生糸生産)を開始しました。

 この地に純水館を開業した理由

一、南湖院に小山久左衛門(こやまきゅうざえもん)(長野県小諸で純水館を創業した実業家)の家族が入院し、南湖に別荘を構えたため茅ヶ崎と縁があった。

二、茅ヶ崎町長をはじめ町の有志や地主が積極的に工場誘致をして、茅ヶ崎駅の近くに広大な土地を確保できた。

三、茅ヶ崎が生糸輸出港の横浜に近く、鉄道で生糸を輸送できた。

四、高座郡が養蚕地帯であり茅ヶ崎に大きな製糸工場がないため、良質の繭を確保できた。

五、掘り抜き井戸により大量の水が確保できた。

 

 大正12(1923)年の皇太子(後の昭和天皇)のご成婚に際しては、純水館が唯一選ばれた製糸工場として、全国から集められた繭を繰糸して皇室へ献上しました。また、御法川多条繰糸機(みのりかわたじょうそうしき)で作られた生糸は、大正末にはニューヨークで高品質に格付け(Special Double Grand Extra)されます。均一で細く光沢のあるその生糸は、他の製糸工場に先駆けてアメリカへ輸出され、女性用シルクストッキングの原料となりました。

 

 純水館の広い工場内には庭球場や運動場もあり、従業員が軟式庭球や野球を楽しみ、休日には試合が行われました。工場の運動会、慰安会、映画会や夏の盆踊り大会は、茅ヶ崎町民も参加する一大行事でした。純水館は地域に開放された製糸工場でもありました。

 

 館長の小山房全は、長野県丸子の工藤善助(ぜんすけ)の次男として明治15(1882)年に生まれました。房全は小山久左衛門の長女喜代野(きよ)と結婚し、純水館茅ヶ崎製糸所の館長となります。喜代野は関東大震災により自宅で震災死し、喜代野の恩師である島崎藤村が追悼文を書きました。「糸もつくるが、人間もつくる」と評された房全は、従業員一人ひとりを大切にした模範工場の経営者として名を馳せます。また、信用組合、商興会、知友会の設立など茅ヶ崎町の発展に尽力し、社会教育活動も盛んに行いました。しかし、震災後の工場再建による負債、人絹の消費拡大、糸価暴落、昭和恐慌等の激動の歴史と房全の病死が重なり、昭和12(1937)年に純水館は廃業します。

 

 画家で文化勲章受章者、茅ヶ崎名誉市民の小山敬三は、小山房全の義弟(喜代野の弟)です。敬三は、昭和4(1929)年に小山別荘地内へアトリエ兼自宅を建てます。茅ヶ崎市民文化会館の緞帳『浜降祭』は、敬三の『海浜祭日』をもとに製作されました。

   

純水館茅ヶ崎製糸所からつながる人と文化

小山房全(ふさもち)

      (明治15年生ー昭和10年没)

純水館茅ヶ崎製糸所の館主

 世界屈指、高品質の生糸を生産すると共に、従業員の社内教育から地域住民の社会教育活動、商興会・信用組合等の設立にも関わり茅ヶ崎町の発展に貢献しました。

小山敬三

      (明治30年生ー昭和62年没)

日本を代表する洋画家

 文化勲章受章者で、茅ヶ崎名誉市民です。南湖にアトリエを構え創作活動を行いました。小山房全の妻、喜代野の弟にあたり、房全の勧めで南湖の小山別荘にアトリエを構えました。アトリエは現在小諸市立小山敬三美術館へ移転されています。代表作としては『紅浅間』連作『白鷺城』連作などがあります。

島崎藤村

       (明治5年生ー昭和18年没)

小山家と強いつながり

 長野県小諸の小山本家とのつながりが強くありました。小山房全の妻の喜代野は、藤村の小諸義塾女子学習舎教員時代の教え子。小山敬三が画家を志す際、その後にも藤村が多くの影響を与えています。藤村の初期作品『千曲川のスケッチ』には「K」として喜代野が登場しています。

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茅ヶ崎郷土会のホームページへもどうぞ       https://chigasaki-kyodokai.com/ 

ちがさき丸ごとふるさと発見博物館の会のホームページへもどうぞ       https://sites.google.com/view/ch-marugoto/ 

今年度(2023年度)開催の「純水館・房全・敬三・藤村」学び講座のお知らせ

終了    回講座

      2023年4月16日(日) 『牛渡公海氏に聞く』 13時30分から

                         会場 茅ヶ崎市立南湖公民館 講義室

                         講師 牛渡公海氏

                            (小山敬三画伯邸の管理等をなさっていた方のご子息)

                         聞き手 茅ヶ崎純水館研究会 名取龍彦

      

    回講座

      2023618日(日) 『茅ヶ崎の別荘文化』 1330分から 

                                                                                              会場 茅ヶ崎市立南湖公民館 講義室

                          講師 茅ヶ崎純水館研究会  東哲郎

                     

    第10回講座

      2023723日(日) 『気韻生動の画家 小山敬三』(仮) 1330分から 

                                                                                                 会場 茅ヶ崎公園体験学習センター(うみかぜテラス)

                            多目的室AB

                          講師 小諸市立小山敬三美術館 学芸員 中嶋慶八郎

                            (小山敬三画伯のご令孫)

                             茅ヶ崎純水館研究会 名取龍彦

                          共催 ちがさき丸ごとふるさと発見博物館(教育委員会社会教育課)


    第11回講座

      20238     日(   ) 茅ヶ崎市民文化会館大ホールの緞帳見学  緞帳:小山敬三画伯の『浜降祭』        

                                                                                                 会場 茅ヶ崎市民文化会館 大ホール

                            茅ヶ崎市民活動サポートセンター(サポセン)

                          

    第12回講座

      2023年1015日(日) 『養蚕書と出版文化 1330分から     

                                                                                                  会場 茅ヶ崎市立南湖公民館

                           講師 厚木郷土博物館学芸員 

                                                                                                  共催 茅ヶ崎市立南湖公民館


    第13回講座

      2023年1217日(日) 『糸もつくるが人もつくる』 13時30分から 

                                                                                                 会場 茅ヶ崎公園体験学習センター(うみかぜテラス)

                            多目的室AB

                          講師  茅ヶ崎純水館研究会 名取龍彦

                          共催 ちがさき丸ごとふるさと発見博物館(教育委員会社会教育課)

つながり深い長野県小諸市の旅

茅ヶ崎純水館研究会会則

第1条(名称)

 この会は、「茅ヶ崎純水館研究会」と称する。

第2条(所在)

 本会の所在は会長宅とする。

第3条(目的)

 本会は、「純水館茅ヶ崎製糸所」に関する学習、発信、記録、保存を通して、会員および茅ヶ崎市民に地域を愛する心(「郷土愛」)を醸成することを目的とする。

第4条(活動)

 本会は、前条の目的を達成するために次の活動を行う。

(1)「純水館茅ヶ崎製糸所」に関する学習会の開催

(2)茅ヶ崎市民を対象とした「純水館茅ヶ崎製糸所」に関する講演会の開催

(3)「純水館茅ヶ崎製糸所」に関する記録の公共施設への寄贈

(4)会員相互の親睦

第5条(活動期間)

 本会の活動期間は、2022年(令和4年)1月16日から散会する2024年(令和6年)3月31日までとする。

第6条(会員)

 会員は、本会の目的に賛同し入会した者とする。 

第7条(入会)

本会に入会しようとする者は、所定の入会申込書に記入し、年度会費を添えて事務局に提出することで会員資格を得る。

第8条(退会)

 本会の会員は、退会の申し出により任意に退会することができる。

第9条(会費)

 本会の会員の年度会費は1,000円とする。

第10条(役員)

本会に会長、副会長、事務局長、会計、会計監査の役員を置く。

会長(1人)

副会長(1人)

事務局長(1人)

会計(2人)

会計監査(1人)

2 第1項に定める役員は総会により会員から選出される。

3 役員の任期は本会発足の2022年(令和4年)1月16日から散会する2024年(令和6年)3月31日までの2年3か月間とする。

第11条(役員の職務)

会長は本会を代表し、会を総括する。

2 副会長は会長を補佐する。

3 事務局長は本会の事務を総括する。

4 会計は本会の会計をつかさどり、予算書・決算書の作成及び金銭の出納を行なう。

5 会計監査は本会の会計を監査する。

第12条(役員の交代・解任)

 本会の役員が次のいずれかに該当するときは、総会の議決により交代および解任をすることができる。

(1)   心身の障害により、職務の遂行ができないと認められたとき。

(2)   職務上の義務違反、その他役員としてふさわしくない行為があったとき。

第13条(会計年度)

 本会の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31までとする。

第14条(総会)

 本会の総会は、年に1回会長が招集し、会員の1/2以上の出席(委任状を含む)をもって成立する。

 2 臨時総会は会長が必要と認めたときに開催することができる。

 3 総会の議決は出席者の過半数をもって決する。

 4 不測の事態により通常総会開催が困難の場合は書面審査による総会を開催することができ、書面審査の総会開催は役員の多数決によって決める。

第15条(総会での議決事項)

 本会の総会は、議決機関として次の事項を議決する。

(1)会則の制定、改廃に関する事項

(2)会長、副会長、事務局長、会計、会計監査の選任・交代・解任に関する事項

(3)活動計画ならびに予算の承認に関する事項

(4)活動報告ならびに決算の承認に関する事項

(5)その他本会の運営に関する重要事項

第16条(活動経費)

 本会の活動経費は、会費及び寄付金をあてる。

 

 附則

この会則は、2022年(令和4年)1月16日から施行する。