「サンダルからベストを作っている。サンダルをわざと集めたにちがいない。」

これはブリコラージュの作品ではない。

作品は、サンダルをソールとベルト部分に分解し、ベルト部分だけを用いてベストを構成している。サンダルのバックル部分は、ベストにおいてもバックルとして用いられており、要素の特徴を活かした作品だと言える。ベストはトップスのように肌全面を覆う必要がないため、ベルトなどの細い要素でも成立している。ただし、たくさんのサンダルが余っている状況はここでは考えにくく、意外な素材で服を作る目的のためにサンダルを集めてきたと判断した。そのため「目的が先行した資材収集」に抵触し、ブリコラージュとは言えない。

例えば、メゾンマルジェラの会社で余っている材料を用いていればブリコラージュと認められるかもしれない。

細長い素材でも縫い合わせるように組み合わせ、縫い物のように面をつくる意欲作である。

（追記）
衣服やファッションというジャンルには、「継ぎ接ぎ」のリメイクや「パッチワーク」の方法が日常的に多用されているため、衣服ジャンルのブリコラージュをみるときには厳密にその手法の新規性を確かめる必要がある。この点で見ると、この作品では、単なる布の継ぎ接ぎではなく、＜サンダル＞という記号の固有性が生きた状態で、＜ベスト＞への意味の変換がなされているため、手法としての新規性は高い。