2.読み替えの義務

ブリコラージュでは範列関係による、「ある体系」から「別の体系」への、要素の越境(意味の読み替え・置き換え)が起こっていなければならない

ブリコラージュの第一の面は体系の要素間に範列関係発見することである。範列関係とは、意味的・形態的・文法的に同一レベルにある要素間の潜在的な関係であり、関係を結んだ要素同士は交換可能であるとされる。重要なのは別の体系の要素が、ある体系の要素との潜在的な関係によって結びつけられ、代替されることである

ありあわせの要素のうち、1つ以上この意味の読み替えが起こっていないものはブリコラージュ作品とは認めない。

この義務に違反する、以下の禁止事項に抵触すると思われる作品の思考は、体系移行図中段異形をもって示される。

禁止事項

意味の変わらない転用 禁止

すべての要素において前後の体系で意味内容が変化していない制作物

すべての要素の意味内容が、前後の体系間で変化していないものは、ブリコラージュ作品ではない。ブリコラージュでは、要素は「同一レベルだが、意味内容が異なるものとして体系間で置き換えられること(範列関係)が原則である。ある要素についての意味の変化を審査するとき、元の体系で「想定されいる意味(用途)の範囲」を、置き換えられた先の体系で「逸脱しているかどうか」が重視されるポイントとなる。

流通資材や原料などは想定される用途が広いため、前後の体系間で意味内容は変わっていないものとみなす。ただし、既存の制作物の資材集合を解いて資材の転用を行っている、かつ、資材の意味内容が変わっているとみなせるものは、この限りではない。

この禁止事項に抵触する事例は体系移行図中部において、全ての体系間の要素間関係が「=」で結ばれた形で示される。

重ね合わせ 禁止

異なる体系同士で要素部分を重ね合わせること(=兼用)を主旨とする制作物

異なる体系同士で要素部分を重ね合わせること(=兼用)を作品の主旨とするものは、ブリコラージュ作品ではない。厳密にいえば、体系間の要素を範列関係で結びつける思考自体は、ブリコラージュ的と言える。しかし、ブリコラージュが「見立て」や「転用」による「体系間での要素の意味の移行であるのに対し、重ね合わせは「兼用」による「予め想定された体系同士の双方向的な合体」である。よって、重ね合わせによる作品は「ブリコラージュ風」ではあっても、ブリコラージュ作品とは論理が異なった別物と言える。

この禁止事項に抵触する事例は体系移行図中部において、設定された範列関係が「兼用部分」として囲われた形で示される。

※合体によって異なる体系が併存しているため、範列関係が結ばれている要素部分は例外なく兼用部分である。