白神こだま酵母の

機能解析

 白神こだま酵母(白神)は1997年白神山地の腐葉土から分離され、現在パン酵母として商品化されている。白神はトレハロースの高蓄積、乾燥耐性および冷凍耐性を有する。白神から28株の胞子クローンを分離し、その中からトレハロース高蓄積株、高い酸化ストレス耐性株、および高い冷凍耐性株を見出し、それぞれの株の特性に対するメカニズムを解析した。ここでは高い冷凍耐性株のメカニズムについて紹介する。55℃、30分の熱処理をしたところ、親株の白神は生育しなかったが、この株は生育することが観察された。熱ショックタンパク質やユビキチンプロテアソームシステム(UPS)に着目して解析を進めた結果、実験室株よりも凝集体の巻き戻しに関与するHsp104タンパク質の発現量やUPS活性が高いことが分かった。さらに、凝集体によるUPS活性のネガティブフィードバックを、Hsp104タンパク質が解除することを明らかにした。

  一般的にストレスに強い酵母は寿命が長いと報告されているので、白神の経時的寿命について研究を進めている。現在までに、出芽酵母のAMPKであるSnf1が活性化していることを見出している。

光っている緑の点が凝集体

凝集体の顕微鏡写真

 冷凍ー解凍後の凝集体を有する細胞数の経時的な変化を観察した。実験前は、解凍して直ぐにその細胞数が減少すると思い込んでいた。解凍後30分まで凝集体を有する細胞数が増加したので失敗したと思い、実験を打ち切ろうとした。「もうやめよか」と言うと、当時修士課程の学生だった福田まみさんが「先生、もう少しやってみましょう」と言うので撮影を続け、凝集体を有する細胞数の減少を観察することができた。この実験では、彼女は時間に追われて準備したサンプルを、私が撮影していた部屋まで走って持ってきていたので、大変だったと思う。彼女がいなかったら、でけへんかった研究です。おおきに、ありがとう!

冷凍耐性メカニズムのモデル

ネガティブフィードバックの解除

 UPSは異常タンパク質を分解するが、UPSの活性以上に異常タンパク質が蓄積すると、分解されない異常タンパク質は凝集体となる。また、凝集体が過剰に蓄積すると、UPS活性が抑制される(ネガティブフィードバック)。分離した胞子クローンでは、Hsp104タンパク質の発現量が多く、蓄積された凝集体が巻き戻されて減少する。その結果、凝集体によるネガティブフィードバックが解除され、UPSの活性が維持されて異常タンパク質が分解されるると考えている。

研究成果

中沢伸重 メールアドレス✉:nnakazawa(at)akita-pu.ac.jp 

住所:〒010-0195

秋田市下新城中野字街道端西241‐438

秋田県立大学 生物資源科学部

応用生物科学科 醸造微生物学研究室