物質文化や精神文化、そしてそれらの関連性が国境を越えグローバル化していく今日の社会では、「多様性」の尊重が求められます。そんな社会のなかで我々個々人が、他者(それが人であれ、物であれ、文化であれ)という「他文化/異文化」に接触するときは、その「異(い)なるもの」 の理解を試みるだけでなく、己の「日常」、己の「普通」、己の「当たり前」にも、客観的/批判的視線を注いでみる必要があります。他を見て己を見つめなおす、遠くを見てあらためて足元を見つめなおす、こういった作業の繰り返しのなかで養われゆく視野の多角性と思考の柔軟性こそが、「多様性」の尊重を実現させる鍵となるのです。
国際文化コミュニケーション専攻は、複数の学問領域の「多様性」を尊重しつつ設立されました。それぞれ(の教員/研究者)が、領域横断的な接触と相互理解を繰り返すなかで、それぞれが、自身の研究の存在価値を証明し続ける努力を重ねています。そのような本専攻の研究環境そのものが、異なる文化間のコミュニケーション能力、すなわち「異文化間コミュニケーション能力」(intercultural communicative competence)を育む土壌となりうるでしょう。
本専攻では、言語、文化に関連する専門的な知識の習得、深化を軸としつつ、真の「文化間コミュニケーション能力」を身につけ、国際文化理解に関わる各種専門職、専門的な教育、あるいは研究の分野で活躍しうる人材の育成を目ざしています。
「学び」とは、先人の研究成果、生き方、知恵という未知なる「他文化/異文化」に対峙し、それらを享受し会得していくことだと私は思います。思うような結果がともなわずとも、焦らず落ち込まず、自分の小さな一歩の小さな価値を、正当に評価し認めてあげることも必要となります。そうして自身を客観視し続け、自身の研究目標がはれて達成されたとき、現代社会が求める「多様性」の尊重に対する自分なりの答えもまた、自然と浮かびあがってくるのではないでしょうか。「文化間コミュニケーション」とは何か、そもそも「文化」とは何かという問いに対する、やはり自分なりの答えを、本専攻での「学び」のなかで見つけていただければ幸いです。
国際文化コミュニケーション専攻
専攻長 大野 寿子
博士前期課程(修士レベル)
博士前期課程(修士レベル)の授業科目は、大きく分けて「言語コミュニケーション領域」と、「国際文化領域」の2領域から構成されています。「言語コミュニケーション領域」には、英語を中核としながら、日米対照、ドイツ、フランス、日本語教育、翻訳・通訳論などを加え、言語コミュニケーションを多角的な視点で考えます。「国際文化領域」では、英語圏、ドイツ語圏、フランス語圏、日本などの地域の文化、あるいは、科学思想、マスコミ文芸論などを通じ、世界の多様な文化に対する専門的な知識を深めていきます。
二つの領域の科目を自分自身のニーズに従ってバランスよく学びながら、指導教員の「研究指導」を通じ、自分自身の研究のテーマを精査し、修士論文を書くための研究力をつけていきます。
博士後期課程(博士レベル)
博士後期課程では、指導教員の指示に従って自分の研究領域に関わる「言語コミュニケーション特殊研究」や「国際文化特殊研究」を履修しながら、高度の専門研究に必要な知識と研究方法を実践的に学び、博士論文執筆を目指します。
国際文化コミュニケーション専攻
入学定員:前期課程10名/後期課程3名
開講時間:昼間開講
キャンパス:白山
学位:前期課程 修士(国際文化コミュニケーション)後期課程 博士(国際文化コミュニケーション)
取得可能な資格:高等学校教諭専修免許状(英語)/中学校教諭専修免許状(英語)