黄色いレバー

「大変です。二階の水道が使えません。」M保育士が、あわてた様子で事務室に駆け込んできました。蛇口をひねったところ、全く水が出てこないというのです。午後のおやつ前だというのに、子ども達は手を洗うことができません。原因も分からずオタオタしているうちに、一階でも水が出なくなってしまいました。

「もしや…」と思い、水道メーターを確認しに行ってみました。すると案の定、水道栓が閉じられています。検針員さんが作業しやすいようにと、見やすい場所に移設する工事を終えたばかりだったのです。水が出るようになってホッとしている職員たちの後ろで、私は数日前の出来ごとを思い出していました。

いつものように、缶けりをしている時でした。年長のH君とR君が、水道メーターの蓋を開けて覗き込んでいます。私は得意になって説明を始めました。「この管は保育園の水道につながっていてね、中を水が通っているんだよ。小さな針がグルグル回っているだろう。これは、だれかが水を使っているっていうしるしなんだよ。」

「としひろ先生、スゲー」という称賛に鼻の穴をふくらませていると、他の子どもも集まってきました。「うちにも同じのがあるよ」「水はセツヤクしなきゃいけないんだよ」など、しばらく水道談議に花を咲かせました。

私の失敗は、黄色いレバーの説明をし忘れたことでした。色といい、形といい、いかにも重要そうな雰囲気を醸し出しています。手になじむ感じが実にちょうどいい具合で、子どもでなくても思わずひねってみたくなるようなレバーなのです。かくいう私も、我慢できずに一度やってしまったことがあります…。

いたずらの張本人は、まさかこんな大ごとになるとは思わなかったでしょう。でも、水道の仕組みだけはしっかりと理解できたはずです。今回の件は、私の責任が大きかったと反省しきりです。

教訓:レバーをひねる時は、相当の覚悟をするべし。特に黄色の場合は。