食べちゃうぞ

平成27年5月25日号

にわかに人気者になって少々とまどっています。今朝も事務室でパソコンに向かっていると、きりん組のA君やBちゃんからお誘いがかかりました。

「園長先生、オニごっこやろうよ」

毎回かならず誘いに応じることはできませんが、なるべくお断りしないように努めています。それに味気ない書類仕事の息抜きにもなりますから。

ちなみに、このオニごっこにはある約束事があります。それは「オニはいつでも園長先生」ということ。いくら誰かをつかまえたところで、オニは代わってもらえません。これがけっこう疲れるのです。それに、一人ひとりをまんべんなく追いかけなくてはならないので気も使います。

C君なんか実に真剣に逃げます。いつもぎりぎりのところで「取り逃がす」ようにしているのですが、先日イジワルして本当につかまえたら、「もう園長先生なんかだいきらいだから」と顔を真っ赤にして泣いてしまいました。かといってあんまり手抜きをしていると、「ちゃんと追いかけてよ」となります。オニもけっこう大変なのです。

子供にとっては、ずっと追いかけられるのも嫌だけど、あまり放っておかれるのも寂しいのでしょう。適度な緊張感と自由な運動のなかで、「追いかける園長先生」と「逃げるぼく(あたし)」という関係性を楽しみたいのかもしれません。


最近になって、ある恐ろしげな設定が加わりました。「つかまると園長先生に食べられる」というものです。追いかけながら冗談で「食べちゃうぞ」と言ったら、子供たちが異様なほど興奮して盛り上がりました。それ以来、定番となりました。

しばらくするとこの設定は「つかまると」という部分がどこかへ行ってしまい、「悪い子は園長先生に食べられる」に変化しました。

D君は一日に何度も御注進にやってきてくれます。

「Bちゃんが僕のことをたたいたよ。悪い子だねえ。お願いだから食べちゃって」

「よし、給食室からマヨネーズを持ってきてくれ」なんて言うと本当にうれしそうな顔をします。友達が食べられるっていうのに。そこで調子に乗って、

「そういうD君は悪い子じゃないのかなあ。うん? このあたりはぷっくりしてとてもうまそうだなあ」と彼の腕をさすると、恐怖に目を見開いて逃げていきました。

いまだけの微笑ましい光景です。子供はどんどん成長していきます。秋になる頃には、オニの交代もあり、複雑なルールのあるオニごっこも自分たちだけでも営めるようになっているでしょう。

「食べちゃうぞ」と言っても、「食べられるわけないじゃん」なんていう大人びた反応が返ってくるようになるでしょう。

緑が日に日に濃くなる園庭で、あっという間に大きくなってしまう子供たちとのつかの間の戯れを楽しんでいます。