雪とけて

その朝はいつもより少し早起きをしました。ところどころにうっすらと雪が積もっています。倉庫からスコップを探し出し、まずは駐車場や通路の雪かきです。園庭の雪は、残念ながら雪だるまや雪合戦をするには少し足りなさそうです。融けるとぬかるみの原因になるため取り除きました。

ベンチに積もった雪を払いかけて思いとどまりました。子どもたちはきっと雪遊びを楽しみに登園してくることでしょう。そのままにしておくことにしました。

出勤したI保育士がほうきを持ち出し、木製小屋の屋根の雪を落とし始めました。後で固まりになって落ちてくるのを防ぐためでもあり、子ども達が遊びにつかう雪を増やすためでもあります。早速子ども達が集まってきて、せっせと雪をかき集めています。

おちゃわんやお皿に雪をつめてままごとが始まりました。半分融けかかった雪を投げ合って雪合戦をする子もいます。土が混じった小さな雪だるまらしき作品もできあがりました。手はかじかみ、服は濡れて少し汚れてしまいましたが、真っ赤なほっぺの顔はみな満足気でした。

給食が終わる頃には、雪はもうほとんど残っていませんでした。いつものようにぞう組は隣接した寺の境内に出ます。午後の自由遊びの時間に広々した境内で遊ぶのは、年長さんだけに許された特権です。J君が率先する形で「けいどろ」(鬼ごっこの一種)が始まりました。最近はめっきりトラブルも減り、複雑なルールの遊びも教えあいながら長時間続けられます。目前にせまった進学を意識しているのでしょう。

しばらく私も一緒に走っていましたが、息が上がり石段に腰を下ろしました。子どもたちは飽くことなく駆け続けます。その姿は、春を呼ぶ荒々しい神事に興じているかのようでもあります。ひときわ大きな歓声が響き、曇り空の切れ間から一瞬光がさしたような気がしました。

雪とけて 村いっぱいの 子どもかな 小林一茶