花咲く季節

布佐小学校の卒業式に出席してきました。卒業生のうち二十名ほどが当園の卒園児です。イタズラばかりして先生を困らせていたA君や、めそめそしていることの多かったBちゃんが、堂々と卒業証書を受け取っています。

立派に成長した子どもたちの姿を見て、不覚にも涙がこぼれてきました。ハンカチで目を押さえながら、私はある中国の昔話を思い出していました。

宋の国にお百姓さんがおりました。田んぼに苗を植えたのですが、なかなか成長しません。ある日、たまりかねたお百姓さんは早く成長させてやろうと、苗を一本一本引っ張ってやりました。

お百姓さんは家に帰ると息子に話しました。「今日は疲れたよ。早く大きくしてやろうと思って、苗を全部引っ張って伸ばしてやったんだ。」息子が驚いて田んぼに行くと、苗はすっかり枯れていました。(『孟子』より)

「助長」という熟語のもとになったお話です。「苗」を「子ども」に置き換えると、親にとっては耳の痛いお話になります。かくいう私。普段は園長というエラソーな肩書きで仕事をしていますが、家に帰れば二人の男の子の父親です。とうてい模範的とは言えない父親です。

「オムツがとれない」「座っていられない」「好き嫌いが多い」「字が読めない」「逆上がりができない」同じクラスの子ができているのを見たりすると、ますます焦ってしまいますね。ついつい「引っ張り」たくなりますね。その気持ち、よーく分かります。

恥を忍んで告白すれば、私自身、子どもを「引っ張って」しまったこともあります。枯らさずに済んだことが幸いです。

布佐小学校の卒業生たちは、きっと無理やり引っ張られることなく、温かく見守られながら大きくなったのでしょう。お父さんとお母さんに拍手を送ります。

今年は梅の花が咲くのが遅いなと心配していたら、桜がもう咲き始めました。「助長」の故事を思い出したおかげで、気をもんでいたのが少し馬鹿らしくなりました。遅いだの早いだの騒いだって、わずかの差ですものね。

そう、咲く時になれば、花は必ず咲きます。