縁側

年中児のA君が縁側の端に立ちました。跳び下りようと身構えたまま下を見つめています。瞳の奥で勇気とためらいが交錯しています…

園庭と本堂の縁側を隔てていた植え込みを撤去することにしました。長い間使われていなかった縁側の下には、ゴツゴツした石がたくさんありました。無用な怪我をしないように整理しました。

合わせて2階建の「メルヘンハウス」の階段を外して1階建に改造しました。2歳以下の「小さい子」が無用な怪我をしないようにとの配慮です。「大きい子」には物足らないかもしれませんが、縁側という遊び場が増えたので勘弁してもらいましょう。

今回の園庭改造の目的は、「小さい子が安全に楽しく遊べるように」「大きい子が思う存分楽しく遊べるように」するということでした。走りまわる大きい子に小さい子がぶつかって怪我をしたり、小さい子の安全のために大きい子にボールを使うのを禁じたりしないで済むよう、狭い園庭を有効活用するために無い知恵を絞りました。

植え込みが無くなっただけで園庭の見通しは随分良くなりました。子ども達が早速縁側に上って遊び始めました。新しい遊び場に興味津々です。縁側の高さが少し気になりましたが、敢えてそのままにしておきました。3歳以上の「大きい子」にとっては、安全への配慮が過度になると、かえって為にならないと考えたからです。

大工さんと相談して、縁側部分はもう少し手を加える予定です。それでも、あらゆる危険を取り去るつもりはありません。子どもが学び成長する機会を奪いたくないからです。しばらくは、先生達が園庭でハラハラする日が続くかもしれません。

A君はまだ決心がつかないようです。彼は決して運動が得意な方ではありません。近くで担任のY先生がじっと見守っています。「やっぱり止めた方がいいかな」という迷いが私の頭をかすめました。

あっと思った瞬間、A君が跳び下りました。上手く膝を曲げ、手も付いて衝撃を吸収できました。どこにもけがはありません。誇らしげに立ちあがったA君をY先生がしっかりと抱きしめました。