穴を掘る

(平成29年11月24日)

保育園の園庭は、でこぼこだらけです。子供たちが熱心に働いてくれたおかげです。タイヤの築山を崩したり、雨で柔らかくなった地面を掘ったり、それはもう、やりたい放題です。

特に砂場は、穴掘りにはもってこいの場所です。ざくざくとどこまでも掘っていけます。いくら砂を補充しても、3か月もすると無残に陥没した姿をさらしています。(あの砂は一体どこに消えたのか。保育園の七不思議のひとつです)

わたしも負けていられません。このあいだは、「登り棒」の丸太を立てるために、花壇の横に掘りました。いや、白状すれば、丸太はむしろ穴を掘るための口実だったかもしれません。

シャベルがざくりと土にめり込むときのあの感じ。たまりません。例えるなら、そう、ほどよく溶けたアイスクリームにスプーンがめり込むときの感触、とでも言ったらいいでしょうか。


さて、唐突ですがここでクイズです。「人間が掘った最も深い穴の深さは?」 正解は、「12,262m」 直線距離にして、保育園から「ふなばしアンデルセン公園」までと同じす。(たとえが微妙でしたね)

このすばらしく深い穴は、ロシア北部のコラ半島で行われた「超深度掘削坑プロジェクト」の成果です。もちろん手掘りではなく、長いドリルを使いました。

本当は地殻を通り抜けてマントルまで到達する計画でしたが、想定外の高温でドリルがうまく作動しなくなってしまいました。穴もこれくらいの深さになると、マグマの熱が伝わってきて相当な高温になるそうです。

掘り出した土は水素で沸騰していたということです。「水素で沸騰した土」って、いったいどんなのかしら。熱の問題でおたおたしているうちに資金も底をつき、ついには事業そのものが放棄されてしまいました。まったく残念です。


保育園では、今日もA君やBちゃんが穴を掘っています。彼らくらい楽しく穴掘りをする人種はいないでしょう。子供にとって穴掘りは労働なんかではなく、立派な遊びのひとつなのです。

だから彼らは自ら進んで掘ります。自分で考えて、いろいろ試してみます。失敗したり、うまくいったりを繰り返します。対価とか効率とか、目的とか成果とか、そんなつまらないことは考えません。大人みたいに。

掘るという行為そのものが楽しい。あのロシア人技術者たちだって、もっともらしい目的を掲げてはいたけれど、根っこのところは砂場の保育園児と同じだったのかもしれません。(もっと深く掘ってみたい!)。

パソコンの前で眉間にしわを寄せていたら、Bちゃんが誘いに来ました。私もいっちょ掘りに行くか。