秘密基地、完成しません。

作るにあたっての基本方針はひとつ。「完成図面は引かない」

子供の頃、空き地に秘密基地をこしらえた時と同じ要領です。とりあえず手を動かして、ある程度の形にしてみる。すると、そこからまたイメージが膨らんできます。

その場のひらめきや思いつきをできるだけ大切にしたいと思いました。


普通の大工さんだったら嫌がるような条件でしょう。でも、当園の“おかかえ大工”のTさんは、ふたつ返事で引き受けてくれました。年かさのいったイタズラ小僧がふたり、子供たちを交えながら園庭で密談を重ねました。

シラカシの木の周りに大きなテラスを作って、その上に見晴らし小屋を建てる。大まかなイメージだけをかためて、とりあえず必要と思われる材料を用意してもらいました。


「テラスの高さはこの位、あの辺にはしごをつけて、下は迷路になっているといいな」

こんな調子だから、大工さんは本当にたいへんだったと思います。おまけに「オレにもやらせろ」と手を出す施主もいるのですから。木材を切ったり、ビス留めをしたり、わたしも楽しませてもらいました。

製作過程は間近で子供たちが見られるようにしました。A君は徐々にできあがってくる基地を見ながら、「あの上から星をみようよ」と早くも想像を膨らませています。Bちゃんが「何やってるの」と話しかけると、大工さんたちは作業の内容を丁寧に教えてくれます。


見ているだけじゃつまらない。ぞう組ときりん組の子供たちは、基地づくりに参加しました。杉板を腐りにくくするための「焼き入れ」の作業を手伝いました。この杉板は小屋の壁になりました。

運動会の前には何とか遊べるようになりそうです。ちなみに、この秘密基地は永遠に完成しません。完成形がないので、子供の発想や遊び方次第でどんどん形を変えていくと思います。お楽しみに!

ひそかに基地の名前をつけました。小さな木切れに書いて小屋の壁に打ち付けておきました。いつか機会があったら、名前の由来についてもお話いたしましょう。