森の妖精と戯れる

平成27年10月23日号

「森の妖精に会わせてあげる」という誘いに応じ、宮の森公園までやってきました。子供たちは、道先案内人のアリンコ・アリサさんに導かれるまま、森の中に入っていきます。

みんなで口に手をあてて、「ア・ワ・ワ・ワ・ワ」と叫ぶと、茂みの向こうから、何かの鳴き声が聞こえてきました。あっと叫んだAちゃんの指さす方を見ると、葉っぱやススキのお面をかぶった妖精が、踊りながら斜面を降りてきました。子供たちから歓声があがります・・・

我孫子国際野外美術展に出す作品づくりの導入として、ワークショップをすることになりました。実行委員長の駒場さんのお計らいで、芸術家のアリンコ・アリサさんのお世話になることが決まりました。

「森の妖精といっしょに、声を出したり、踊ったりして、それから…」アリサさんの説明を聞きましたが、いまひとつピンときません。夢見心地で語るアリサさんが、だんだんと本物の妖精に見えてくる始末です。


「本当に大丈夫かな」一抹の不安を抱えながら宮の森に向かいました。でも、妖精たちが森の中から出てきた瞬間、そんな不安はふっとんでしまいました。

歌が本業のアリサさんが、子供が発した言葉を拾って即興の歌をうたいます。妖精に扮したダンサーたちが踊り始めると、パーッカッショニストが太鼓でリズムをとります。草っぱらに風が吹きわたり、子供たちの声が森にこだまします。

アリサさんたちは、子供の予想外の反応にもひるみません。むしろ楽しみながらそれに呼応し、歌や踊りを発展させていきます。彼らは、指導者というより大きな子供みたいです。大きな子供が、小さな子供たちと一緒に戯れているかのようです。保育園の先生たちも、一緒に声をあげ、踊っています。先生たちが楽しんでいると、子供たちはますます楽しくなってくるようです。

Bちゃんは、妖精にしがみついて草の上を転げまわっています。C君がアリサさんから奪い取った笛を吹きはじめました。歌や太鼓がそれに続きます。はじめは妖精を怖がっていたD君も、いつの間にか踊りの輪の中に入っています。


それぞれの子が、それぞれの立ち位置を得て、自由に遊びに参加しています。心地よい風と緑に囲まれて、思い切り体を動かし、うたい、われを忘れて戯れます。私はそこに、遊び本来の姿を見たような気がしました。私たちの祖先がまだアフリカの大地に暮らしていた頃も、子供たちはきっとこうやって遊んでいたのでしょう。

あっという間にお昼になりました。五感をめいっぱい使ったせいでしょうか。いつもよりおなかが空きました。給食先生に作ってもらったお弁当を宮の森まで運んできました。草の上でおにぎりを頬張ると、自然とみなの顔に笑顔がこぼれてきます。


子供たちは目下のところ、妖精にもらった松ぼっくりやジュズダマで作品を製作中です。完成品は、どうぞお子さんと一緒に野外美術展にお出かけになってご覧ください。お楽しみに。

「遊びは、文化よりも古い」ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』