手間ひまをかける

園庭に一本の白線を引きはじめると子どもたちが集まってきました。曲がりくねった線ができあがると、早速「ドン・ジャンケンポン」が始まりました。ほとんどが年長児ですが中には年中児と年少児も数人混じっています。

二チームに分かれて白線の両端に集まり、一人ずつ線の上を走っていきます。出会ったところで「ドン!」という掛け声とともに両手を打ち合わせ、ジャンケンをします。勝ったほうはそのまま進み、先に相手の陣地にたどり着いたチームが勝ちです。

 

ルールが理解できない年少児には年長児が手を引いていくことが自然と決まりました。線を踏まずに近道しようとした子は、仲間から声を掛けられて軌道修正しました。「後出し」かどうかで揉めたときは、リーダー格の少々強引な裁定で決着が付きました。でもみなが納得してすぐに遊びが再開します。

以前から時々おこなっている遊びですが、年度初めの頃と比べると私が口を出す機会は減ってきました。仲間と協力しながら遊びを営む力が着実に身に付いてきているようです。

 

私が園で働き始めて間もない頃、園長から「遊び」について口をすっぱくして指導されました。「初めは自分がガキ大将になったつもりで遊びを引っ張る。そのうち自分に代わる“ボス”が育ってくる。そうしたら、思ったとおりに子どもを動かそうとせず、時には枠からはみ出すような振る舞いも認め、できるだけ口を挟まずに見守る。いつしか子どもだけで遊びを営めるようになっていく。」

 

大人の「お膳立て」と「管理」の下で遊ぶだけなら、それほど「学び」の機会は多くならないし、子どもにとってもワクワクするような楽しさは少ないままでしょう。いきいきした「遊び」を展開する上で心掛けなければならないのは、「管理」することではなく「見守る」こと。やはり園長の教えです。これは「遊び」だけでなく「保育」全般にとって大切なことでしょう。「子育て」にも言えることかな・・・・。

 

とはいえ私などはまだ未熟で、つい口を挟みたくなることもしばしばです。この間など「先生はだまってて!」と一喝されてしまいました。中年ガキ大将の出番はますます少なくなりそうですが、子どもたちは今日もいきいきと遊んでいます。