寄り道

夕方の園庭で、C君が「寄り道」をしています。お母さんに見てもらいながら、何度もすべり台を滑っています。「もう帰ろうよ」「あと1回」というやりとりが聞こえてきます。5分程遊ぶと、C君は満足した様子でお母さんと手をつないで帰って行きました。

お寺の境内に「寄り道」していく子もいます。お堂の回廊にあがってみたり、他の子とオニごっこをしたり。聞くところによれば、家に着く前に必ずコンビニに寄るのがお約束という親子もいるようです。

こんな「寄り道」もあります。しっかり歩けるはずなのに、「車までだっこして」と駄々をこねる。お母さんの顔を見たとたん、「もっと遅いお迎えがよかったのに」と憎まれ口をたたいてふてくされる…。

大人にとっては、時にはうんざりすることもある「寄り道」ですが、子どもにとっては、実は深い意味があるように思います。

保育園での生活は楽しいものです。(そうなるように私たちは心を砕いています)それでも、子どもなりに緊張もすれば、気も使います。使いたいおもちゃを我慢しなければならない時もあれば、友達とけんかをして嫌な思いをすることもあります。

機嫌良く帰れる時もあれば、お迎えが来た途端、必死にせき止めていた思いがあふれ出てしまうこともあるようです。そんな時に、子どもは「寄り道」をするのかもしれません。お母さんやお父さんに無条件で受け入れてもらうことで、自分の心を癒す大切な時間になっているのでしょう。

大人の「寄り道」と同じではないかなと思います。会社を出た後、まっすぐ家に帰りたくないこともありませんか。行きつけの居酒屋に寄ったり、友達に電話で愚痴をこぼしたり…。私だって昔は、深夜の牛丼屋で苦いビールを飲んだことがありますよ。

ちょっとした「寄り道」のおかげで、嫌なことを心から洗い落して、気持ちよく家族の懐に帰っていけるのかもしれませんね。

今日はNちゃんが「寄り道」をしています。うす暗い園庭で、運動会で披露するダンスをお母さんに見せています。次は逆上がりが始まりました。仕事着のまま急いで迎えに来たお母さんが、優しく見守っています。そう言えば先日、お母さんが運動会のお弁当を作ってくれることを嬉しそうに私に話してくれたのは、Nちゃんでした。

あさっては運動会。子どもと大人の様々な思いの詰まった一日が始まります。閉会式の後の「寄り道」も楽しい思い出になることを祈っています。