先生のリレー

平成27年11月25日号

毎秋恒例の「布佐小学校音楽フェスタ」を参観してきました。吹奏楽部の演奏、一年生から六年生までの歌の発表、どれも素晴らしかったです。

ひときわ印象に残ったのは、とりを飾った布佐中学校三年生混成合唱団の歌声でした。思わず息をのむほどの迫力。美しいハーモニー。

歌が終わると、おもむろに一人の男子生徒が前に出てきました。やんちゃな笑顔に見おぼえがあります。当園の卒園児、J君です。

「六年生の時は、先生と毎日のようにケンカしていました。でも中学に入って、こんなに成長することができました」

照れくさそうに、しかしはきはきと感謝の言葉を述べるJ君の視線の先にいたのは、布佐小のN先生です。こみ上げてくるものを抑えきれなかったのかもしれません。先生の目に光るものが見えたような気がしました。


思えばJ君は、保育園の頃からワンパクでした。度の過ぎたいたずらに、友だちとのケンカ。当時担任だった先生は、ほとほと手を焼いていたのでした。

でも、それはあくまで彼の一面に過ぎません。あっと驚くような独創的な遊びを発明し、目を輝かせて庭を駆けるJ君の周りには、いつも自然と友達が集まっていました。保育園の先生はみんな、彼の良さも分かっていました。

「どうかJ君のいいところを見てあげて下さい」 祈るような思いで小学校に送り出したことを覚えています。聞くところによれば、現在は学年でもリーダー的な存在だということ。根気よくご指導下さった小学校と中学校の先生方に、わたしは心の中で手を合わせました。

全ての発表が終わったあと、一年生の担任のS先生から思いがけない申し出がありました。「こんど保育園におじゃまして、歌を披露したいのですが・・・」もちろん断る理由などありません。


数日後、保育園に一年生がやってきました。クラスの半分くらいが卒園児です。ホールの舞台に立つ姿は、半年前よりひとまわり大きくなっていました。

保育園の子供たちは、あこがれの眼差しで一年生を見つめています。ホールの端から、ひときわ熱い視線を送る人がいました。昨年の年長児担任だったA先生です。歌の披露が終わり、子供たちにお礼を言おうとマイクを取りました。でも、涙があふれて、言葉になりません。

傍らで見守る小学校のS先生。「バトンはしっかり受け取りましたよ」 優しい瞳がそう語っているようでした。