センス・オブ・ワンダー

日差しの照りつける園庭で水をまいていると、Mちゃんがおもちゃのカップを持ってやってきました。「きれいでしょ」と言いながら、お皿のフタをそっと開けてくれます。

目玉のような模様のついた芋虫です。しかも2匹。私が大げさに驚いてみせると、満足した笑みを浮かべて遊びに戻っていきます。その姿を見送りながら、Mちゃんと驚きを共有できたことに少しほっとしました。

園庭に立っていると、子どもたちが次々と宝ものを見せに来てくれます。七色に光る甲虫。蝉の抜け殻。無数の蟻。松脂のしみ出た松の小枝。風で落ちた緑色の柿の実。爪楊枝ほどのカマキリの赤ちゃん。変な形の石。

時には「見て、見て」と指さす先に宝ものがあることも。蜘蛛の巣にかかったトンボ。太陽に向かって伸びる朝顔の蔓。水まきホースの先の虹。動物の形をした入道雲。

正直に告白すれば、擦り減った自分の感性に気づき、愕然とすることもあります。人工物の快適さに慣れたわが身にとって、子どもの驚きや好奇心に寄り添うことは、意外と努力を要します。「汚い」「危ない」「くだらない」。言ってしまってから後悔することもあります。

この夏の異常な暑さでは、自然の不思議さに感動するどころではないかもしれません。でも大丈夫。いつもより早起きして、お子さんと一緒に緑や水のある方へ行ってみて下さい。草の薫る涼しい風の中から、様々な鳥や虫の鳴き声が聞こえてくるはずです。運が良ければ日の出が見られるかも。布佐の自然だって、まだまだ捨てたもんじゃありませんよ。

「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに、澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。」レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』(新潮社、一九九六)