カレーライス日和

野外料理をすることになりました。「青空のもと、みんなでカレーライスを作って食べよう」という企画です。食欲の秋に持ってこいのお楽しみです。

私は「火おこし」をかって出ました。園庭にかまどを二つ作ります。ひとつは飯盒(はんごう)でご飯を炊くため、もうひとつはカレーを煮込むため。

苦労の末に薪に火がつきました。火の番をしていると、なぜだか気分が高揚してきます。獲物を火であぶっていた大昔の記憶が呼び起こされるのかもしれません。

火につられて子供たちが集まってきました。「今日はカレーを作るんだよね」「早く食べたいね」みな期待に目を輝かせています。血が騒ぐのはどうやら子供も同じようです。

お米を研ぐ。玉ねぎの皮をむく。人参、ジャガイモを切る。先生の手ほどきを受けながら、一人ひとりの子が何かしらのお手伝いをしました。調理される前の食材がどうなっているのか、実際に見て触ることができました。貴重な体験です。

材料がそろったら、いざ調理。年長のぞう組さんは、肉と野菜を炒める大役をまかされました。家庭にはない大きなお釜としゃもじに悪戦苦闘しつつ、うまく火を通すことができました。

薪の火力や恐るべし。あっという間にご飯が炊け、カレーが煮えました。慣れ親しんだガスの火がひよわに思えてきます。立ちのぼる湯気とカレーの香りが、園庭を包み込みます。先生たちが園庭にシートを敷き、椅子をならべ、「野外レストラン」が開店しました。

「私が作った」という思い。爽やかな秋空。香ばしい「おこげ」。そして仲間の笑顔。

様々な隠し味のおかげで、子供たちの食欲はいやがうえにも増します

うさぎ組のYちゃんは、普段はしたことのないおかわりをしました。担任の先生もびっくりです。きりん組のR君は、苦手なはずの野菜も残さず食べることができました。ぞう組のS君は、なんと3回もおかわりをしました。いつもより十合も多く炊いたごはんは、

あっという間になくなりました。

大人も子供も、いっとき原始人にもどってしまったみたいです。食べるという行為の原初的な愉悦に身をゆだね、カレーライスをめいっぱい頬張りました。この愉悦には、「食育」をめぐる小難しい理屈を吹き飛ばしてしまう力強さがあるようです。

「食べる」とは、こんなにも楽しい体験になりうるのか。というよりも、「食べる」のって、こんなに楽しいことだったんだ。

― 食べることを楽しむ

『保育所保育指針』(第5章,3「食育の推進」)・『幼稚園教育要領』(第2章,「健康」)