たからの日

クリスマスが目前に迫ったある日、たから保育園は朝から高揚感に包まれていました。

園全体を使ってかくれんぼが始まりました。押し入れに隠れたO保育士が見つからず、M君たちが大騒ぎしながら探し回っています。いつもと違うスケールの大きなあそびに子ども達は大興奮です。

Mちゃん達は、大きな布で即席のテントを作り、中で怪談ごっこをしています。部屋中に鉄道おもちゃの線路を広げているのは、H君たちです。こちらの部屋では、クリスマスパーティーの準備中です。S君が棚からBGMにぴったりのCDを見つけてきました。大人を真似て「かんぱーい」という掛け声も聞こえてきます。

今日は「たからの日」。どこで何をしてあそぶのも自由。「お片付け」で中断されることなく心ゆくまであそんでかまわない。給食だって好きな場所で食べてよし。子ども達の「あそび」を根本から見つめ直すために始めた、新しい試みです。

何せ初めてのことですから、戸惑いもありました。「安全の確保は…、給食の手立ては…」ところが一日が始まった途端、子ども達のいきいきした姿に不安はみごとに消し飛びました。

「この時間が永遠に続きますように」。夢中であそびながらそう願った経験、子どもの頃のあなたにもありませんか。園の子どもたちにも、同じような充実したあそびの体験をしてほしい、そんな素朴な思いから始めた取り組みです。

何日も何ヶ月も継続し、発展するようなあそびが生まれるかもしれません。今後も試行錯誤を繰り返しながら、クラスでの活動と並行して、「たからの日」を続けていきたいと思っています。

お昼になりました。2階のホール、ウッドデッキ、図書室で「たからレストラン」が開店です。いつもは食の細いS君が真っ先にお代わりをしています。A君は、赤ちゃん組の食事の世話をしながら頂いています。

Yちゃんが口にパンを頬張りながら叫びました。

「先生、明日もたからの日にして!」