あそび心

子どもは本来、「あそび心」に溢れた存在です。おもちゃの使い方を見ているとよく分かります。初めのうちはおとなしく決められた通り使っていても、放っておくとだいたいが想定外の遊び方をしはじめるものです。

大人が決めた通りに遊ぶのも、それはそれで楽しいでしょう。もっと楽しいのは、工夫を凝らして、本来の使い方を超えた新しい遊びを発見した時ではないでしょうか。

三輪車の「二輪カート連結器」は、たかっら子の「あそび心」が生んだ工夫です。座席の後ろの隙間におもちゃのシャベルを差し込み、そこに運搬用二輪カートの持ち手を引っ掛けます。すると、うまい具合に二輪カートを連結できるのです。これで、たくさんのおもちゃや砂を運ぶことができます。急な方向変換をしても、シャベルが軸の役割をしてくれるので、無理なく二輪カートを引いていくことができます。

ちょうどいい形のシャベルに行き着くまでには、恐らく多くの試行錯誤があったことでしょう。怪我をしたり、おもちゃを壊してしまったこともあったかもしれません。それでも私は、その過程に最大級の敬意を表したい気分です。

木製の鉄道玩具と線路を使った「坂道ボーリング遊び」や、様々な形のブロックを組み合わせた「巨大コマ遊び」など、たからっ子の「あそび心」が編み出した楽しい遊びは、他にも沢山あります。

いずれも本来の遊び方ではありません。怪我や事故の可能性は高くなります。もし子どもに痛い思いをさせたくないなら、そうするのは簡単です。禁止事項を増やし、ルール破りの現場を見たらすかさず制止すればいいのです。怪我はぐっと減るでしょう。目に見えない「あそび心」を摘み取りながら。

かといって、全くの放任状態にすれば、いずれ重大な事故が起きてしまうでしょう。巧みな舵取りが必要です。「あそび心」を育てながら、大きな怪我を避ける。言うのは簡単ですが、子育てや保育の現場は、なかなか一筋縄ではいきません。私自身、注意するべきか、見守るべきか、迷うこともあります。

小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトチームは、どんな時でも「あそび心」を忘れなかったそうです。ガス欠の危機に陥った時、太陽光の圧力の利用という設計時には想定していなかった奇策で地球帰還に成功したのも、技術者の方々に隙あらば枠からはみ出そうとする「あそび心」があったからではないでしょうか。私はひそかにそう確信しています。