あそびとルール

朝の園庭で「オニごっこ」が始まりました。年長児が3人に、年中児が2人です。始まってすぐに、オニのCちゃんがIちゃんにタッチしましたが、Iちゃんは構わずに逃げ続けます。いつの間にかゴーカイジャーに変身したY君とS君が、オニへ攻撃を始めました。抜ける子に加わる子が入り乱れ、もはや誰が参加しているのかさえ、部外者の私には分かりません。

「こんな状態では、すぐに自然消滅してしまうだろう」。ところが予想に反し、子どもたちは、いつまでも歓声をあげながら走りまわっています。一見すると混沌の極みです。しかし、よく見ると、そこには幾ばくかの秩序が存在していることに気がつきました。

子どもによってルールへの理解や態度はまちまちですが、少なくとも「追う-逃げる」という単純な対立関係が全員の共通理解になっており、「オニごっこ」の場が成立していたようです。その他のルールからの逸脱は、かなり大目にみられます。

ルールを厳密に適用してきちんとした「オニごっこ」を指導する、というのは大人の発想です。競技性を重視したスポーツのような「オニごっこ」も、それはそれで楽しいかもしれませんが、子どもの遊びはもっと奥が深い。

子どものあそびを研究している三重大学の河崎道夫さんも、「約束ごとにしたがう」ことではなく、まずは「対立関係を結ぶ」ことがルールのある遊びにつながっていくという主旨のことを述べています。(『あそびのひみつ』ひとなる書房,1994)

初めからルールの順守を優先したら、あそびの魅力は半減してしまうでしょう。子どもたちは、楽しみながら少しずつ学習しているのだと思います。秋頃になれば、年長児は複雑なルールを持つ「缶ケリ」や「ケイドロ」などを、独自のルールさえ加えながら、遊べるようになるはずです。

昨年の傑作ルールは、S君考案の「タイム君」。三角コーンを頭にのせた「タイム君」に触っている間は、オニにつかまらないというものです。「ケイドロ」は十分に理解できないけれど、みんなと遊びたい。そんなS君が作りだした、自分なりの居場所でもありました。

今年はどんなあそびが生まれるか、今からワクワクしています。