あこがれのリュックサック

(令和元年5月)

徒歩遠足の日がやってきました。延期した甲斐があり、朝からまぶしいくらいの青空が広がっています。

お弁当でふくれたリュックサックを背負って、うさぎ(3歳児)、きりん(4歳児)、ぞう(5歳児)組の子供たちが元気に登園してきました。みんな、はちきれんばかりの笑顔です。子供たちの期待は、リュックサックなみにふくらんでいるようです。(お家のかたは、二度のお弁当作り、おつかれさまでした)


子供たちのなかに、だれよりも目を輝かせている男の子がいます。りす組(2歳児)のD君です。かわいいリュックサックを背負っています。

「遠足についていくの?」と、からかい半分に聞いてみました。

照れくさそうに首を横に振り、舌をぺろっと出しています。

D君にはぞう組にお兄ちゃんがいます。リュックサックにお弁当を入れて遠足にいくのが、うらやましかったのでしょう。

遠足に行けないのは分かっているけれど、「お兄ちゃんみたいにリュックサックで保育園に行きたい」と思ったのでしょう。


D君のように年上のきょうだいはいないけれど、遠足に行くお兄さんやお姉さんにあこがれのまなざしを送っていたお友だちは、他にもたくさんいたことでしょう。

あこがれは、遠足だけではありません。たとえば、みたままつりで披露するぞう組さんの和太鼓。普段の練習のときから、小さいお友だちは熱い視線を送っています。太鼓にみたてて、おもちゃのバケツをひっくり返してたたいたり、掛け声をかけたりしています。

それから、運動会で披露するぞう組さんのダンス。教えなくても、きりん組やうさぎ組のお友だちは、いつのまにか踊れるようになっています。園庭で音楽をかけると、まっさきに踊り始めるのは、意外と年下の子供たちだったりします。


保育園には、たくさんの血はつながっていない「きょうだい」がいます。そこが保育園のいいところです。子供たちは、年上の子がやっていることを真似しながら、あこがれという名の風船をどんどんふくらませています。これが原動力になって、子供はどんどん成長していきます。わたしたち保育者も、子供の心を輝かせるあこがれを、できるだけ大切にしたいと思っています。


D君のお家のかたも、そのことをよく分かっていたようです。ただでさえ慌ただしい朝の時間に、「ぼくもリュックサックで保育園に行きたい」というささやかなわがままを受け入れてくれた寛大さに、大きな花まるを進呈いたします!


D君、来年の遠足が楽しみだね。