最近の出来事をお知らせします
2025年4月より宮崎大学農学部は6学科から2学科(農学科、獣医学科)になりました。
これに伴い、所属が「農学部門 動植物資源生命科学領域」となりました。教育は「農学科 動植物資源生命科学コース」で行っています。
イチゴの機能性成分予測技術に関する論文が、Journal of the Science of Food and Agriculture誌に掲載されました。
Zushi, K., Yamamoto, M., Matsuura, M., Tsutsuki, K., Yonehana, A., Imamura, R., Takahashi, H., Kirimura, M., Machine learning and multiple linear regression models can predict ascorbic acid and polyphenol contents, and antioxidant activity in strawberries. J. Sci. Food Agric. n/a. https://doi.org/10.1002/jsfa.13906
イチゴには、様々な機能性成分が含まれていますが、測定には様々な実験機器を用いなければならず、簡単・迅速に評価する技術が求められています。そこで,本論文では機械学習や重回帰分析を用いて、収穫前の栽培環境や植物の生育からイチゴのポリフェノール、アスコルビン酸(ビタミンC)、抗酸化活性を予測できることを明らかにしました。
収穫前に栽培環境や植物の生育から機能性成分の予測ができることは、環境や生育を制御することによる機能性成分の含量向上が可能となりますし、消費現場での品質保証にもつながります。農業にも様々なデータサイエンス技術を用いた農業DXが期待されていますので、この論文を通してイチゴにおける更なる農業DXの発展が期待されます。
塩ストレス下で栽培したトマトに関する論文が,園芸学分野の国際誌 Scientia Horticulturae に掲載されました。
Zushi, K., Hojima, M., Higashijima, M., 2024. Postharvest changes in texture profiles and pectin metabolism in salt-stressed tomato. Sci. Hortic. 336, 113381. https://doi.org/10.1016/j.scienta.2024.113381
塩ストレス下で栽培したトマト(塩トマト)の貯蔵中のテクスチャー(食感を機械で測定し数値化したものです)と細胞壁を構成しているペクチン(果物や野菜に含まれる水溶性食物繊維の一種です)の変化を調べたものです。塩トマトは貯蔵中でも果実軟化やテクスチャー低下が抑えられて、それにはペクチン含量の上昇や代謝酵素の変化が関係していることを明らかにしました。
塩トマトは食味や機能性に優れていることが知られていますが,本研究によって,食べておいしいだけでなく貯蔵性にも優れた塩トマトの作出が期待できます。
トマトの光環境とアスコルビン酸(ビタミンC)含量の関連性に関する論文が,Environmental Control in Biology誌に掲載されました。
光がトマトの機能性成分のひとつであるアスコルビン酸含量に及ぼす影響は十分に明らかにされていません。トマト果実を光のある条件と光のない条件で育てて、アスコルビン酸含量と関連する酵素活性を測定し、アスコルビン酸含量を高めるには光が重要であることを明らかにした論文です。光がたくさん当たったトマトはおいしそうなイメージがありますが、アスコルビン酸含量も多いことが分かります。トマトを栽培するときは果実に光を良く当てるようにするとよいですね。
Zushi, K., Suehara, C., Shirai, M., 2024. Light/darkness-controlled ascorbic acid and antioxidant system in in vitro and intact fruits of different tomato cultivars. Environ. Control Biol. 62, 49-56. https://doi.org/10.2525/ecb.62.49
宮崎県と共同で行っている加工・業務用ホウレンソウに関する研究が日本園芸学会の和文誌「園芸学研究」に掲載されました。
中村剛, 八代賢, 永吉嘉文, 圖師一文, 2023. 品種,成長および気象要因が加工・業務用ホウレンソウにおけるルテイン含量に及ぼす影響. 園芸学研究 22, 287-294.
宮崎県の加工・業務用ホウレンソウは,全国の加工・業務用出荷量の約6~7割を占めており非常に重要な野菜の一つで,消費者の健康志向の高まりに対応するために,2018年から冷凍野菜では全国初の機能性表示食品(機能性関与成分 ルテイン)としての販売が始まっています。
このような加工・業務用ホウレンソウにおいて,ルテイン含量の変動要因を品種,成長および気象要因から明らかにしたもので,今後の加工・業務用ホウレンソウにおけるルテイン含量の安定化・高含量化技術の開発に活用できると期待されます。
トマトの誘引法とかん水を抑えた高品質栽培に関する論文が,Environmental Control in Biology誌に掲載されました。
通常のトマト栽培では誘引を行いますが,半芯止まり性を持つトマト品種(途中で生育が止まったり,止まらなかったりする性質を持っています)を用いて誘引を行わない放任栽培とかん水量を抑えた栽培を組み合わせて行うと,省力化とともに機能性成分含量の向上などの高品質化も行えることを明らかにした論文です。
Zushi, K., Takita, K., Egawa, R., 2023. Combined Effects of the Training Method and Deficit Irrigation on the Yield and Fruit Quality of Semi-Determinate Cherry Tomato (Solanum lycopersicum L.). Environ. Control Biol. 61, 37-43. https://doi.org/10.2525/ecb.61.37
今年度は3年ぶりに全学の式典がシーガイアコンベンションセンターで行われました。
その後、農学部講義室において植物生産環境科学科の卒業式が行われました。
学科卒業式では当研究室の学生が,成績優秀者,卒論発表会ベストポスター賞として表彰されました。
コロナが終息して日常生活を取り戻しつつある状況を反映するかのような,笑顔あふれる卒業式となりました。
卒業生・修了生の皆さんの新天地での活躍を期待しております。
宮崎大学大学院農学研究科植物生産環境科学コースの修士論文発表会が2023年1月30日に行われました。今年は3年ぶりに対面で開催され,本研究室の学生2名が「塩ストレスがトマトの食感に及ぼす影響の季節・品種間差と食味成分との関係」,「オランダと日本の有機農業に関する比較と考察-オランダでのフィールドワークをもとに-」について発表しました.
二人とも立派に発表を行うことができました.
イチゴの硬さの季節変動を明らかにするとともに,環境データなどから硬さの予測モデルの開発を行った論文が,園芸分野の国際誌 Scientia Horticulturae 誌に掲載されました。
Zushi, K., Yamamoto, M., Matsuura, M., Tsutsuki, K., Yonehana, A., Imamura, R., Takahashi, H., Kirimura, M., 2023. Tissue-dependent seasonal variation and predictive models of strawberry firmness. Sci. Hortic. 307, 111535. https://doi.org/10.1016/j.scienta.2022.111535
イチゴの硬さは食感や貯蔵性において非常に重要ですが,収穫時期によって変わるのか,果実組織によって硬さがどのように変わるのかはわかっていませんでした。そこで,2年間にわたり様々な収穫時期にイチゴを収穫して果実の組織別に果実の硬さを調べました。その結果,気温が高い時期の方が硬さが低下すること,果実組織によってこの変化が異なることがわかりました。また,収穫前のハウス内気温や土壌水分,湿度などから硬さを予測できることも明らかに出来ました。これらは,おいしくて貯蔵性に優れたイチゴ生産につながるかもしれません。
トマトの機能性成分含量の予測技術の開発に関する研究の論文がEnvironmental Control in Biology誌に掲載されました。
Zushi, K., Fukuda, T., Mori, Y., Takahashi, H., Kirimura, M., 2022. Seasonal variation and a statistical predictive model in assessing health-promoting properties of cherry tomato under long-term cultivation. Environ. Control Biol. 60, 91-101. https://doi.org/10.2525/ecb.60.91
3年間にわたって生産者圃場でトマトの機能性成分(ビタミンC,ポリフェノール,抗酸化活性),栽培環境,生育の季節変動を測定し,それらをもとに生育や環境条件から機能性成分含量の予測モデルを作成した論文です。トマトでは,収量などの予測モデルがすでにありますが,機能性成分含量の予測モデルに関しては初めての報告です。今後,生産者や消費者にとって機能性成分の「見える化」が可能となるかもしれません。
大学院生と行っている研究に関する論文が,園芸学分野の国際誌 Scientia Horticulturae に掲載されました。
Zushi, K., Higashijima, M., 2022. Correlation network analysis identified the key interactions of texture profiles with the sensory, physical, and organoleptic properties of cherry tomato cultivars grown under salt stress. Sci. Hortic. 293, 110754. https://doi.org/10.1016/j.scienta.2021.110754
塩ストレス下で栽培したトマト(塩トマト)の食感(テクスチャー)と食味,品質との関連性をネットワーク分析を用いて可視化したものです。塩ストレスの強さによって食感と食味,品質の関連性が変わるとともに,塩トマトの食味に重要なテクスチャー指標を明らかにすることができました。
塩トマトは食味に優れていることが知られていますが,硬くなり食感が悪くなる場合があります。本研究によって,食べておいしいだけでなく食感にも優れた塩トマトの作出が期待できます。
本学科の施設園芸学研究室と共同で行っているイチゴに関する研究の論文がEnvironmental Control in Biology誌に掲載されました。
Zushi, K., Tsutsuki, K., Takahashi, H., Kirimura, M., 2021. Correlation network analysis visually identifies interactions of antioxidant compounds with plant growth, leaf photosynthetic performance, and agronomic quality in strawberry. Environ. Control Biol. 59, 147-155. https://doi.org/10.2525/ecb.59.147
イチゴの機能性成分と生育,光合成機能との関連性を相関ネットワーク分析を用いて明らかにした論文です。イチゴの機能性成分向上のために重要な生育と光合成に関する要因を明らかにしました。昨年度卒業した大学院生が頑張ってくれました。
昨年度より改修を行っていた校舎の改修工事が終了したので新しい研究室に引っ越ししました。実験室は実験器具ですでにごみごみしていますが,きれいな部屋なので汚さないように実験しないとなと思っているところです。新しくなった実験室で学生の皆さんも頑張って研究を行っています。
宮崎大学大学院農学研究科植物生産科学コースの修士論文発表会が2021年1月26日に行われました.今年はオンラインで開催され,本研究室の学生が「異なる光波長や光強度がトマト果実のアスコルビン酸含量および抗酸化酵素活性に及ぼす影響」について,本研究室ではありませんが私が分析やデータ整理をお手伝いした学生が「イチゴ栽培における環境条件,生育および品質の季節変動と関連性」について発表しました.
オンライン開催でいつもと異なる形式でしたが二人とも立派に発表を行うことができました.
Zushi, K., Suehara, C., Shirai, M., 2020. Effect of light intensity and wavelengths on ascorbic acid content and the antioxidant system in tomato fruit grown in vitro. Sci. Hortic. 274, 109673. https://doi.org/10.1016/j.scienta.2020.109673
光がトマトのアスコルビン酸含量(ビタミンC)に及ぼす影響は十分に明らかにされていません。培養したトマト果実に異なる光の強さや波長を当てて、アスコルビン酸含量や関連する酵素活性を測り、強い光を当てたり青色の光を当てるとトマト果実のアスコルビン酸含量が上昇することを明らかにしました。これらは、トマトの栽培管理や新しい栽培法の開発につながる新しい成果です。
植物生産環境科学科のページでトマトの話をしました。