会場:12号館202室(いつもと場所が異なります)
題目:測度距離空間の集中理論とその最近の発展
要旨:
測度距離空間(の同型類)全体上に集中位相と呼ばれる位相がGromovによって導入されている.集中位相は,測度の集中現象(高次元空間にみられる測度の偏り現象)に基づいた収束概念を与え,次元が無限大に発散する空間列に対しても良い収束性を持つ.高次元の幾何学や測度論を理解する上で集中位相は興味深い対象である.
本講演では,測度の集中現象および集中位相について簡単に説明した後,ユークリッド空間上の高次元分布に対して次元が無限大に発散する際の測度距離空間としての挙動に焦点を当てたい.特に正規分布やコーシー分布およびそれらの一般化に対して,最近の結果を交えて解説したい.本講演は大分大学の江崎翔太氏,福岡大学の三石史人氏との共同研究に基づく.
時間:16:30 -- 17:30(いつもと時間が異なります)
会場:8号館610号室
題目:偽テータ関数と量子不変量の量子モジュラー性
要旨:
2010年に Zagier によって発見された量子モジュラー形式は、トポロジーと数理物理の融合分野である量子トポロジーの研究に端を発する、新時代の数論的対象である。その研究において、偽テータ関数と呼ばれるある種のq級数が量子モジュラー形式になるかという問題は基本的だが一般には未解明である。トポロジーの立場からは、この問題は3次元位相多様体に対する量子不変量の漸近展開予想という重要問題に対応する。本講演では、この二つの問題にアプローチするために「モジュラー級数」という枠組みを導入し、一般的な設定下でモジュラー変換公式と漸近展開を証明する。その応用として、偽テータ関数がベクトル値量子モジュラー形式をなすという数論的主張と、量子不変量の漸近展開の決定というトポロジー的主張が、従来知られていなかった場合に示されることを紹介する。
時間:16:30 -- 18:00
会場:8号館618号室(いつもと場所が異なります)
題目:Legendrian non-isotopic unit conormal bundles in high dimensions
要旨:
接触多様体内の2つのLegendre部分多様体が与えられたとき、それらがLegendreアイソトピックか否か判定せよ、という問題がある。有効なアイソトピー不変量として、擬正則曲線を利用して定義されるLegendre接触ホモロジー(LCH)があるが、一般に高次元では計算が困難である。
今回のセミナーでは、余次元4以上のR^nの部分多様体のunit conormal bundleを使い、 古典的な不変量は一致するがLegendreアイソトピックでない組の例が作れることを紹介する(結び目のunit conormal bundleについてはEkholm-Ng-Shendeなどの先行研究がある)。区別するための不変量として、LCHよりシンプルな、strip LCHと余積構造の組をある条件下で定義し、ストリングトポロジーを介した計算方法を説明する。
時間:16:30 -- 18:00
会場:11号館101号室(いつもと場所が異なります)
題目:Choi-Wang inequality for affine connections
要旨:
For a manifold with positive Ricci curvature, Choi-Wang obtained a lower bound for the first eigenvalue on minimal hypersurfaces. We extend this Choi-Wang inequality to the setting of positive Ricci curvature with respect to the Li-Xia type affine connection.
Room: 610 in the building no. 8
Title : Drilling Hyperbolic Groups
Abstract: Drilling a closed hyperbolic 3-manifold along an embedded geodesic is a crucial technique in low-dimensional topology, transforming the fundamental group of the manifold into a relatively hyperbolic group. In this talk, we extend this concept by proving that, under appropriate conditions, a similar "drilling" operation can be applied to a (Gromov) hyperbolic group with the 2-sphere boundary.
Our primary motivations and applications revolve around the Cannon Conjecture, which states that if the Gromov boundary of a hyperbolic group is homeomorphic to the 2-sphere, then the group is virtually (i.e., up to a finite-index subgroup) the fundamental group of a closed 3-manifold of constant negative curvature. We also explore the relatively hyperbolic counterpart—the Toral Relative Cannon Conjecture.
Using drilling, we show that if the Toral Relative Cannon Conjecture holds, then the Cannon Conjecture is valid for all residually finite hyperbolic groups. The Toral Relative Cannon Conjecture appears more accessible, owing to the presence of additional structure—abelian parabolic subgroups.
This is joint work with Daniel Groves, Peter Haïssinsky, Jason Manning, Alessandro Sisto, and Genevieve Walsh.
題目: Analysis of contraction mappings to the complement of closed curves
会場:8号館618号室
要旨:スカラー曲率の剛性に関するLlarullの定理に代表されるように、リーマン多様体のスカラー曲率と写像のdilationには深い関係がある。Gromovは「球面から閉部分集合を除いたときに剛性が破れるか?」という問題に関連して、閉曲線を除いた球面への縮小写像とスカラー曲率の関係についての問題を提起した。本講演では、ホロノミーと閉曲線を囲む曲面の面積(安定ノルム)に関する条件のもとで、スカラー曲率に対する新たな評価を示す結果を紹介する。これは非自明なホロノミーのもとでのGromovの問題に関して、部分的な解答を与えるものである。証明には、非コンパクト空間上の指数理論とGromov–LawsonのPlateau問題に関する解析を組み合わせる手法が用いられる。
会場:8号館6階610号室(変更しました)
題目:
Fano多様体の最適退化とその応用について
要旨:
Fano多様体がKähler-Einstein計量を持つための必要十分条件は、
多様体がK安定(polystable)であることが知られている。
一般のFano多様体は、「なるべくK安定な方向に」退化させることができると考えられていて、このような操作を最適退化と呼ぶ。微分幾何学的には、Kähler-Ricci flowなどの時間発展方程式を考えることに相当する。
最適退化にはいくつかの種類があり、それらの違いはまだあまりよくわかっていない。
そのうちいくつかは、近年になって存在が証明された。
今回の講演ではこのあたりの事情について、最近の我々の結果も交えつつ解説する。
時間があれば、幾何学への応用についても話したい。
会場:南大沢キャンパス8号館6階 610
題目:コンパクト距離空間列からなる空間のGromov-Hausdorff空間への等距離埋め込み
要旨:コンパクト距離空間の等距離同型類にGromov-Hausdorff距離を導入して得られる距離空間をGromov-Hausdorff空間という。これはコンパクト距離空間を点に持つ空間であるだけにこの空間の位相的性質に興味がある。ここでは、ある一定の直径以下のコンパクト距離空間からなる部分空間たちの直積空間をmax距離でGromov-Hausdorff空間に埋め込む等距離写像を具体的に提示する。
講師:窪田 陽介 (京都大学)
題目:物性物理と指数定理
要旨:本講義では,トポロジカル絶縁体という物性物理の理論の,その背後にある数学的基礎を解説する.数学的内容としては,差分作用素の関数解析とその指数理論である.
関数解析においては,作用素やその集合が持つトポロジー的な性質が,対応する方程式の解の解析的な挙動に関するロバストな特徴を規定することがしばしばある.特に有名な例として,トポロジーがロバストな解の存在を保証するFredholm指数と,その値を記述する Atiyah-Singer の指数定理が挙げられる.そもそも指数定理は,擬微分作用素やその主表象に関する Hormander らの解析的研究をひとつの起源としている.指数理論には色々な変種があり,例えばある種の作用素は Z でなく Z/2 に値を取る不変量を持っている(このZ/2はBott周期性に由来する).
これらの数学の一部が,21世紀に入ってから物性物理を記述する道具として再注目されることとなった. そもそも物性物理は関数解析と相性がよい.強結合近似のもとではハミルトニアンは有界作用素だし,物性理論の重要な基礎であるバンド理論(ブロッホ理論)とはすなわちフーリエ変換のことである.21世紀の流れの一つに,様々な対称性を加味した指数理論を考えるというものがある.これはAtiyahの実K理論によって適切に記述され,理論上の概念に具体的で説明のしやすい役割を新たに与えた.
物理に関する事前知識は特に要求しない.まずはいろいろな具体例を見てもらい,それからその背後にある統一的な考え方を知ってもらうことを目標とする.
日程:
10月27日(月)4限、5限
10月28日(火)3限、5限
10月29日(水)3限、4限
10月30日(木)4限、5限
10月31日(金)3限、4限
会場:南大沢キャンパス8号館6階 610
題目:Spin-Sp(4), Spin-SU(8), Spin-Spin(16)同境群の計算
概要:リー群Gに対して、Spin-G同境群は理論物理学におけるアノマリーの有無を調べる上で重要な対象である。Spin-G同境群の計算は一定の条件下ではAdamsスペクトル系列を用いた比較的易しい計算方法が知られていたが、G = Sp(4), SU(8), Spin(16)はいずれもその条件を満たさない。Debray-Yuはこの条件が不要なことを示し、この結果をもとに私は前述したGに対して7次元までSpin-G同境群を計算した。
本講演では、これらの計算手法の概要を紹介するとともに、加群の生成元を具体的な多様体を用いて明示的に与える方法についても解説する。
会場:南大沢キャンパス8号館6階 610
題目:CR Paneitz operator on non-embeddable CR manifolds
概要:The CR Paneitz operator, a CR invariant fourth-order linear differential operator, plays a crucial role in three-dimensional CR geometry. It is closely related to global embeddability, the CR positive mass theorem, and the logarithmic singularity of the Szegő kernel. In this talk, I will discuss the spectrum of the CR Paneitz operator on non-embeddable CR manifolds, with particular emphasis on how it differs from the embeddable case.