2021年度

今年度対面とオンライン配信を同時に行うハイブリッド方式で実施します.講演者以外の学外の方は,オンラインでのご参加をお願い致します.

2020年度に引き続きzoomを用いてオンライン配信を行います.参加希望の方は,参加登録フォームからご登録をお願いいたします.

なお,都立大幾何学セミナーのメーリングリストを受信しておられる方は登録不要です.

試験的な運用ですので,配信の乱れが生じる可能性もございます.どうぞご了承ください.

4月16日:伊敷喜斗(筑波大学)

時間:16:30 -- 18:00

会場: 8号館6階 610号室

題目:Spaces of metrics and ultrametrics

要旨:本講演では距離関数のなす空間の位相にまつわる結果を紹介する.最初にHausdorffの距離関数の拡張定理の一般化として,講演者の距離関数の補間定理を紹介する.この補間定理の応用として,ある種の幾何学的性質を満たす距離関数の集合が距離関数の空間の中で稠密でなおかつ可算個の開集合の共通部分で表せることを示す.後半では超距離関数にまつわる結果を紹介する.超距離関数は距離関数のゼロ次元の類似であり,通常の距離関数に関する命題の超距離関数版の研究がたびたび行われている.その一環として,Arens—Eellsの等長埋め込み定理や前半で述べたHausdorffの距離関数の拡張定理,そして講演者の距離関数の補間定理や距離関数の空間の部分集合の稠密性に関する定理などに対して,講演者は超距離関数版の定理を証明した.

5月14日:稲山貴大(東京理科大学)

時間:16:30 -- 18:00

会場: 11号館2階 201号室

題目: Optimal $L^2$-extensions on tube domains and a simple proof of Prekopa's theorem

要旨:Brunn-Minkowski不等式や, そのfunctional versionであるPrekopaの定理は, 凸幾何学において非常に重要な対象であり, 様々な証明, 応用が知られている. 本講演ではPrekopaの定理に対して, 講演者が新たに得た複素解析的アプローチを紹介する. 具体的には, 凸領域に付随する管状領域上で, ある種の最良係数による大沢-竹腰の$L^2$拡張定理が成り立つことを証明し, その応用としてPrekopaの定理が簡単に従うことを説明する.

6月11日:二木昌宏(千葉大学)

時間:16:30 -- 18:00

オンライン開催

題目:射影空間に対するSYZ構成とホモロジー的ミラー対称性

要旨:トーリックFano多様体のStrominger-Yau-Zaslowファイブレーションによるホモロジー的ミラー対称性の研究は、Leung-Yau-ZaslowやChanらによるベクトル束の接続に着目した研究、FangやAbouzaidによる定式化と証明など色々なものが知られている。ここでは射影空間の場合に限定して、直線束とラグランジュ切断の対応を与える方法を紹介したい。この対応を用いると、ベクトル束のなすDG圏とラグランジュ切断のなす圏(深谷・Oh圏)の三角同値が自然に得られる。本研究は梶浦宏成氏(千葉大学)との共同研究である。

6月18日:蔦谷充伸(九州大学)

時間:16:30 -- 18:00

オンライン開催

題目:Finite propagation operators and Hilbert bundles with end

要旨:無限次元Hilbert空間をファイバーとするベクトル束は必ず自明束となる(Kuiperの定理)が、付加構造(構造群のreduction)を考えることにより無限次元の趣を持った非自明な現象が観察されることは自然に予想される。本研究ではこのような動機のもとで、無限次元のベクトル束に対しendという構造を導入し、非自明な現象を特性類などを通して観察する。講演の主な内容は次のとおりである。1)endをもつベクトル束はfinite propagationというある種の有限性を持ったユニタリ作用素のなす群の分類空間によって分類される。2)整数のなす距離空間Z上のfinite propagationなユニタリ作用素のなす群はZのuniform Roe algebraのユニタリ元のなす群とホモトピー同値になる。3)Zのuniform Roe algebraに対して作用素環のK理論の手法などを用いることにより分類空間のコホモロジーが決定でき、特に非可算無限個の新しい特性類が定義できる。4)無限被覆による(有限階数)ベクトル束のtransferなどの例が自然にendを持つことを示し、それらの例の特性類を決定する。時間が許せばZ以外の距離空間が関係する場合の考察や課題についても触れたい。

本講演は加藤毅氏(京都大)、岸本大祐氏(京都大)との共同研究に基づく。

6月25日:杉本佳弘(東京都立大学)

ハイブリッド開催

会場:8号館610室

題目:Hamilton力学系の周期解について

要旨:Hamilton力学系はsymplectic多様体上で定義される特殊な力学系である。本講演では、Hamilton力学系の周期解に関するいくつかの結果を、専門知識を仮定せずに解説する予定です。

7月9日:佐々木優(東京工業高等専門学校)

ハイブリッド開催

会場:8号館610室

題目:例外型コンパクトリー群F_4とFI型コンパクト対称空間の極大対蹠集合

要旨:例外型コンパクトリー群F_4の極大対蹠集合は,Griess(1991)により代数群の方法を用いて分類されているが,その具体的構成は分かっていない.また,F_4に関連するコンパクト対称空間としてFI,FII型コンパクト対称空間が存在するが,FII型はCayley射影平面と呼ばれるコンパクト対称空間で,極大対蹠集合についてはよく調べられている.

一方で,FI型については極大対蹠集合の分類・構成はまだよくわかっていない.本講演ではF_4ならびにFI型コンパクト対称空間について,その極大対蹠集合の合同類を独自に分類した結果と,例外Jordan代数を用いた具体的な構成を紹介する.時間があれば,極大対蹠集合から得られる離散グラフが,極地を取る操作によりどのように分解されていくかを紹介したい.

集中講義

講師:池 祐一(東京大学 大学院情報理工学系研究科)

日程:

10/5(火) 5限

10/7(木) 4,5限

10/8(金) 4,5限

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題目:パーシステントホモロジーとその広がり

概要:

位相的データ解析の主要な道具であるパーシステントホモロジーとその周辺について解説する.単体的ホモロジーを計算の観点から見直したのちに,データからトポロジーを抽出する手法であるパーシステントホモロジーについて説明する.次にパーシステントホモロジーの情報をあらわすパーシステンス図とその間の距離を導入して,位相的データ解析がノイズ耐性を持つということを表現する安定性定理について解説する.またパーシステントホモロジーの代数的構造を取り出したパーシステンス加群と箙表現との関係についても述べる.さらに時間が許す限り最近の進展についても話す予定である.


各回の内容(進度は目安)

1. 位相的データ解析の概略,単体的ホモロジー

2. フィルトレーション,パーシステントホモロジー

3. パーシステンス図,ボトルネック距離,安定性定理

4. パーシステンス加群と箙表現

5. 最近の進展

講義資料:

講義資料はこちらからダウンロードできます

集中講義

講師:木田良才(東京大学 大学院数理科学研究科)

日程:

10/11(月) 4限 (14:40 ~ 16:10)

10/12(火) 3限 (13:00 ~ 14:30)

10/18(月) 4限

10/19(火) 3限

10/25(月) 4限

10/26(火) 3限

11/8(月) 4限 (5限に談話会を開催)

11/9(火) 3限 4限

11/16(火) 3限

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題目:離散群とエルゴード群論

要旨

この講義では、測度空間への群作用が定める軌道同値関係について論じる。軌道同値関係とは、作用の軌道を同値類とする同値関係を意味する。軌道同値関係の研究は、歴史的には作用素環の研究に由来するが、リー群の格子部分群の剛性理論や幾何学的群論など、離散群論の研究に基づく成果も見られる。この講義では、離散群の中でも自由群に焦点を当て、自由群が作用するツリーとその境界を用いた、軌道同値関係の研究手法を紹介する。境界を用いた手法はよく知られたものであり、その一例を紹介するのがこの講義の目的である。軌道同値関係の研究で最も基本的な概念である、従順性についての説明から始めたい。時間が許せば、自由群にまつわる別の話題を紹介する。測度論・関数解析の基礎を予備知識として仮定するが、それ以外の必要な知識については講義中に適宜補いたい。


以下の内容を扱う。

(1) 軌道同値関係の研究の紹介

(2) 従順群

(3) 保測同値関係とその従順性

(4) 自由群とその境界

(5) 自由群の保測作用が定める軌道同値関係

講義資料:

講義資料はこちらからダウンロードできます.

談話会

講演者:木田良才(東京大学 大学院数理科学研究科)

日程:11/8(月) 5限(16:20 ~ 17:50)

会場:8号館618号室

題目:軌道同型の理論と Baumslag-Solitar 群

要旨:

一般に二つの群作用が軌道同型であるとは、作用する空間の間の同型で作用の軌道を保つようなものが存在するときをいう。確率空間への群作用に対する軌道同型の問題は、元々作用素環論に動機をもつ問題であったが、近年では離散群論に基づく数多くの研究成果が見られる。講演では代表的な成果とそのアイデアを簡単に紹介した後、Baumslag-Solitar 群の作用に関する講演者の結果を紹介する。Baumslag-Solitar 群とは、二つの生成元 a, t と関係式 ta^pt^{-1}=a^q (p, qは固定された正の整数) によって定義される群であり、組み合わせ群論・幾何学的群論の観点から興味をもたれている群である。t の共役によって引き起こされる歪みの量 q/p を、作用の軌道の構造からいかに取り出すかが講演者の研究テーマであり、研究の現状について報告したい。


参加登録フォーム(集中講義に登録した方は再度の登録は不要です)

川崎盛通(青山学院大学)

11月19日(金)16:30~18:00 8号館610号室

※ 講演形態…ハイブリッド方式

題目:球面直積内のnon-displaceableな特異ラグランジュ部分多様体

要旨:

本講演では、球面直積内のいくつかの特異ラグランジュ部分多様体のnon-displaceabilityについて解説する。今回扱う特異ラグランジュ部分多様体は双角運動量(coupled angular momentum)という可積分系のファイバーとして現れる。近年、トーリック多様体の様々な形の一般化が研究されているが、双角運動量は「準トーリック系」(semi-toric system)というクラスの可積分系となっている。証明のアイディアであるが、エントフとポルテロヴィッチによる茎(stem)のアイディアの一般化が証明のキーとなり、そのアイディアを今回の例に適用するために深谷・呉・太田・小野のカラビ擬準同型を用いる。本研究は新潟大の折田龍馬氏との共同研究である。また、東京大学の浅野知紘氏と共同で行なっている関連研究についても時間の許す限り説明する。


集中講義

講師:服部広大氏(慶應義塾大学理工学部)

日程:

11月29日(月)  4,5時限    8-610

11月30日(火)  4,5時限    8-610

12月 1日(水)  4,5時限    8-610

12月 2日(木)  1,2時限    8-610

12月 3日(金)  4,5時限    8-610

題目:シンプレクティック多様体上の幾何学的量子化

要旨:

この講義では、シンプレクティック多様体の定義および基本的な性質を紹介し、幾何学的量子化の基礎を説明する。幾何学的量子化とは、シンプレクティック多様体上の前量子化束とよばれる複素直線束の「良い切断」の空間に関する研究である。この「良い切断」は、シンプレクティック多様体に対して付加的な構造を与えることでうまく定義される。例えばシンプレクティック構造と整合する複素構造を付け加えた場合は「良い切断」は正則切断を意味し、その全体のなすベクトル空間の次元は理想的な状況であれば位相的な不変量に一致する。一方で、シンプレクティック多様体がラグランジュファイブレーションを許容するときは、この次元はボーア・ゾンマーフェルトファイバーと呼ばれる特別なファイバーの個数と一致することがいくつかの具体例から分かる。


3月25日: 北川潤 (ミシガン州立大学)

Jun KITAGAWA (Michigan State University)

時間:16:30--17:30

題目:最適輸送とGauss-Kronecker曲率について

要旨:

R^n内の凸領域上で与えられた関数が、グラフのGauss-Kronecker曲率と一致するような凸関数を求める問題はMonge-Amp\`ere方程式と関連があること、また最適輸送問題と関連があることはよく知られている。この講演では従来の最適輸送問題とは少し違う形のものとも関連があることを紹介したい。本講演はN.Guillenとの共同研究に基づく。