首都大学東京・幾何学セミナー

日時: 金曜日 16:30 -- 18:00

会場: 8号館6階 618号室

(以下, 敬称略)

2016年度

2017年2月1日(水)16:30- 河備浩司(岡山大学)"From non-symmetric random walks on nilpotent covering graphs to distorted Brownian rough paths via discrete geometric analysis "

場所:8号館610(通常と日時・場所が異なりますのでご注意ください.なお,このセミナーは数理解析セミナーとの合同セミナーとして開催します.)

講演概要:ベキ零群を被覆変換群とするような有限グラフの被覆グラフのことをベキ零被覆グラフと呼ぶ。 結晶格子(被覆変換群がアーベル群の場合)上のランダムウォークに関してはすでに多くの極限定理が離散幾何解析の枠組みで得られている。 その一方で、ベキ零被覆グラフ上のランダムウォークについては、対称な場合に幾つかの極限定理が知られていたものの、非対称な場合にはあまり研究が進展していないように思われる。 本講演ではベキ零被覆グラフ上の非対称ランダムウォークを考察し、ある条件下では汎関数中心極限定理が成り立つことを報告する。 また極限に現れるベキ零Lie群上のある拡散過程と、ラフパスとの関連についても話したい。 本講演の内容は、石渡 聡 氏 (山形大) および 難波 隆弥 氏 (岡山大)との共同研究に基づく。

2017年1月20日(金)16:30- 濱田 龍義(日本大学)"複素空間型内の実超曲面のある種の平坦性について"

講演概要:複素空間型内の実超曲面を知るためには,どのような不変量を考えれば良いか. 例えば,複素空間型内に はEinstein実超曲面が存在しないことがよく知られている. Einstein という条件を弱めて,良い形の実超曲面を選び出す試みとして様々なアプローチが考えられるが, この講演では立花俊一によって導入された曲率に注目し,その平坦性について考察する予定である.

2017年1月13日(金)16:30- Wilhelm Klingenberg (Durham University) "A global version of a classical theorem of Joachimsthal"

2016年10月28日(金)16:30- 宮岡 礼子(東北大学) "ラグランジュ交叉のフレアホモロジー論への部分多様体論からの第1歩 "

講演概要:ラグランジュ交叉のフレアホモロジーは,交叉点がその生成元となるため,交叉がハミルトン微分同相写像で外せるか否かの決定が重要な第1歩となります. 我々は等径超曲面のガウス像という豊富なラグランジュ部分多様体に対して,ほとんとの場合,交叉は外せないこと(Hamiltonian non-displeacability)を示し, 一部そのフレアホモロジーも具体的に記述しました.ここではその手法と,残された問題についてお話します.

2016年10月14日(金)16:30- 加藤 本子(東京大学) "Embeddings of right-angled Artin groups into higher dimensional Thompson groups"

[講演概要]

2016年8月2日(火)15:00- Wu Yan (Jiaxing University) "Finite Decomposition complexity of wreath products"

2016年7月15日(金)16:30- 大野 晋司(大阪市立大学) "A construction of biharmonic submanifolds in compact symmetric spaces"

2016年6月24日(金)16:30- 折田 龍馬(東京大学) "Non-contractible periodic orbits in Hamiltonian dynamics on tori"

講演概要: シンプレクティック多様体上のハミルトン微分同相写像がどのような条件下で無限個の周期軌道を持つかという問題は、Conley、SalamonやZehnderの研究に端を発する重要なテーマである。 実際に彼らは、トーラス上の任意の(弱)非退化なハミルトン微分同相写像は無限個の周期軌道を持つことを示した。 近年、非可縮周期軌道の文脈においてGinzburgやGurelは、atoroidalやtoroidally monotoneなシンプレクティック多様体上のハミルトン微分同相写像が、少なくとも1つ非可縮周期軌道を持てば、無限個の非可縮周期軌道を持つことを示した。 しかしながら、これらのクラスはトーラスを含んでいない。 今回の講演では、トーラス上のハミルトン微分同相写像が、少なくとも1つ非可縮周期軌道を持てば、無限個の非可縮周期軌道を持つことを示す。

2016年6月17日(金)16:30- 見村 万佐人(東北大学) "Strong algebraization of fixed point properties"

講演概要: バナッハ空間(ないしは族)を固定したとき,有限生成群のそれ上の等長作用が常に大域的固定点を持つ, という性質を固定点性質と呼ぶ. ヒルベルト空間全体のなす族を考えたときの固定点性質は, 「Kazhdanの性質(T)」と呼ばれる群の剛性と同値であることが知られている.

離散群の線型表現の分類は連続群と違い,群が少しでも複雑になると手に負えない. これが原因で,離散群の固定点性質を直接示すことは当面の間著しく困難であった. Y. Shalom は1999年の論文(Publ. IHES)で,固定点性質を部分群に分けて, 最後に“パッチワーク”する,という手法を応用し,上の困難に対し初のブレイクスルーをもたらした. しかし,Shalomのパッチワーク戦略では群の部分群による「有界生成(Bounded Generation)」という厄介な要請が本質的であって (後述するように実はこれは気のせいだったのだが,長年そう信じられてきたように講演者には思われる), この要請がShalomの手法を適用する際の致命的な弱点となっていた.

今回,講演者はShalomのパッチワーク(1999,2006)の思想を発展させて, 「有界生成」条件を舞台から追いやることに成功した. 講演者の条件は,部分群たちを広げていくある“ゲーム”の必勝戦略として記述される. 講演ではこの“ゲーム”の内容・証明のあらすじをお話したい. これにより,「有界生成」の成立がわからないような状況でもパッチワーク戦略を適用できうるようになった. 系として,いろいろな離散群が強い固定点性質を持つことを,非常にコンセプチュアルに示せる. こうした応用面についても概観したい.

2016年6月3日(金)16:30- 櫻井 陽平(筑波大学) "Rigidity phenomena in manifolds with boundary under a lower weighted Ricci curvature bound "

2016年5月27日(金)16:30- 馬場 蔵人(東京理科大学) "半単純擬リーマン対称空間に対するイソトロピー表現の軌道の幾何について"

講演概要: 半単純擬リーマン対称空間のイソトロピー表現の軌道は空間形内の等質擬リーマン部分多様体を与える。 リーマン幾何においては等径部分多様体や極小部分多様体などの例を与えることが知られている。 本講演ではその拡張として、擬リーマン幾何における枠組みでイソトロピー表現の軌道の構造を明らかにしていく。

2016年5月20日(金)16:30- 浦川 肇(東北大学) "Rigidity of transversally biharmonic maps between foliated Riemannian manifolds"

講演概要: foliated リーマン多様体の研究は1990年代、西川青季、Ph. Tondeur、L. Vanhecke、E. Park、K. Richardson らによって始められ、 近年では、二つの foliated リーマン多様体の間の transversally harmonic maps や transversally biharmonic maps の研究が J.J. Konderak、 R. Wolak、Y.J. Chiang、S.D. Jung らによって行なわれでいる。 これらの研究では専ら compact なfoliated リーマン多様体であることが多かったが、完備非コンパクトの場合の研究も重要であると思われる。本講演では、 「ターゲットの foliated リーマン多様体の transversally sectional curvature が非正であれば、完備な foliated リーマン多様体からの transversally biharmonic maps は transversally harmonicなものに限る」 という 「B.Y. Chen 予想の一般化」が foliated リーマン多様体の場合においても成立する、という最近の結果について講演する。

2016年5月13日(金)16:30- 菊田 伸(工学院大学) "一般型境界を持つ準射影代数多様体上における 完備ケーラー・アインシュタイン計量の境界挙動"

講演概要: この講演では, 準射影代数多様体上において, 負のリッチ曲率を持った完備ケーラー・アインシュタイン計量の境界挙動について議論する. この計量が存在するためには, 対数的標準束に対する曲率の正値性が必要なのだが, その境界における退化が境界挙動と関わる と目論んでいる. そこでG. Schumacherのある結果を参考にしてたてた予想について述べ, 実際に境界が一般型である場合は成り立つことを報告する.

2016年4月15日(金)16:30- 深谷 友宏(首都大学東京) "ある種の非正曲率性を持つ空間や群の直積に対する粗Baum-Connes予想"

講演概要: Baum-Connes予想は,可算群の被約群C*環のK群がその固有作用の普遍空間 (群がねじれ元を持たない時は分類空間の普遍被覆と同一)の同変K-ホモロジーと同型になるという予想である. これは群の解析的な性質を反映する前者が,位相的な性質を反映する後者と同型になるという意味を持つ. さて,粗Baum-Connes予想とは,この予想の「非同変版」であり,距離空間に対して定まるあるC*環の K群が,その距離空間の「粗」K-ホモロジーと同型になると主張する.今日ではこれらの予想は多くの クラスの群や距離空間に対して成立することが知られている. この講演では,愛媛大の尾國新一氏との共同研究で得られた,双曲群,CAT(0)群,ポリサイクリック群, 及び相対双曲群の直積に対して粗Baum-Connes予想が成立するという結果を紹介する.

微分幾何セミナーは8号館 618教室にて行われます.

幾何学特別セミナー

講演者: Franz Pedit (UMass Amherst)

日程:2017年3月11日(土)11:00--15:00

場所:8号館610室

11:00--12:00 1st lecture

Title: Towards a constrained Willmore conjecture

Abstract: The constrained Willmore problem investigates the minimizers, and more generally the critical points, of the Willmore functional (bending energy) on immersions of surfaces under variations preserving the conformal type of the surface. We give a brief introduction/overview of the topic and discuss a number of conjectures, together with supporting evidence, which have emerged over the past years. Ramifications of those conjectures would greatly enhance our understanding of the Willmore functional on the space of conformal immersions of compact Riemann surfaces.

12:00--14:00 lunch and discussion

14:00--15:00 2nd lecture

Title: Energy quantization for harmonic 2-spheres in non-compact symmetric spaces

Abstract: It is well known from results by Uhlenbeck, Chern-Wolfson and Burstall-Rawnsley that harmonic 2-spheres in compact symmetric spaces have quantized energies. Using the reformulation of the harmonic map equation as a family of flat connections, we construct an energy preserving duality between harmonic maps from non-compact symmetric spaces into their compact duals. Applying this construction to the conformal Gauss maps of Willmore 2-spheres in the n-sphere provides a generalization and unifying approach to existing quantization results in special cases: Bryant for n=3; Montiel for n=4; and Ejiri for Willmore 2-spheres admitting a dual Willmore surface.


20161014_Kato.pdf