固有心理学

以下は私の経験を思い起こしての記述です。必ずしも事実とは違うかもしれません。

私が大学の教養課程で取った心理学では、固有心理学というのを教えていました。これは、意識の構造を固有意識と表層意識で考えるものです。右図のような氷山を考えます。水面上の表層意識が普段皆さんの意識しているものです。そして水面下の意識が固有意識です(この図をどこかで見たことがあると思われた方は、下の余談をご覧ください。)。そして、表層意識で継続していったものが固有意識に中に入り、固有意識の中で考えた(計算された)ものが表層意識に上って来ると言うものです。 例えば、毎日会社に通っている人は、その道筋を毎日意識していますか?「今日は、道筋からちょっと離れた本屋に寄ろうとしていたのに考え事をしていたら通りすぎてしまった。」という経験はありませんか?

これは、

表層意識:考え事

固有意識:通勤動作

ということを同時にしているものと考えられます。

初めて通る道を行く時は、あちこちを意識していたはず。それが毎日同じ道を通うことでそれが固有意識に入ってしまい、何も考えずに(表層意識に上らず)通えるようになったと考えられます。これに限らず、普段やっていることは、何も意識せずにやっておられますよね。

名工が機械でも測定できないような微小な変化をとらえて仕上げることができるのも同じです。常に意識して加工技術を磨いていることで、わずかな変化に対する対応が固有意識に形成され、意識しなくても自然に出来てしまうのです。名工と言われる方々は、特別なことをしているという意識は無いのではないのでしょうか。おそらく普段通りに行っている行為が、我々には信じられない行為に見えるのです。

「ツッコミ」のうまい人がいますよね。その人は、初めから、「ツッコミ」がうまかったのではないはず。例えば、普段から「ボケ」と「ツッコミ」が行われていた家庭の中で子供自体を過ごした方は、その感覚が固有意識に形成されているのです。そのため、意識しなくても、「ツッコミ」ができるのです。

「氏より育ち」といいますよね。まさにその通りなのです。

固有意識が形成されるのは、子供時代だけではありません。大人になっても、「ツッコミ」することを常に意識して考えていれば、やがて固有意識にその感覚が形成され、意識しなくても「ツッコミ」することが出来るようになるのです。

普通と思っている人も名工と言われる人も固有意識が働いている対象が違うだけで何も変わらないのです。(もちろん、それに至った努力の差は違いますが)。

このように、固有意識を使えば、自分が意識しなくても勝手にやってくれるのです。もちろん、そのための努力も必要ですが、これを利用しない手は無いと思いませんか?(ただし、弊害もあります。)

余談1

以下は私の経験を思い起こしての記述です。必ずしも事実とは違うかもしれません。

固有心理学を唱えたのは、この心理学を教えて下さった黒田教授の恩師のようでした。黒田教授は、開講最初に「この固有心理学は、誰からも相手にされなかった。しかし、現在では、この心理学が主流となっている。」と仰られていました。聞いた当時は、何のことか判らなかったのですが、後年フロイトの深層心理学に出会って、その意味が自分の中では氷解しました。私の勝手な解釈では、深層心理学は、固有心理学の特殊解というイメージです。フロイトの無意識と意識で説明すると意識が無意識の影響を受けているのは、固有心理学も深層心理学も同じですが、

    • 深層心理学では、無意識は最初から有る。(キリスト教の原罪の影響かも)

    • 固有心理学では、意識の継続が無意識(固有意識)を形作る。

といったところでしょうか。

もちろん、本当は全然違うのかもしれません。

あくまでも、当ホームページ内の定義とさせて頂きます。