TRIZー発明技法

発明は体系的に行なえるのであろうか。

TRIZは旧ソ連の民間でゲンリッヒ・アルトシュラーとその弟子たちが50年かけて開発した発明技法である。特許情報をベースに技術の傾向などを体系的にまとめ、技法の源泉としている。最近ではパソコン上で快適に動く高度なソフトウェアツールも提供されている。

例えば、Invention Machine社Ideation International 社(伊藤忠の提供)CREAX社 :CREAXではCREAX Innovation Suiteという体験版ソフトウェアを公開しています。

TRIZは、分野における「創造的な思考」のための、優れた原理(モデル)とそれを使う具体的な方法とを提供している。
具体的には、以下である。[1]

    1. 新商品の開発のための予測技法
    2. 問題(課題)を定義する方法
    3. 問題のシステムを分析する方法
    4. 「矛盾」を解決する方法
    5. 理想をイメージする方法
    6. 解決策を生成する方法

TRIZは非常に多くの手法を含み、第一線の研究開発者や開発設計者がこれらの手法を片手間に習得するのは困難である。企業にとっては、仮に専門家を養成しても、TRIZ推進室といったインフラが必要になる。さらに、この手法の特性上(技術課題解決手法、不具合分析/予測手法及び未来予測手法)、一製品に適用するには手法の一面しか見ることが出来ず、短期的な費用効果が期待できない(長期的には期待できる)。

コンサルティングは産業能率大学など多数が実施している(本ページ記載者はTRIZ-DE(将来の市場・商品の予測を支援するTRIZの最新手法)という手法を勤務企業を通じて産業能率大学実施の講習を受けている)。

 

こういったことから、導入を考える企業の上級管理者は、短期的なリターンを求めず(短期的に効果のある手法もあります)、従業員の教育機会のひとつと考え、長期的な視点で意思決定を行なうべきである。少し導入してみて、効果を計り意思決定の機会を遅らせることは、投資効果を逓減していくことになる。このことは以下の内容がよく示している。[2]

「企業においては、研究所や技術部門や知的財産部門などで、ボランティアの先駆者たちが、まずTRIZ の学習を始め、TRIZのソフトウェアツールを使い、関心を同じくする人たちとのグループを作り、TRIZの専門家やコンサルタントを招いて入門セミナーを組織し、実地の問題にTRIZを適用するなどのことを試みた。これらすべての「業務外」の活動をするためには、彼らはその上司を説得する必要があったが、上司たちの多くはTRIZについてそれまでに何も知らず、また「超発明術」というキャッチフレーズには懐疑的でさえあった。かくて、これらの企業内先駆者たちが、問題解決において実地に成果を出し、また仕事の中でTRIZを学習し適用していくことに興味を持つ仲間たちを数人から20人ばかり獲得していくのには、随分長い時間がかかった。筆者が、TRIZの推進に「漸進的導入戦略」を推奨したのは、このような時期であった。」


このように、「TRIZは過去半世紀の品質向上の運動にこれまで不足していた「技術論」を注入するものであり、大きな技術革新運動に発展する可能性を持つもの[1]」と期待され、多くの企業で実績あるものとして報告されているにも関わらず、広範囲な利用を遅らせている。

 

  • 近年の傾向

近年の状況は、TRIZとその周辺技法や企業戦略としての一部として如何に機能するかが重要になっている。

Clausing(2001)は[3]にて、提唱したTTD(Total Technology Development)*の観点から、その原因について、①結合の不足、②実施の弱さ、としており、TRIZの周りの生産的なプロセスとの統合不足(例えば、サムスンが実施したような技術戦略までなどの結合、周辺の手法との統合が不足している)、また、興味のある従業員から(組織的実施するのではなく)、特定の商品(狭い適用範囲)に関して実施させるといった実施の弱さ、を報告している。

近年、注目を浴びたシックスシグマは、手法、方法というより、「目標設定及び意思決定」の意味合いが強い([4],p432)。従って、発明を促すというより、事業化を促進するものである。こういった性質から、問題特定過程が多いことを挙げ、Hipple(2005)はTRIZとシックスシグマが融合が可能であるとしている。さらに、Johnson(2002)、Smith(2001)など、シックスシグマのマネジメントに種々の手法との融合の有効性を示していることから、TRIZは発明技法としての位置を確立していると言ってよい。逆に、シックスシグマにとっては、いわゆるシグマレベルのブレイクスルーとして期待されている。

 

TRIZは、その活動や論文などを積極的にWeb上で公開することで、普及を広げている。その代表的なサイトはTRIZホームページであり、日本では、大阪学院大学の中川が中心に運営している。フォーラム、参考文献、技術報告などTRIZのあらゆる情報ソースである。下は「公共ネットワーク」に関する記載であるが、TRIZホームページの考え方が伺える。

「世界の各国にTRIZの「公共Webサイト」を作って(中略)そのような各国の「公共Webサイト」がグローバルにネットワークを組むことにより、自律的で健全なグローバルなTRIZコミュニティができます。これは、『TRIZホームページ』が実践してきたことを、グローバルなモデルとして世界のTRIZリーダたちに提案するものです。(「TRIZについての「公共Webサイトのグローバルなネットワーク」を作ろう: グローバルなTRIZコミュニティを構築するための提案」より) 」

 

 

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[1] 中川徹, 「技術革新のための問題解決技法TRIZ/USIT」, 『日本創造学会論文誌』, 8, pp49-66, 2004.(閲覧可能なサイト
[2] 中川徹, 「日本におけるTRIZ/USITの適用の実践」, TRIZCON2004, シアトル, 米国,2004.4.25-2.
[3] Clausing, D.P., "The Role of TRIZ in Technology Development.", TRIZ Journal , August.2001.
[3]の邦訳版

Clausing, D.Pの"TQD"に関しては、『TQD―品質・速度両立の製品開発』日経BP社,1996.が出版されています。
*TRIZの全体像を、TRIZを紹介する程度の内容以上に知りたい方は、以下の書籍を推薦します。
原著)Mann, D, L., Hands- On Systematic Innovation For Engineers, CREAV Press, Belgium,2002.
邦訳)[4] Mann, D, L.,中川徹 監訳, 知識創造研究グループ 訳『体系的術革新』 , 創造開発イニシアチブ, 2004

[5] Hipple, J., "The Integration of TRIZ with Other Ideation Tools and Processes as well as with Psychological Assessment Tools", Creativity and Innovation Management , 14, pp22-33, 2005.
[6] Johnson, A., "Six Sigma in R&D" Research Technology Management, 45, p12-16, 2002.
[7] Smith, L., "Six Sigma and the Evolution of Quality in Product Development", Six Sigma Forum Magazine, pp28-35, Nov 2001.