QC, TQC、そしてTQM

QC, TQCの概要と功罪


  •  QC

QC(= Quality Control)とは、品質管理のひとつの手法であるが、その淵源は、戦後、米国のGE, WEの技師によってもたらされたSQC(=Statistical Quality Control)である。SQCの創始者はWEのW・A・シュハートであるが、品質管理と概念がまだない日本においても、1927年に、石田保士が電球の品質管理に統計を使用する研究を開始している。並行し当時の優秀な統計学者が品質管理の技術としても統計に磨きをかけていた。


そして、よく語られるエドワーズ・デミングが1950年のセミナーでSQCを講義するのである。
  • このころ(1950年)、タグチメソッドで有名な田口玄一は電電公社電気通信研究所に入り、実験計画法で独創的な理論を次々打ちたて、やがて60年にデミング賞を受賞することになる。後に米国のプリンストン大学の客員教授で招かれ(兼ベル研究所研究員)、彼の理論が高く評価された。

”統計的”品質管理の名のように、当初は技術者が中心に展開していたが、現在のQCといえば”七つ道具”に代表されるようにその面影は、薄くなっている。

  • QC七つ道具:パレート図、チェックシート、ヒストグラム、散布図、管理図、層別(グラフ)、特性要因図

これは、経営的視点からの展開を目指し、中心的存在となった石川馨によるものが大きい。この間には、J・M・ジュランが、経営者、上級管理者に行われたセミナー(1954年)で、彼らの役割を講義している。

*以上ここまでは[1]を参考に記載した。

そういったことから、石川は、品質管理(QC)を始めた理由として:

①技術者は統計的方法の使用を常識にしなければならない。
②戦前の安かろう悪かろうでは資源が乏しい日本では経済が成り立たない。
③企業の体質改善、経営の思想革命
を挙げている。[2]

結局のところ、日本においては、20世紀前半から中後半に、製造業を中心に、「製造する」という行為において、「品質管理」の概念が登場し、その方法に統計的手法を用い始め「品質管理とは統計である」と考えられるようになったのである。

その後、一部の技術者から全社的へ展開するために、TQCが生まれ、普及していったのである。

 
 
  • TQC

 さて、TQC(=Total Quality Control)は、米国のファイゲンバウム(当時GE)が使用したもので、米国品質管理協会誌(Industrial Quality Control)の1957年5月号に論文を発表している。[3]

  • 「TQCとは、消費者を完全に満足させるということを考慮して、もっとも経済的な水準で生産し、サービスできるように、組織内の各グループが、品質の開発・維持・改良の努力を総合するための効果的なシステムである」

つまりは、企業のビジネスシステム全体で、その品質を総合的に管理する、というシステムで、「経営管理」のひとつである。

日本で普及していたTQCは、CWQC(Company- Wide Quality Contorol=全社的品質管理)であり、①全部門参加、②全員参加が主な特徴である。[4]

従って、米国で展開されていたTQCにあって、日本版TQCにないものは、マーケット・リサーチ(MR)の概念である。

  • 実際に、1950年の夏、デミングの箱根でのセミナーは経営者を中心に開催されており、このときの講義内容はSQC(=Statistical Quality Control)ではなくMRであった。[5]

 こういった日本版TQCは、合理的で大きな効果を生んでいったが、カンバン方式なども含めた合理的な手法のデメリットは:

  • 「全員が合理的に考えるようになるため、金太郎飴のような画一的集団になり、まったく新しいものを創造するという発想には効果的でない[6]」
  • 「TQCが水戸黄門の葵の御紋のような威力を持ち、『お上のこれが見えないのか』とばかりにTQCを押し付けられ、それを批判するのはタブーで、TQCをやらない者はこの会社では除け者のとなった[6]」
  • 「かけがえのない人材の流出が続き、職場環境は荒廃し、企業改革自体が尻すぼみに終わった[6]」
  • 「やらせ、ごまかし、デッチ上げのQC[7]」
  • 「TQC指導会は単なる吊るし上げ[7]」

経営管理者は、管理技術のひとつとして扱うことが重要で、コスト低減のため、コストの安い地域で生産することに特化した工場(研究開発、設計開発が不要)や、単なる管理技術として取り扱う場合、その効果を享受出来る。

  • 例えば、工業数学(基本統計、各種検定など)、実験計画法、タグチメソッド、統計的管理などに代表される科学的手法は生産現場では必須である。

しかしながら、現代のような不確実性の高い経営環境では、TQCに限らず、カンバン方式など合理的管理法を経営管理のすべてに考え、全社的に取り組むにはリスクが大きすぎる

なぜならば、技術的イノベーションにおける合理主義者と漸進主義者の論争では、複雑性、不確実性により、後者のアプローチの方が有用であると結論付けられているからである。[8]

かといって、合理的アプローチを否定するものではなく、技術としてはこれ以上の品質管理技法は発明されていない。

後に、20世紀の後半になり、シックスシグマが登場するが、技法自体には、SQC、QC及びTQCで使用されているものと変わりはない。

適切な使用法は、FMEA、FTAも含めて、客観説TQM研究所のサイトが実践的で参考にされる。





  • TQCとTQM

現在では、TQCはTQM(=Total Quality Management)とされ、こちらで呼ばれることが多い。日科技連はその違いについてホームページ上で以下のように説明している。TQCとTQMの違いについてはこちら。

1960年代から日本において独自の発展を遂げた「TQC(Total Quality Control)」は、1996年4月「TQM(Total Quality Management)」に呼称変更しました。その理由は次の通りです。

  • 諸外国ではTQMという呼称が一般的になっていて、TQCを国際的に通用する言葉にする必要がある。
  • TQCを企業環境の変化に対応できる経営活動に、より一層役立つようにする必要がある。
SQC、QC、TQC、TQM、及びシックスシグマは主に問題を解決する技法であるため、新製品の開発などの創造を発揮するするものではない。近年では、[9]-[11]のように、研究開発的な手法とシックスシグマなど従来の方法との融合が報告されている。


 

<参考文献>
[1] 徳丸壮也,『日本的経営の興亡―TQCはわれわれに何をもたらしたのか』, ダイヤモンド社,1999, pp166-197.
[2] 石川馨,『日本的品質管理―TQCとは何か (1981年)』,日科技連出版社, 1981, pp2-3.
[3] [2] p126.
[4] [2] pp127-128.
[5] [1] p279.
[6] [1] p37-39, 富士ゼロックスのケース。
[7] [1] p1-12, いすゞのケース。
[8] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント』, NTT出版,2004, p85.
[9] Hipple, J., "The Integration of TRIZ with Other Ideation Tools and Processes as well as with Psychological Assessment Tools", Creativity and Innovation Management , 14, pp22-33, 2005. PDFはこちら
[10] Johnson, A., "Six Sigma in R&D" Research Technology Management, 45, p12-16, 2002.
[11] Smith, L., "Six Sigma and the Evolution of Quality in Product Development", Six Sigma Forum Magazine, pp28-35, Nov 2001,PDFはこちら


<参考書籍>

  • 日本的品質管理―TQCとは何か (1981年)
  • 技術集団のTQC
     
  •   

    <TQCの弊害について>

  • 日本的経営の興亡―TQCはわれわれに何をもたらしたのか』 
  • <TQMの実践で参考になるサイト>

  • 客観説TQM研究所



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