尹千合著『太極劍』(1958)より
1.まじめであること
中国武術を習うにはまじめでなけらばならない。即ち実直で誠意がなけらばならない。静かさを軽んじてはいけないしおごり高ぶってもいけない。孔子曰く、「君子重からざれば即ち威あらず。学べば即ち固ならず。(君子たるもの重々しくなければ威厳がない。学問をすれば自分の考えに凝り固まることを避けられる。)」
2.敬意を持って臨むこと
人に応対するときには敬う心を持たなければならない。人を敬う者は常に人からも敬われる。謙虚で礼儀正しく真心のこもった態度をとることが大切だ。媚びへつらうことは下卑た態度であることをしかと心に留めよ。
3.穏やかに接すること
中国武術を習うには心が穏やかで気持ちが落ち着いていなけらばならない。決して凶暴であったり、威厳をはったり、人を侮ったりしてはいけない。野蛮な行動はこの上なく恥ずべきものである。人や物に穏やかに接することがたいへん重要である。
4.公平であること
中国武術を習うには物事を処理するときに私欲をはさんではいけない。偏見を持ってもいけない。えこひいきをせず公明正大に物事に当たることが重要である。そして、武力や権力に屈しない精神を持たなければならない。
5.稽古に勤しむこと
中国武術を習うには絶えず勤勉に稽古することが重要である。怠けたり不精であったりしてはいけない。曰く、「業は勤において精し、戯れるに荒む。(こつこつ努力をすれば成果が上がりその事に精通する。しかし、遊びにふけっていると成果が上がらずだめになる。)」稽古に勤しめば自ずと技量も深まるのである。
6.正義にかなった行動をとること
中国武術を習うには忠義と勇気、義侠心を持たなければならない。曰く、「義を見て為さざるは勇無き也。(正しいと知っていながらそれをしないのは勇気がないことである。)」「行いて之を宜しくする、之を義と謂う。(適切な行動をすることが義である。)」為すべきことを為し、為さざるべきことを為さず。万が一にもでたらめなことをしてはならない。
7.思いやりの心を持つこと
中国武術を習うには仁愛の心が根本となる。人や物を思いやり慈しむ心、寛容の心、善良な心、そして博愛の精神を持つことが大切である。
8.国に忠誠を誓うこと
中国武術を習うには自分の利益や怨恨のために戦うことを断つことが重要である。私欲や私怨のための戦いは最も恥ずべきことだ。技術や心身を全て国や国民に捧げなけらばならない。