カメルーンにおける研究

熱帯湿潤~熱帯亜湿潤気候に属するカメルーンには、非常に風化が進んだ結果、土壌中の無機養分が世界で最も乏しい土壌=『Oxisol』が広がっています。土壌中の養分供給量が著しく低いこの土壌では、一旦土壌から養分が損失すると、回復するまでに長い年月がかかるため、適切な土地利用による『土壌保全』が重要な課題となります。

カメルーンの大部分(下半分)は、基本的には半常緑~常緑の森林生態系が広がっていますが、内陸部である東部州へくると、降水量が減少し、境界領域、つまり森林植生が終わり、サバンナ植生が始まる場所があります。そこが私の研究対象地域です。

この地域では、農業(主食はキャッサバ)のほかに、牧畜も広がっており、様々な民族による多様な生業活動が成立しています。さらには近年の商業活動の発展から、チョコレートの原料であるカカオ栽培が盛んにおこなわれるようになり、農業活動が積極的に展開されています。

一般的に、森林植生は養分を地上部バイオマスに蓄積する一方で、サバンナ(草原)植生は養分を地下部バイオマス(根っこ)の形で蓄積する事が知られており、それぞれの植生を開墾し農耕・牧畜に利用した場合、物質循環は大きく変化することが予想されます。特に、養分の蓄積様式(蓄積形態?)が違うということは、その土地から養分が喪失する過程、そして休閑時に養分が回復する過程も異なることが予想されます。

今後、この地域の貴重な自然環境を維持・保全する為にも、それぞれの植生環境下における物質循環の特徴を理解すると共に、その生業活動に伴う養分損失過程やその量を評価し、その回復手段を構築する事は必要不可欠です。そこで私は、所属する研究室のメンバーや、アジア・アフリカ研究所のカメルーン研究メンバーと協力し、2009年から、以下の観点から研究を行っています。

1、森林とサバンナで、物質循環はどう違うのか?特にPの挙動

2、森林とサバンナを耕地化した場合、養分はどれくらい損失するのか?

3、耕地化したのちの回復傾向は、元の植生の違いがどのように影響するのか?

Cameroon Photo はこちら

JST/JICAプロジェクトにおけるCameroon調査の報告書はこちら

写真:奥に見える森林を切り開いた後に畑地(手前側)が出来上がる

写真:サバンナ植生の風景。

上の写真を取った場所から10kmも離れていないのに植生が大きく異なる。

なぜなのだろうか・・・?