(5) 水田における生産性と生物多様性の関係に関する研究

九州大学に赴任してから、初めての調査が熊本県の水田調査でした。

所属先の同僚の先生がすでに進めておられた、

『冬期湛水(冬でも水をはっておく)という土地管理をおこなうことで、水田の生物多様性が増加するのではないか?』

という研究テーマに、

土壌中の養分動態がどのように変化するのか?そして生産性はどう変化する(とくに好転する)のだろうか??という観点から共同研究を進めさせていただくことになりました。

また同時に、

『有機農法』を行った場合に起きる生物多様性の変化も、

土壌中の養分動態の変化という観点から、何か説明できないだろうか?

という非常に興味深い相談を頂き、現在進行中です。

既に、冬に水をはることで、土壌の物理性が慣行農法と変化する結果、イトミミズが増加し、その結果、表層に養分が集積する、という報告があります。

個人的には、この表層に集積した養分が重要なのではないか、と考え、現在研究を進めています。

加えて同じコンセプトを利用し、

増加し続けている耕作放棄地の復田に貢献できないだろうか?

と思い、長崎県は対馬を主な対象地域として、色々と動き始めています。

右の6枚の写真のうち、上の3枚は熊本の、下の3枚は対馬の写真です。

対馬の土壌断面の写真はこちら!

3月末の風景です。

慣行農法ではこの時期には水は抜いているのですが、

冬に水をはる処理(冬期湛水)を実施しているため、

水がある状態です。

分かりにくいかもしれませんが、

写真中の左部分が、生物調査のために表層土壌をはぎ取られています。

既報より、この表層土壌に養分が集積しているらしいので、

この層位の養分環境を解明したいと思って研究を進めています。

ちなみに生物調査は共同研究者の方に進めていただいています。

こちらは対馬で設置した気象ステーションです。

降水量や、気温のほかに、地温や土壌水分含量などを定期的に測定することで、

この地域の生産環境を解析することが可能になります。

この写真は来週、田植えを行う場所で、土壌サンプリングをしたときの写真です。

良く見てもらえばわかりますが、耕していないので(不耕起といいます)、

昨年に収穫したあとの株が残っているのがわかります。

このように、冬期湛水を行う場合は、不耕起をセットにした農法を行います。

その理由としては・・・・・・

この左の写真に見える赤のぽつぽつが、不耕起を行う理由です。

これはひとつひとつがイトミミズです。

このイトミミズが、下層から表層に、土壌を盛ってくるため、

表層土壌の養分含量が増加する、あるいは雑草の種が埋まり除草の役割を果たす、

などの効果があることが言われています。

私はこの中で、特に表層土壌の養分含量が、

不耕起を行った場所と、耕起を通常通り行った場所とで、

何がどれくらい違うのか?を分析する予定です。

結果が楽しみです!!