(詩人の恋より “美しい五月に” ハイネ詩)
夢見るように美しい五月
すべての蕾が 芽吹いたとき
ぼくの心のなかにも
愛の花が咲きいでた
五月の空を見上げるたび、春風を頬に感じるたび、そしてピアノに触れるたび、あなたが、私に両手を広げてくれているようで、一年経ったというのに愛しさが増してきます。
貴方の大きな遺影は、今は小さな、押し花の写真立てに代わり、分骨を納めた、ワインスハイマー先生から頂いた美しいマイセンの小皿とともに、やっぱり、部屋の真ん中で、みんなが見守ってくれています。
”別れから始まることがあるんだ”と昨年のプログラムに書きました。私にとっては、すべてが美しい始まりでした。
でも、不安でいっぱいだった時、どうしても一歩踏み出さなければいけない時、あなたが、種を蒔いてくれたもの、二人で歩んできた揺るぎのないものを、私に気づかせ、確認させてくれたのは、私の周りのおひとりおひとりの力です。皆様軒高差に触れ、感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。
”深い悲しみは心豊かなこと”
友人が教えてくれた言葉です。昨年はよくわかりませんでした。でも今は、寂しくてたまらないのに、心にゆっくりと満ちてくる温かさを感じられるようになった気がしています。
龍三さん、これからは、私自身が種を蒔いて素敵な花を咲かせられるようにしますね。
今晩も、いつもの様に『お疲れ様!いいコンサートだったね!一緒にワインを飲もう、赤!白?泡がいい?』って、言ってくれる?
『乾杯!また一年よろしくね!』
八十嶋 洋子